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実際のアイドルや芸人さんとは一切関係ございません。
[太字]side:Comedian[/太字]
「さっ続きましては、【ほろ酔い堂】の漫才です! どーぞっ!」
ステージ裏にて、MCの甲高い声と三味線の激しいBGMが響く。
途端に拍手に包まれるステージへ飛び出す。直前、相方の緊張に縮んだ背中を軽く叩いてやると、驚いたように目を[漢字]瞠[/漢字][ふりがな]みは[/ふりがな]ったあと破顔した。
「はいどーも〜!! ほろ酔い堂でーす!」
軽く礼はしつつ、体は相方の方へ向ける。センターマイクはノールックで調節。
「いやぁね、俺最近やりたいことができたんですよね」「おーなになに」「実は警察官になりたくて」「いやお前は捕まる側の顔だろ」
――今日一発目のウケはまずまず。お客さんは若い女性が多め。初出しのネタだからウケるかどうか。
口でふざけながら、頭ではそんな分析じみたことばかりしている。
俺は芸人、[漢字]南[/漢字][ふりがな]みなみ[/ふりがな]おとそ。本名、[漢字]伊並[/漢字][ふりがな]いなみ[/ふりがな][漢字]良[/漢字][ふりがな]りょう[/ふりがな]だ。
𖤐 𖤐 𖤐
ボケの表拍とツッコミの裏泊、漫才はテンポよく進んでいく。
「警察だ! 動くな! 手を上げろ!」「クソ、警察か」「動くなって言っただろ手を下げろ!」「なんでだよ」
じょじょに会場の熱気は高まっていた。笑い声も一層大きくなる。
「――どうも、ありがとうございましたー!」
声を揃えて挨拶をすると、壇上に上がったときとは比べ物にならないくらい大きな拍手が飛んできた。それを数秒、頭を下げたまま聞いてから はけた。
[水平線]
「んー......良、どーだったと思う? さっきの漫才」
夜の生放送番組の出番を終え、今はタクシーで移動中。尋ねてきたのは相方だった。
「ちょっとテンポ早かったよな。あと、やっぱりツッコミが多すぎんのかも」
だよな〜。と、相方は端正な顔を歪ませ必死に考えている。
芸名、[漢字]北[/漢字][ふりがな]きた[/ふりがな]みりん。本名、[漢字]北浦[/漢字][ふりがな]きたうら[/ふりがな][漢字]善斗[/漢字][ふりがな]よしと[/ふりがな]。彼こそが俺の相方だ。
俺と善斗はお笑いコンビ【ほろ酔い堂】として活動している芸人。芸歴は今年でまだ3年目である。
以前は全く無名の若手芸人だった。でも、昨年お笑い賞レース番組で優勝してから一変。仕事は瞬く間に増え今やテレビで見ない日は週に2日くらいしかない(?)結構な売れっ子芸人となった。
それまではよかったが。
「............なあ良。いい加減、クズキャラやめないか?」
もちろん俺たちはコンビでのネタで売れた。相方は“芸人にしては綺麗な顔”で売れた。そして俺は、[太字]クズ芸人[/太字]として売れた。
「無理だよ今更。ってか俺別に大丈夫だから」
面白いくらい眉を下げて心配そうな顔をする相方には困ってしまう。
俺はスマホを取り出して、SNSの検索欄に文字を打つ。
#ほろ酔い堂 #南おとそ #クズ芸人
[水平線]
メア@mikeneko
おとそクズのくせにネタは面白い
野球ボウル@baseballball
ほろ酔い堂面白いのに南おとその髭と髪キモすぎる
AKAWA@redring
おとそはほんとにクズだし汚いしやだ みりんくんが可哀想
[水平線]
よしよし......いい感じ。
最近はエゴサーチで自分の評判の悪さを見るのが日課になっている。
タクシーは大通りに入った。夜には少し眩しすぎる、輝く電光掲示板の数々。そこには今流行りのアイドルやタレントなんかが笑顔でポーズをとっている。
《佐藤ユリ 写真集 好評発売中》
《映画 アニマルメーカーズ! 上映》
《Starlight Pastel NEWアルバム発売!》
そのどれもが俺には無関係すぎる。
なんとなく邪魔になって、眼鏡と髭と髪の毛を外した。
「さっ続きましては、【ほろ酔い堂】の漫才です! どーぞっ!」
ステージ裏にて、MCの甲高い声と三味線の激しいBGMが響く。
途端に拍手に包まれるステージへ飛び出す。直前、相方の緊張に縮んだ背中を軽く叩いてやると、驚いたように目を[漢字]瞠[/漢字][ふりがな]みは[/ふりがな]ったあと破顔した。
「はいどーも〜!! ほろ酔い堂でーす!」
軽く礼はしつつ、体は相方の方へ向ける。センターマイクはノールックで調節。
「いやぁね、俺最近やりたいことができたんですよね」「おーなになに」「実は警察官になりたくて」「いやお前は捕まる側の顔だろ」
――今日一発目のウケはまずまず。お客さんは若い女性が多め。初出しのネタだからウケるかどうか。
口でふざけながら、頭ではそんな分析じみたことばかりしている。
俺は芸人、[漢字]南[/漢字][ふりがな]みなみ[/ふりがな]おとそ。本名、[漢字]伊並[/漢字][ふりがな]いなみ[/ふりがな][漢字]良[/漢字][ふりがな]りょう[/ふりがな]だ。
𖤐 𖤐 𖤐
ボケの表拍とツッコミの裏泊、漫才はテンポよく進んでいく。
「警察だ! 動くな! 手を上げろ!」「クソ、警察か」「動くなって言っただろ手を下げろ!」「なんでだよ」
じょじょに会場の熱気は高まっていた。笑い声も一層大きくなる。
「――どうも、ありがとうございましたー!」
声を揃えて挨拶をすると、壇上に上がったときとは比べ物にならないくらい大きな拍手が飛んできた。それを数秒、頭を下げたまま聞いてから はけた。
[水平線]
「んー......良、どーだったと思う? さっきの漫才」
夜の生放送番組の出番を終え、今はタクシーで移動中。尋ねてきたのは相方だった。
「ちょっとテンポ早かったよな。あと、やっぱりツッコミが多すぎんのかも」
だよな〜。と、相方は端正な顔を歪ませ必死に考えている。
芸名、[漢字]北[/漢字][ふりがな]きた[/ふりがな]みりん。本名、[漢字]北浦[/漢字][ふりがな]きたうら[/ふりがな][漢字]善斗[/漢字][ふりがな]よしと[/ふりがな]。彼こそが俺の相方だ。
俺と善斗はお笑いコンビ【ほろ酔い堂】として活動している芸人。芸歴は今年でまだ3年目である。
以前は全く無名の若手芸人だった。でも、昨年お笑い賞レース番組で優勝してから一変。仕事は瞬く間に増え今やテレビで見ない日は週に2日くらいしかない(?)結構な売れっ子芸人となった。
それまではよかったが。
「............なあ良。いい加減、クズキャラやめないか?」
もちろん俺たちはコンビでのネタで売れた。相方は“芸人にしては綺麗な顔”で売れた。そして俺は、[太字]クズ芸人[/太字]として売れた。
「無理だよ今更。ってか俺別に大丈夫だから」
面白いくらい眉を下げて心配そうな顔をする相方には困ってしまう。
俺はスマホを取り出して、SNSの検索欄に文字を打つ。
#ほろ酔い堂 #南おとそ #クズ芸人
[水平線]
メア@mikeneko
おとそクズのくせにネタは面白い
野球ボウル@baseballball
ほろ酔い堂面白いのに南おとその髭と髪キモすぎる
AKAWA@redring
おとそはほんとにクズだし汚いしやだ みりんくんが可哀想
[水平線]
よしよし......いい感じ。
最近はエゴサーチで自分の評判の悪さを見るのが日課になっている。
タクシーは大通りに入った。夜には少し眩しすぎる、輝く電光掲示板の数々。そこには今流行りのアイドルやタレントなんかが笑顔でポーズをとっている。
《佐藤ユリ 写真集 好評発売中》
《映画 アニマルメーカーズ! 上映》
《Starlight Pastel NEWアルバム発売!》
そのどれもが俺には無関係すぎる。
なんとなく邪魔になって、眼鏡と髭と髪の毛を外した。