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君の名前を呼ぶまで

#8

第8話 秘密のメッセージ

翌朝。
教室に入ると、蒼真はいつものように窓際で本を読んでいた。
けれど、昨日の寄り道のせいか、彼の姿が少しだけ近く感じる。

胸がふわりと温かくなる。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真は本を閉じて、ゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、昨日よりも柔らかい。

席に戻ると、机の上に小さな紙切れが置いてあった。
誰かの落とし物かと思ったけれど、文字を見た瞬間、息が止まった。

――放課後、また少しだけ話せる?

蒼真の字だった。

胸が一気に熱くなる。
こんなふうに誘われるなんて、初めてだ。

放課後。
私は紙に書かれた場所――図書室へ向かった。

扉を開けると、蒼真が窓際に座っていた。
夕陽が差し込んで、彼の横顔がやわらかく光っている。

「……来た」

蒼真は本を閉じ、少しだけ照れたように視線をそらした。

「紙……見た?」

「うん。びっくりした」

「……ごめん。直接言うの、なんか……恥ずかしくて」

その言葉が可愛くて、胸がきゅっとなる。

「で、話って……?」

蒼真は少し迷ったように指先を動かし、
そしてぽつりと言った。

「……昨日の続き」

「続き?」

「……結衣のこと、考えてた」

心臓が跳ねた。

蒼真は視線を落とし、静かに続けた。

「なんで結衣だけ、怖くないのか……ずっと考えてた」

夕陽が沈みかけ、図書室が少し暗くなる。

「……答えはまだ分からないけど」

蒼真はゆっくりと顔を上げた。

「結衣といると……落ち着く」

その一言で、胸が熱くなる。

「……私もだよ」

気づいたら、自然に言葉がこぼれていた。

蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ほんの少しだけ笑った。

「……そっか」

その笑顔は、今までで一番優しかった。

図書室の静けさの中で、
二人の心はまたひとつ、確かに近づいた。
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2026/03/14 17:06

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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