ほ こ り の つ ば さ
#1
ほ こ り
私は願う。一人、道端の暗闇にぼんやり浮かぶ灰色の、仏像に向かって。
学力、体力、人望に美貌。歌が上手かったり、絵が上手かったり。
必ずみんな、いいところがある。いい良さを持っている。
おばあちゃんから聞いたんだ。神様は一人一つずつ、優れた何かをプレゼントしてくれるって。
そのころ私は幼かったから、よくわからなかった。
でも、成長するにつれて理解した、と同時に、 そのことが嘘だとわかった。
美人で、頭がいい凛ちゃん。人気者で、運動神経のいい正也くんや、ヨウくん。
そんな恵まれた人がたくさん。確かにそれは一部の人だけど、他の人もみんな何か特技がある。
それなのに、私は...
頭はばかだし、運動もできない。顔も平凡。友達は、ユキちゃん一人。歌も絵も、何やってもダメダメ。唯一みんなと違う、神様に与えられたのは、ひねくれた暗い性格。まるでほこりみたいな人間だ。
今日もお母さんに怒られた。今まで必死に隠していた0点のテスト。そのテストは、自分の名前の“椎野 つばさ„の“椎„の漢字を間違えていて、お母さんはさらに怒った。ああ、もううんざりだよ。
私は夜中だというのに家を飛び出した。ばかだから、そのあとどうするかは考えていなかった。
私は夜の住宅街を早歩きで歩いた。知り合いにこんな夜道を歩いてるところ見られたくないし、黒いパーカーをすっぽり被って。
そして、さびれた公園へとたどり着いた。ボロボロの滑り台とベンチが一台。このまま歩いていっても行く場所がないので、とりあえずベンチに座って時間を潰すことにした。
「ああ、なにしてるんだよ、私......」と独り言。ため息をついて、ベンチにもたれかけたとき、公園の端に、小さな石でできた仏像がおいてあるのに気づいた。
「..................」
私は無言で仏像の苔をまじまじ見つめたあと、周りをキョロキョロ確認して、仏像の前に座り込んだ。
目を閉じる。それから少し考えて、口にした。
「えっと、神様!私にもなにかプレゼントをください!不公平だと思います!」
パン、パン!と両手を合わせてみる。そしてまた沈黙。どこからか鈴虫の声。
「...................」
急に恥ずかしくなって、私は「なんちゃって」といいながら立ち上がった。
と、急に横から冷たい風がごおっと吹いてきて、私はバランスを崩して倒れてしまった。
「!?」
ビックリして、風のくる方向をみてみた。強い風が、つばさの頬を殴るようにあたる。そして、なんか開けていられる目の隙間から見えたのは、光。夜中の公園を半分ほど飲み込んでしまった、光の渦だった。
飲み込まれる、と恐怖を感じた。光が強くなる。
そして私の意識は、ぱちんと弾けた。
目が覚めると、真っ白な天井。部屋の電気はついてないが、カーテンから差し込む光が、部屋を明るくてらす。
ばっ、と起き上がる。さっきの記憶が底からぐるぐるよみがえってきた。
あ、夢か.........と乾いた口を開いた瞬間、背中にぞわぞわ悪寒が走った。奇妙な違和感。私はゆっくりとした動きで姿見の前にたった。せなかに、鏡に移りきらないくらいの灰色の物体が突き刺さっている。それはパーカーを突き抜けて、大きくひろがっている。いや、これは.........
背中に、羽が生えていた。しかも、ふわふわの汚い灰色で、まるでほこりみたいな。
「えっ....なにこれ!?」
羽は、つばさの意思とは関係なしに、上下にふわふわ動く。ときどき、ほこりを散らしながら。
私は穴があいて切ることができなくなったパーカーが悲しかったが、今はそれどころではなかった。
わたしの背中に、羽が生えたのだ。