ありがとうを、伝えたくて
その日、私の運命は大きく変わった気がする。
「は、はじめまして!今日からここに引っ越してきた[漢字]亜鈴[/漢字][ふりがな]あれい[/ふりがな] リズと申します!」
最初は、興味なさげな人ばかりだった。
私も、先に住んでいらっしゃる方に声をかけるのも気が引けて、断然1人でいることのほうが多かった。
周りの住人さんを見ると、仲よさげに話をしたり共同で色んなものを作っている人もいる。
正直言って、孤独だった。
でも、とある町会の日。
「では、次は亜鈴さんの発表です」
このマンションでは、週に3回発表の日が町会としてある。
今日は、私が抜擢されてしまった。自信がない。皆にまともに聞いてもらえるのだろうか。
「このお話は、とある女の子のお話です」
思い切って、発表を初めた。
最初は誰もが興味なさげだったけど、1人、また1人と私の話を聞いてくれる人が増える。
今日は私の話を聞いてくれて、一緒に今でも楽しい時間を過ごしているある住人さんとのお話。
「リズさ〜ん、そっちできた〜?」
「ま、待ってください!後ちょっとなので⋯」
最後の一針を縫い終わる。
私は達成感と集中力が切れたせいで椅子に深く背もたれ、ずり落ちそうになった。
「なんでルウさんはそんなに早く終わるんですか⋯」
「まあ、元から考えてあったしね」
「反則です〜」
[漢字]縁優[/漢字][ふりがな]えんゆう[/ふりがな] ルウさん。
3つの人形劇の舞台を掛け持ちしている、凄腕のエンターテイナーさん。
その作品に使う人形と設定を、ぜひ私にも作ってほしいと頼まれ今こうなっているのである。
できた人形を机の上にそっと置き、ルウさんが作ったのと並べる。
「あ、そういえばさ。リズさんに頼みたいことがあったんだけど⋯」
「?な、なんですか?」
「一緒にさ、人形劇のお話を作りたいんだよね」
これが、長い付き合いの始まりだった。
「この設定さ、こうしたほうが良いんじゃない?」
「確かに。この部分ってどういう意味ですかね⋯?」
「あーここはね⋯」
皆に喜んでもらえるように。楽しんでもらえるように。寝る間も惜しんで人形と脚本を作り出していた。
流石にぶっ通しでやった反動か、体調不良起こしたこともあったけれど⋯
無事に、第一幕が開演した。
そこから、とてもではないが多くの人が人形劇を見ていってくれ、また見たいと言ってくれた。
それから、数カ月の時が経った。
前から薄々感じていたことだけど、ある日ポツリとこぼしたルウさんの言葉ですべてが繋がった。
昔に、会ったことがあると。
「あの、ルウさんって今日誕生日ですよね?」
「そうだけど⋯」
私は少し大きめの紙袋を手渡し、頭を思いっきり下げた。
「ごめんなさい!!あのお話、継ぐことができなくて⋯」
私は、これからも続けていってほしいと言われた発表原稿を、失くしてしまっていたのだ。
だからこれは、償いと、お祝い。どちらの意味もある。
ねえ、貴方は許してくれますか?
袋の中身は、4つの人形。
全部、私が手作りしたルウさんの人形劇のオリジナルキャラクター。
生まれてきてくれて、私と出会ってくれて、ありがとう。
私はずっと、貴方を待ってた。そしてこれからも、待ち続けるから。
そして、ごめんなさい。
「こんにちは〜」
「あ、こんにちは!」
新しく引っ越してきた人だろうか。それにしては、どことなく見覚えがある気が⋯
うちの大家さんは、気づいてるのかな?
でも今日も誰かがこのマンションに引っ越してきて、今日も誰かがこのマンションを去っていく。
⋯⋯こんな素敵な場所を提供してくれた大家さんにも、感謝しないとな。
そう思い、私は今日の町会の集合場所である会館へと向かった。
「は、はじめまして!今日からここに引っ越してきた[漢字]亜鈴[/漢字][ふりがな]あれい[/ふりがな] リズと申します!」
最初は、興味なさげな人ばかりだった。
私も、先に住んでいらっしゃる方に声をかけるのも気が引けて、断然1人でいることのほうが多かった。
周りの住人さんを見ると、仲よさげに話をしたり共同で色んなものを作っている人もいる。
正直言って、孤独だった。
でも、とある町会の日。
「では、次は亜鈴さんの発表です」
このマンションでは、週に3回発表の日が町会としてある。
今日は、私が抜擢されてしまった。自信がない。皆にまともに聞いてもらえるのだろうか。
「このお話は、とある女の子のお話です」
思い切って、発表を初めた。
最初は誰もが興味なさげだったけど、1人、また1人と私の話を聞いてくれる人が増える。
今日は私の話を聞いてくれて、一緒に今でも楽しい時間を過ごしているある住人さんとのお話。
「リズさ〜ん、そっちできた〜?」
「ま、待ってください!後ちょっとなので⋯」
最後の一針を縫い終わる。
私は達成感と集中力が切れたせいで椅子に深く背もたれ、ずり落ちそうになった。
「なんでルウさんはそんなに早く終わるんですか⋯」
「まあ、元から考えてあったしね」
「反則です〜」
[漢字]縁優[/漢字][ふりがな]えんゆう[/ふりがな] ルウさん。
3つの人形劇の舞台を掛け持ちしている、凄腕のエンターテイナーさん。
その作品に使う人形と設定を、ぜひ私にも作ってほしいと頼まれ今こうなっているのである。
できた人形を机の上にそっと置き、ルウさんが作ったのと並べる。
「あ、そういえばさ。リズさんに頼みたいことがあったんだけど⋯」
「?な、なんですか?」
「一緒にさ、人形劇のお話を作りたいんだよね」
これが、長い付き合いの始まりだった。
「この設定さ、こうしたほうが良いんじゃない?」
「確かに。この部分ってどういう意味ですかね⋯?」
「あーここはね⋯」
皆に喜んでもらえるように。楽しんでもらえるように。寝る間も惜しんで人形と脚本を作り出していた。
流石にぶっ通しでやった反動か、体調不良起こしたこともあったけれど⋯
無事に、第一幕が開演した。
そこから、とてもではないが多くの人が人形劇を見ていってくれ、また見たいと言ってくれた。
それから、数カ月の時が経った。
前から薄々感じていたことだけど、ある日ポツリとこぼしたルウさんの言葉ですべてが繋がった。
昔に、会ったことがあると。
「あの、ルウさんって今日誕生日ですよね?」
「そうだけど⋯」
私は少し大きめの紙袋を手渡し、頭を思いっきり下げた。
「ごめんなさい!!あのお話、継ぐことができなくて⋯」
私は、これからも続けていってほしいと言われた発表原稿を、失くしてしまっていたのだ。
だからこれは、償いと、お祝い。どちらの意味もある。
ねえ、貴方は許してくれますか?
袋の中身は、4つの人形。
全部、私が手作りしたルウさんの人形劇のオリジナルキャラクター。
生まれてきてくれて、私と出会ってくれて、ありがとう。
私はずっと、貴方を待ってた。そしてこれからも、待ち続けるから。
そして、ごめんなさい。
「こんにちは〜」
「あ、こんにちは!」
新しく引っ越してきた人だろうか。それにしては、どことなく見覚えがある気が⋯
うちの大家さんは、気づいてるのかな?
でも今日も誰かがこのマンションに引っ越してきて、今日も誰かがこのマンションを去っていく。
⋯⋯こんな素敵な場所を提供してくれた大家さんにも、感謝しないとな。
そう思い、私は今日の町会の集合場所である会館へと向かった。
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