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君の名前を呼ぶまで

#4

第4話 距離の理由

翌日。
教室に入ると、蒼真はいつも通り窓際に座っていた。
けれど、昨日名前を呼んでくれたせいか、彼の姿が少し違って見える。

胸の奥が、またざわついた。

「……おはよう、蒼真くん」

声をかけると、蒼真は本を閉じて、ゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいけれど、確かに私に向けられている。
それだけで、朝から心臓が忙しい。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「昨日……その、呼んで悪かった」

「えっ、なんで?」

「……距離、近すぎたかと思って」

距離。
その言葉に、胸がきゅっとなる。

「近すぎて……嫌だった?」

思わず聞いてしまった。
蒼真は驚いたように目を見開き、すぐに視線をそらした。

「……嫌じゃない」

その小さな声が、やけに胸に響く。

放課後。
私は昨日と同じように校舎裏へ向かった。
理由なんてない。
ただ、行けば蒼真に会える気がした。

そして――本当に、彼はいた。

「……また来たの?」

「うん。蒼真くんも」

「……なんとなく」

また“なんとなく”。
でも、昨日よりも少しだけ素直に聞こえる。

沈黙が落ちる。
けれど、昨日よりも近い距離で立っていることに気づく。

「……距離のことだけど」

蒼真が、ぽつりと口を開いた。

「俺……人と近くなるの、苦手なんだ」

「うん」

「でも……結衣とは、なんか……」

言葉が途切れる。
続きが気になって、息を飲んだ。

「……離れたくないって思う時がある」

その一言で、胸が熱くなる。

「蒼真くん……」

「でも、近づきすぎると……怖い」

怖い。
その言葉の奥に、彼の影が見えた気がした。

私はそっと言った。

「じゃあ、ゆっくりでいいよ。蒼真くんのペースで」

蒼真は驚いたように私を見つめ、そして小さくうなずいた。

「……ありがとう」

その声は、昨日よりも少しだけ近かった。

次は 第5話 に進めるよ。
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2026/03/14 17:03

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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