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君の名前を呼ぶまで

#7

第7話 気づいてしまった想い

図書室で過ごした翌日。
私は朝からずっと落ち着かなかった。

蒼真の言葉が、胸の奥で何度も反響していた。

――結衣なら、たぶん……大丈夫かもしれない。

触れられるのが苦手な彼が、そんなふうに言ってくれた。
それだけで、世界が少し明るく見える。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
けれど、昨日よりもほんの少しだけ、私の方を意識しているように見える。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真は本を閉じて、ゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、胸が跳ねる。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、時間ある?」

心臓が止まりそうになった。

「え、あるよ」

「……じゃあ、少しだけ寄り道してもいい?」

寄り道。
その言葉だけで、頬が熱くなる。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その一言が、やけに優しい。

二人で歩く帰り道。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

「……ここ」

蒼真が立ち止まったのは、小さな公園だった。
夕陽が差し込んで、ブランコの影が長く伸びている。

「よく来るの?」

「……うん。落ち着くから」

蒼真はベンチに座り、空を見上げた。
その横顔が、どこか寂しそうで、胸が痛くなる。

「蒼真くん」

「……なに」

「昨日の話、ありがとう。
 話してくれて、嬉しかった」

蒼真は少しだけ目を伏せた。

「……結衣だから、話せたんだと思う」

その言葉に、息が止まる。

「俺……誰かに近づかれると、怖くなるのに」

蒼真はゆっくりと、私の方を向いた。

「結衣が隣にいると……怖くない」

胸がぎゅっと締めつけられる。
嬉しくて、苦しくて、どうしようもない。

「……蒼真くん」

名前を呼ぶと、蒼真は少しだけ目をそらした。

「……自分でも、よく分からないんだ。
 なんで結衣だけ、こんなに……」

言葉が途切れる。
でも、その続きが何なのか、私はもう気づいてしまっていた。

蒼真の想いに。
そして、自分の想いにも。

夕陽の中で、二人の距離はまたひとつ、確かに近づいた。
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2026/03/14 17:05

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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