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君の名前を呼ぶまで

#32

第32話 好きって言葉は超最高

蒼真が、昨日よりも近い声で私の名前を呼んだ翌日。
その響きが、まだ胸の奥に残っていた。

――好きって言葉が、こわくなくなる。

蒼真が言ったその一言が、何度も頭の中で反響していた。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、昨日よりもずっと柔らかい。
胸がふわりと温かくなる。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、少し話したい」

胸が跳ねた。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その声は静かで、どこか決意が混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
昨日よりもさらにゆっくりした歩幅。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

蒼真がふと立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。
でも、今日はその声がいつもよりずっと近かった。

「なに?」

蒼真は、迷うように指先を震わせながら言った。

「今日も……手、つないでいい?」

胸がぎゅっとなる。

「もちろん」

差し出した手を、蒼真はゆっくりと包んだ。
昨日よりも自然に。
昨日よりも強く。

指が絡む。
温度が伝わる。
胸が熱くなる。

しばらく歩いたあと、蒼真がぽつりと言った。

「結衣といると……“好き”って言葉が、もうこわくない」

その一言で、息が止まった。

夕陽が二人の影を長く伸ばす。
風が吹いて、蒼真の前髪が揺れる。

「……蒼真くん」

名前を呼ぶと、蒼真は少しだけ目をそらした。

「結衣のこと……好きだよ」

その言葉は、迷いのない、まっすぐな“好き”だった。

胸が熱くなる。
涙が出そうなくらい嬉しくて、苦しくて。

「……私も、蒼真くんのこと、好き」

蒼真はゆっくりと顔を上げ、
そして、今までで一番優しく笑った。

手をつないだまま、二人はゆっくり歩き出す。

もう、“好き”はこわくなかった。
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2026/03/14 17:56

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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