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君の名前を呼ぶまで

#13

第13話 弱さを見せる勇気

蒼真が「言いたいことがある」と言った翌日。
胸の奥がずっとそわそわしていた。
期待なのか、不安なのか、自分でもよく分からない。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
けれど、今日は本を開いたまま、視線がページに落ちていない。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、どこか迷っているようだった。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、少しだけ時間ある?」

胸が跳ねた。

「うん、あるよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その声は静かで、どこか決意が混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。
むしろ、胸の音がうるさくて、沈黙のほうがありがたかった。

やがて、昨日とは違う小さな公園に着いた。
夕陽が差し込んで、ベンチの影が長く伸びている。

蒼真はゆっくりと座り、空を見上げた。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

「なに?」

蒼真は少しだけ迷ったように指先を動かし、
そして、ぽつりと言った。

「俺……弱いところ、見せるの苦手なんだ」

胸がきゅっとなる。

「うん」

「でも……結衣には、見せてもいい気がする」

その言葉は、告白じゃないのに、告白みたいに胸に響いた。

「蒼真くん……」

「昨日の家のことも……ほんとは、誰にも見せたくなかった」

蒼真はゆっくりと視線を落とした。

「でも……結衣には、知ってほしかった」

夕陽が沈みかけ、空がオレンジ色に染まる。

「……なんでだろうな」

蒼真は自分に問いかけるように言った。

「結衣が隣にいると……怖くないんだ」

その一言で、息が止まった。

胸が熱くなる。
嬉しくて、苦しくて、どうしようもない。

「……私もだよ」

気づいたら、自然に言葉がこぼれていた。

蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ほんの少しだけ笑った。

「……そっか」

その笑顔は、今までで一番優しかった。

夕暮れの公園で、
二人の心はまたひとつ、確かに近づいた。
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2026/03/14 17:15

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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