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たとえ未来が同じでも

#13

13話

暖かい日差しが差し込む、秋の肌寒い日。
今日から文化祭の練習が始まった教室は、いつもよりもザワザワしていた。

「……そこはもう少し、間を取ってからセリフに入ってみたらどうかな?」
教室の隅。舞台に見立てたスペースで、健気が真剣な表情でアドバイスしている。
ナレーションだけではなく、演出補佐まで自然と担っていた。
その隣では颯人が段ボールと格闘中。
「えっ、これで神の宮殿ってことにすんの?」
「そう! オレのスーパーアイディアな!」
 笑いながらも、手はしっかりと動いている。
体力バカな彼が、ここまで真面目に取り組むのは、珍しいことかもしれない。

絢と胡桃は、教室の後ろで台本を広げ、アフレコの練習をしていた。
「ん〜、『うさぎ役』って難しいね〜。高めの声で、でも子供っぽすぎないようにって、結構悩むかも。」
「ふふ。でも楽しいね、こうやって一緒に練習できるの。」
「ね! あ、次、私がセリフ言うから、絢はタイミング合わせてね!」
胡桃がぴょこんと立ち上がり、動物の動きを真似しながらセリフを読む。
絢はその横で、息を合わせて台本に声を乗せる。

一方、神奈と千鶴は、少し離れた場所で役の動きと演技の確認をしていた。
「……千鶴、声が少し小さいかも。ツキに力を与えるシーンって、感情も強くなるから、少しだけ声の芯を強くしてもいいかも。」
「……わかった。練習、付き合ってくれる?」
「もちろん!」
二人で何度も繰り返す。そのうち、千鶴の声が、少しずつはっきりと響くようになっていった。
「……ありがとう。やっぱり神奈はすごいね。」
「ふふ、そんなことないよ。一緒に頑張ってるから、できるようになってるだけだよ。」

夕方。教室のカーテンが風に揺れ、オレンジ色の光が差し込んできた。
準備の音、セリフを読む声、笑い声。
全部が、文化祭という“ひとつの目標”に向かって、重なり合っていく。
その空間の真ん中にいる神奈は、まるで夢の中にいるような、不思議な気持ちを覚えていた。
(みんなでひとつのものをつくるって、やっぱり楽しいな……)
気づけば、周りの顔ぶれがどんどん変わっていく現実の中で、今ここにいるこの瞬間だけは、永遠のように感じた。
そして――

「明日からは、体育館での本格的な舞台練習に入るよ!」
先生のその一言に、教室がぱっと明るく沸いた。
「いよいよだな〜!」「え〜、緊張する……!」「でも、楽しみ!」
笑顔と不安と、期待と少しの焦りが入り混じる中。
神奈は改めて、胸の奥に強く感じていた。
(絶対、いい劇にしよう)
これは、ツキの物語であり――


同時に、みんなの物語でもあるから。

2025/10/17 19:24

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