文化祭が終わった翌週の月曜日。
あの賑やかだった空気が嘘みたいに、学校はいつもの日常に戻っていた。
教室に入ると、なんとなくふわっとした雰囲気が漂っている。
緩やかで、やさしくて、少しだけ誇らしい空気。
私たちは、ほんの少しだけ前より「クラス」になっていた。
「はい、今日は通常授業だぞー。ぼーっとしてるなよー。」
担任の先生がプリントを配りながら、にやにやしてる。
「文化祭終わったからって気ぃ抜くなよ」って、毎年のテンプレなのかもしれない。
でも、みんな疲れが抜けきらないのか、どこかふにゃふにゃしていて、私も、つい窓の外に目を向けてしまう。
秋の風が吹いて、葉っぱがふわりと舞った。
(なんか……少し、寂しいな。)
文化祭に向けて走っていた日々が、終わったんだなって、
ようやく実感がわいてきた。
昼休み。
「ほら神奈、これ、あーん!」
「は?自分で食べなさい。」
「いーじゃん、文化祭打ち上げ記念サービス!」
颯人が唐揚げを箸で差し出してきて、私は眉をしかめる。
「……じゃあ、私も。」
胡桃がすかさずミカンを差し出してくる。
「いや、みんな落ち着いて。そういうの、混乱を招くから。」
健気がぼそりと突っ込むけど、口元は微笑んでる。
みんな笑ってた。
私も、笑ってた。
今までは「なんとなく話す」くらいだった距離が、
いつのまにか「当たり前の存在」になってた。
それが、うれしかった。
放課後。
部活が始まる前の教室で、私はまだ机に向かっていた。
「次の物語、どうしようかな……」
文化祭の劇が終わった今も、頭の中では物語の断片が動き続けてる。
——ツキのように、誰かの心に灯をともせるような話を書きたい。
そう、強く思ってた。
「……何書いてんの?」
背後から声がして振り向くと、絢がいた。
「ううん、なんでもないよ。」
私は慌ててノートを閉じたけど、絢はそれを見てにやっと笑った。
「また書いてよ。神奈の話、私、好きだから。」
「えっ……」
「あの劇、本当に良かったもん。ね?」
そう言って、絢は軽く手を振って教室を出て行った。
しばらくして、胡桃と健気もやって来て、「一緒に帰ろう」って誘ってくれた。
颯人はというと、部活で先にグラウンドへ行っていたらしい。
「今日、風気持ちいいね〜」
「秋って、なんか切ないけど好き。」
「神奈、次の台本、もうできてるの?」
「……まだ構想中。」
そんな何気ない会話が、心をあたためる。
その日の夕焼けは、きれいだった。
オレンジと茜が空を染めて、私たちの影が長くのびていく。
駅前まで続く坂道を、笑いながら歩いていた。
文化祭のことも、あの劇のことも、
時間が経てば少しずつ薄れていってしまうのかもしれない。
でも、あの舞台の上で見た光景は、
きっとこれからも、私たちの中に残り続ける。
——優しさは、届いた。
——そして、受け取ってくれた人がいた。
それだけで、充分すぎるほど。
私はそっと、空に手を伸ばした。
「……ツキ。」
自分で生み出した名前を口にすると、なんだか不思議な気持ちになった。
その先の空に、うっすらと白い月が浮かんでいた。
まるで、誰かが見てくれているみたいに。
あの賑やかだった空気が嘘みたいに、学校はいつもの日常に戻っていた。
教室に入ると、なんとなくふわっとした雰囲気が漂っている。
緩やかで、やさしくて、少しだけ誇らしい空気。
私たちは、ほんの少しだけ前より「クラス」になっていた。
「はい、今日は通常授業だぞー。ぼーっとしてるなよー。」
担任の先生がプリントを配りながら、にやにやしてる。
「文化祭終わったからって気ぃ抜くなよ」って、毎年のテンプレなのかもしれない。
でも、みんな疲れが抜けきらないのか、どこかふにゃふにゃしていて、私も、つい窓の外に目を向けてしまう。
秋の風が吹いて、葉っぱがふわりと舞った。
(なんか……少し、寂しいな。)
文化祭に向けて走っていた日々が、終わったんだなって、
ようやく実感がわいてきた。
昼休み。
「ほら神奈、これ、あーん!」
「は?自分で食べなさい。」
「いーじゃん、文化祭打ち上げ記念サービス!」
颯人が唐揚げを箸で差し出してきて、私は眉をしかめる。
「……じゃあ、私も。」
胡桃がすかさずミカンを差し出してくる。
「いや、みんな落ち着いて。そういうの、混乱を招くから。」
健気がぼそりと突っ込むけど、口元は微笑んでる。
みんな笑ってた。
私も、笑ってた。
今までは「なんとなく話す」くらいだった距離が、
いつのまにか「当たり前の存在」になってた。
それが、うれしかった。
放課後。
部活が始まる前の教室で、私はまだ机に向かっていた。
「次の物語、どうしようかな……」
文化祭の劇が終わった今も、頭の中では物語の断片が動き続けてる。
——ツキのように、誰かの心に灯をともせるような話を書きたい。
そう、強く思ってた。
「……何書いてんの?」
背後から声がして振り向くと、絢がいた。
「ううん、なんでもないよ。」
私は慌ててノートを閉じたけど、絢はそれを見てにやっと笑った。
「また書いてよ。神奈の話、私、好きだから。」
「えっ……」
「あの劇、本当に良かったもん。ね?」
そう言って、絢は軽く手を振って教室を出て行った。
しばらくして、胡桃と健気もやって来て、「一緒に帰ろう」って誘ってくれた。
颯人はというと、部活で先にグラウンドへ行っていたらしい。
「今日、風気持ちいいね〜」
「秋って、なんか切ないけど好き。」
「神奈、次の台本、もうできてるの?」
「……まだ構想中。」
そんな何気ない会話が、心をあたためる。
その日の夕焼けは、きれいだった。
オレンジと茜が空を染めて、私たちの影が長くのびていく。
駅前まで続く坂道を、笑いながら歩いていた。
文化祭のことも、あの劇のことも、
時間が経てば少しずつ薄れていってしまうのかもしれない。
でも、あの舞台の上で見た光景は、
きっとこれからも、私たちの中に残り続ける。
——優しさは、届いた。
——そして、受け取ってくれた人がいた。
それだけで、充分すぎるほど。
私はそっと、空に手を伸ばした。
「……ツキ。」
自分で生み出した名前を口にすると、なんだか不思議な気持ちになった。
その先の空に、うっすらと白い月が浮かんでいた。
まるで、誰かが見てくれているみたいに。