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たとえ未来が同じでも

#2

【2話】始まりの朝

朝、目を覚ますと、カーテンの隙間から差し込む光がまぶしかった。
「……ふわぁ……」
軽く伸びをして、ベッドから体を起こす。
昨日は入学式だった。帰りに胡桃と寄ったコンビニで買ったお菓子が、机の上に置きっぱなしになっている。
制服のスカートが、ハンガーにかけてあった。
ちゃんと畳んでから寝るつもりだったのに、どうやら昨日はそのまま寝ちゃったらしい。
廊下から、小さな足音が聞こえる。
続いて、勢いよく開いたドアの隙間から、弟たちの騒がしい声が飛び込んできた。
「ねーちゃん! 朝ごはんできてるってー!」
「早くしないとパパが全部食べちゃうぞ〜!」
「わかったってば〜! 今行く!」
声を張り上げながら、ベッドから立ち上がる。
何気なく鏡をのぞき込むと、昨日の朝と同じ顔がそこにある。
ちょっと眠そうな目と、肩までかかる髪。
寝癖がくるりと跳ねていて、思わず苦笑した。
1階に降りると、キッチンには母がいて、トーストを皿に並べていた。
父は新聞を広げながらコーヒーをすすり、双子の弟たちはテレビに夢中。
いつもの朝。
いつも通りの、変わらない風景。
「おはよう〜」
「おはよう、神奈。制服、しわになってない?」
「大丈夫〜、昨日ちゃんとかけたよ、たぶん」
母と軽口を交わしながら、焼きたてのトーストにバターを塗る。
弟のひとりがふいに口を開いた。
「ねーちゃん、今日から本格的に授業?」
「うん、って言っても最初はオリエンテーションばっかだと思うけど」
「ふ〜ん。友達、できそう?」
「もうできてるし」
「えぇ!? ずるーい!」
「ずるくないし!」
笑い声が食卓に広がった。
時間になり、制服に着替えて鏡の前でリボンを結ぶ。
ふと、昨日のことが頭をよぎる。
車が近づいてきた横断歩道、間一髪で引き戻された感覚、あのスーツの男性――
でも、もう気にしていない。
よくある話だ。たまたま、運が良かっただけ。
それより、今日はどんな授業があるのかのほうが気になる。
リュックを背負って、玄関を出ると、春の風がふわりと頬を撫でた。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
家の中から、家族の声が重なる。
私は笑って手を振り、門を出た。
角を曲がると、胡桃がすでに立っていた。
制服のスカートが風に揺れて、彼女は少しだけ目を細めている。
「おはよ、神奈」
「おはよ、胡桃。早いじゃん」
「そりゃあね。今日からが本番でしょ?」
そう言って笑う胡桃に、つられて私も笑った。
並んで歩き出す。
昨日と同じ道。けれど今日は、新しい一日が始まる。
そんな気がしていた。

2025/10/13 08:15

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