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たとえ未来が同じでも

#19

19話

文化祭が終わった翌週の月曜日。
あの賑やかだった空気が嘘みたいに、学校はいつもの日常に戻っていた。
教室に入ると、なんとなくふわっとした雰囲気が漂っている。
緩やかで、やさしくて、少しだけ誇らしい空気。
私たちは、ほんの少しだけ前より「クラス」になっていた。
「はい、今日は通常授業だぞー。ぼーっとしてるなよー。」
担任の先生がプリントを配りながら、にやにやしてる。
「文化祭終わったからって気ぃ抜くなよ」って、毎年のテンプレなのかもしれない。
でも、みんな疲れが抜けきらないのか、どこかふにゃふにゃしていて、私も、つい窓の外に目を向けてしまう。
秋の風が吹いて、葉っぱがふわりと舞った。
(なんか……少し、寂しいな。)
文化祭に向けて走っていた日々が、終わったんだなって、
ようやく実感がわいてきた。
昼休み。
「ほら神奈、これ、あーん!」
「は?自分で食べなさい。」
「いーじゃん、文化祭打ち上げ記念サービス!」
颯人が唐揚げを箸で差し出してきて、私は眉をしかめる。
「……じゃあ、私も。」
胡桃がすかさずミカンを差し出してくる。
「いや、みんな落ち着いて。そういうの、混乱を招くから。」
健気がぼそりと突っ込むけど、口元は微笑んでる。
みんな笑ってた。
私も、笑ってた。
今までは「なんとなく話す」くらいだった距離が、
いつのまにか「当たり前の存在」になってた。
それが、うれしかった。
放課後。
部活が始まる前の教室で、私はまだ机に向かっていた。
「次の物語、どうしようかな……」
文化祭の劇が終わった今も、頭の中では物語の断片が動き続けてる。
——ツキのように、誰かの心に灯をともせるような話を書きたい。
そう、強く思ってた。
「……何書いてんの?」
背後から声がして振り向くと、絢がいた。
「ううん、なんでもないよ。」
私は慌ててノートを閉じたけど、絢はそれを見てにやっと笑った。
「また書いてよ。神奈の話、私、好きだから。」
「えっ……」
「あの劇、本当に良かったもん。ね?」
そう言って、絢は軽く手を振って教室を出て行った。
しばらくして、胡桃と健気もやって来て、「一緒に帰ろう」って誘ってくれた。
颯人はというと、部活で先にグラウンドへ行っていたらしい。
「今日、風気持ちいいね〜」
「秋って、なんか切ないけど好き。」
「神奈、次の台本、もうできてるの?」
「……まだ構想中。」
そんな何気ない会話が、心をあたためる。
その日の夕焼けは、きれいだった。
オレンジと茜が空を染めて、私たちの影が長くのびていく。
駅前まで続く坂道を、笑いながら歩いていた。
文化祭のことも、あの劇のことも、
時間が経てば少しずつ薄れていってしまうのかもしれない。
でも、あの舞台の上で見た光景は、
きっとこれからも、私たちの中に残り続ける。
——優しさは、届いた。
——そして、受け取ってくれた人がいた。
それだけで、充分すぎるほど。
私はそっと、空に手を伸ばした。
「……ツキ。」
自分で生み出した名前を口にすると、なんだか不思議な気持ちになった。
その先の空に、うっすらと白い月が浮かんでいた。
まるで、誰かが見てくれているみたいに。

2025/11/19 20:57

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