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晴が解けたら

#7

再会

「愛ちゃん!久しぶりだねぇ、元気だった?」
晴のお母さん。2年ぶりに会ったが、やはり元気だ。娘の命日にも関わらず元気。
「久しぶり。まあまあかな」
まずまずの返事をして、来る途中のスーパーで買ったお供物用のフルーツを差し出す。
「…これ、晴のお仏壇に供えてあげて。」
「!これって…」
「うん、レモン。晴昔からレモン好きだったでしょ。よく『丸齧りするとね、意外といけるんだよ!』とか言って私に押し付けてきてた。」
「よく覚えてるねぇ、ありがとう。きっと晴ちゃんも喜ぶよ。」
晴のお母さんは穏やかに微笑む。…やっぱりこの笑顔、昔から少し怖い。理由は分からないけど…
晴のお母さんは上機嫌に鼻歌を歌いながら、私が手渡したレモンを晴の仏壇に供えた。
「愛ちゃん、おいで。一緒に手合わせよう?」
言われるがままに仏壇の前に座る。しばらくの沈黙。私は頭の中で晴に話しかける。
(…晴、来たよ。ここに来るのは2年ぶりだね。しばらく来れなくてごめんね?)
__晴の声は聞こえない。
(ねえ、晴?私、晴がいなくなってからずっと、春も夏も秋も全部が冬みたいに思えるんだ。寂しくて暗くて、晴がいるとあったかかった冬が今はひどく寒いの。)
私の想いを晴に告げる。ずっとずっと仕舞い込んでいた。誰にも話せなかった想い。
(晴がいないの、どこにも。晴はまだいるはずだって思ってて、でももういないの。なんでかな?ねえ、晴)
「…愛ちゃん?」
意識が急激に現実に戻される。まるで凧糸で引っ張られるみたいに、急に。あぁ凧揚げの凧ってこんな気持ちなんだな、とか呑気なことを考えていた。目を開けると、晴のお母さんと太晴が心配そうにこちらを見ていた。
「…?どうしたの?二人して」
「いや、愛ちゃん…」
太晴が今にも何か言おうとした時、晴のお母さんが立ち上がって
「ご飯出来てるから、あったかいうちに食べようか!」
と、私の手を引っ張った。
「い、痛い痛い!ほんとにどうしたの、急に?」
私は訳が分からなかった。戸惑いながら二人を交互に見る。すると、晴のお母さんが辛そうな顔で言った。
「…愛ちゃん、泣いてるから…。晴ちゃんのこと思い出して、辛くなっちゃったのよね?…そこまであの娘を思ってくれてありがとうね。」
言い終わる頃には、晴のお母さんも、太晴も泣いていた。私は自分の頬を触ってやっと気づいた。
2年前に出し尽くしてしまったと思い込んでいた涙が、頬に触れた指を伝って、畳に落ちた。
泣いている三人とは裏腹に、遺影の晴は太陽のように明るい笑顔を携えていた。

作者メッセージ

今回は前回より大幅に長くなってしまいました…。今回のお話に登場するレモンですが、ぜひ果物言葉(?)を調べてみてください。

2024/03/09 20:06

ゆむ
ID:≫ 6.VVYg7HInCPA
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