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たとえ未来が同じでも

#17

17話

——幕が下りた。
会場を包んでいた緊張と熱気が、ゆっくりと冷めていく。
客席からの拍手がまだ耳に残っている中、私たちは静かに舞台裏へと引き上げた。
「……はぁぁあ、終わった……!!」
颯人が両手を広げて叫ぶ。
その声に、みんなが一気に笑い出した。
「演出チーム、めっちゃ良かったよ!」
「隕石落ちた瞬間、鳥肌立った〜!」
「アフレコも完璧だったね、タイミングぴったり!」
その声の中には、安堵と、達成感と、そしてほんの少しの寂しさが混じっていた。
私も、舞台衣装の裾を掴んだまま、深く息を吐いた。
「……ほんとに、終わったんだなぁ。」
気づけば、私のすぐ隣に胡桃が立っていた。
「神奈、お疲れ様。台本、大成功だったね!」
「うん……ありがとう、胡桃もアフレコばっちりだったよ。」
ふと、胡桃が後ろを振り返る。
その視線の先には、舞台袖にいた動物たちのケージ。
さっきまで舞台の上で跳ねたり、駆け回ったりしていた彼らも、
今は静かに落ち着いていた。
「ね、最後にちょっとだけ……」
そう言って胡桃がケージの扉を開けると、
白いうさぎが、ぴょこっと前足を上げて私たちを見上げた。
私はそっとしゃがみ込んで、うさぎの頭をなでた。
「ありがとう。ほんとに、助けてくれたね。」
隣では絢が、鳥をそっとケージに戻していた。
その動作一つ一つが、名残惜しそうに見える。
「なんかさ……」
と、絢がぽつりと呟く。
「このまま劇の中にいたくなっちゃうね。」
私は思わず笑ってしまった。
「私も。」
舞台に使った木々のセットが、クラスメイトたちの手で解体されていく。
ナレーション用のマイク、ライトのフィルター、プロジェクターのスクリーン……
あんなに大きく感じた“あの世界”が、少しずつ日常に戻っていく。
「……あっ」
と、千鶴が段ボールを抱えながら声を上げる。
「うさぎの餌、控室に忘れてた……!持ってくる!」
「私も行くー!」と、胡桃が手を挙げ、ふたりで廊下に駆けていった。
私はその背中を見送りながら、舞台に視線を戻す。
さっきまでそこにいた“ツキ”はもういない。
でも、あの光景と、あの気持ちは、胸の奥にまだ残っている。
「……あぁ、本当に終わったんだ。」
どこか、ぽっかりと穴が開いたような、そんな感覚だった。
「なにぼーっとしてんだよ、神奈ー!」
突然、背中をバンッと叩かれて振り返ると、颯人がにやっと笑っていた。
「まだ片付け終わってないぞー?」
「わかってるよ、もー……!」
私は苦笑しながら、衣装のスカートをたくし上げて動き出す。
思い出の舞台が、少しずつ姿を変えていく。
そのすべてが、今日という一日を物語っていた。
——文化祭は、まだ終わっていない。
クラスみんなで作ったこの劇の、最後の一幕まで。
きちんと、締めくくらなくちゃ。

2025/10/28 16:30

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