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たとえ未来が同じでも

#10

10話

屋台の灯りがにぎやかに揺れて、
夜の神社には、いくつもの笑い声と足音が混ざっていた。
「うわ、冷たっ!これうまーっ!」
颯人が勢いよくラムネの瓶を傾けて叫ぶ。
「ちょっと、そんな飲み方したら喉にビー玉詰まるよ」
胡桃が呆れ顔で言うと、
「さすがに詰まらねぇよ!!」と、颯人がわざと大げさに笑う。
そのやりとりに、みんなも自然と笑っていた。

それぞれが思い思いの屋台に立ち寄っては、
りんご飴を買ったり、金魚すくいをのぞいたり。
「ね、神奈。この子可愛くない?」
胡桃がすくい終わった金魚を覗き込んで話しかけてくる。
「うん、小さいけど元気そう。大事にしてあげてね」
「ふふっ。……ねぇ、なんか、こういうのいいね」
「こういうの?」
「うん。みんなでさ、浴衣着て、夜に出かけて、屋台まわって……。なんか、“ザ・青春”って感じで」
胡桃の表情は、いつもより少し大人びて見えた。
私も小さく笑って、うなずいた。
「そうだね。きっと、今だけなんだろうけど……それが、すごく嬉しい」
視線の先には、綿あめを頬張っている千鶴の姿。
絢はその隣で、くじ引きの景品を真剣に見つめている。
健気は、というと――
「あっ!見て神奈!!この射的、今だけ3回分おまけって書いてあるよ!」
「え、ほんと?……って、そんなにやるの?」
「やるに決まってるじゃん!だってこのぬいぐるみ、すごく可愛くない?!」
テンション高めに手を引いてくる健気の後ろで、
颯人が目をキラキラさせながら射的の台を物色していた。
「よーし、俺が絶対にアレ落とす!!」
「いや、無理でしょ。颯人には絶対無理だよ」
「誰が無理だと!?見てろ!俺の本気!」
「……うるさいなぁ、ほんとに」
健気が軽くため息をつきながら、でもどこか楽しそうに笑う。
そして――
辺りの灯りがふっと落ち着いたその瞬間。
「……あ、来るよ!」
ドォン――。
空いっぱいに広がる、光の花。
視界のすべてを覆うような鮮やかな輝きに、言葉を失う。
「わあ……」
思わずこぼれた胡桃の声。
それを合図にしたかのように、次々と花火が打ち上がっていく。
みんな、それぞれに花火を見つめていた。
千鶴は静かに目を細め、
絢は「綺麗だね」と言いながらも写真を撮るのに夢中。
健気は目を丸くして空を見上げて、
颯人は「うっひょー!でっけぇ!!」と相変わらず騒がしい。
でも、不思議と、それが心地よかった。
「……来年も、こうして見れるのかな」
ぽつりと呟いた私の声に、胡桃がそっと微笑む。
「大丈夫。来年も、再来年も――ずっと、だよ」
私は笑ってうなずいた。
でも、どこか胸の奥が少しだけ、チクリとしたのは、どうしてだろう。
この夏が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを、ほんの少しだけ思った。

2025/10/13 11:52

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