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君の名前を呼ぶまで

#25

第25話 止まらない気持ち

蒼真が「ちゃんと好きになりたい」と言った翌日。
胸の奥がずっと熱くて、落ち着かない。
昨日の言葉が、何度も何度も頭の中で反響していた。

――好きになりたい。

その言葉が、こんなにも嬉しくて、苦しいなんて。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、昨日よりもずっと柔らかい。
胸がふわりと温かくなる。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、少し遠回りしたい」

胸が跳ねた。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その声は静かで、どこか照れが混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
昨日よりもさらにゆっくりした歩幅。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

ふと、蒼真が立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

「なに?」

蒼真は少しだけ迷ったように指先を動かし、
そして、ぽつりと言った。

「昨日……触れたいって言ったけど」

胸がぎゅっとなる。

「今日も……触れたいって思ってる」

その一言で、息が止まった。

夕陽が二人の影を長く伸ばす。
風が吹いて、蒼真の前髪が揺れる。

「……蒼真くん」

名前を呼ぶと、蒼真は少しだけ目をそらした。

「でも……こわい。
 触れたら、結衣のこと……もっと好きになる気がして」

胸が熱くなる。
涙が出そうなくらい嬉しくて、苦しくて。

私はそっと言った。

「好きになっていいよ」

蒼真は驚いたように顔を上げた。

「……結衣」

「私も……蒼真くんのこと、もっと好きになってるから」

蒼真は息を呑み、
そして、ゆっくりと手を伸ばした。

昨日よりも、少しだけ近い距離。
指先が震えている。

「……触れてもいい?」

その問いは、告白よりもずっと真剣で、ずっと優しかった。

私は小さくうなずいた。

「うん」

蒼真は、ゆっくり、ゆっくりと手を近づけ――
そして、ほんの一瞬だけ、私の手に触れた。

昨日よりも、確かに触れた。
その一瞬で、胸が熱くなった。

蒼真はすぐに手を引っ込め、顔を赤くした。

「……ごめん。これが限界」

「ううん……すごく嬉しかったよ」

蒼真は驚いたように顔を上げ、
そして、ほんの少しだけ笑った。

「……結衣の手、あったかい」

その言葉だけで、涙が出そうになった。

触れたい気持ちが止まらない。
触れられない距離が、もう限界に近づいている。

その距離の中で、
二人の心はまたひとつ、確かに近づいた。
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2026/03/14 17:24

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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