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100日後にいなくなる私。

#6

【6日目】

教室はざわざわしていた。授業前の時間。私は席に着き、ノートやペンを押し入れから取り出す。胸がざわついている。今日は、班で災害をテーマにまとめ、発表する日だ。
先生が黒板前に歩み寄り、声を張る。
「皆さん、これから班活動を始めます。班は今度発表形式でまとめてください。まず、班の自己紹介から、役割分担を決めましょう」
私は視線を伏せたまま、ノートに目を落とす。他のクラスメイトの声が遠く聞こえる。隣の綾瀬さんは、じっと教科書を見ていた。言葉を交わしたことはほとんどないけれど、存在を感じる。
先生が指名して、班ごとに分かれて席を動かす。私も立ち上がって、蓬莱さんがまとめ役になった班へ向かう。皇さんも同じ班。皇さんとは、まだ一度も話したことがない。
少し緊張して、心臓が速くなる。声が震えそうで、うまく言葉が出ない予感がする。
班が一か所に集まると、蓬莱さんが最初に立った。
「では、自己紹介をしましょうか。私は蓬莱です。よろしくお願いします」
声がしっかりしていて、聞きやすかった。次に、綾瀬さんが静かに名前を言った。
「綾瀬です。よろしくお願いします」
綾瀬さんの声は控えめで、でもまっすぐにこちらを見ていた。その視線が、私には不思議だった。誰かが自分を見てくれてる感じ。今まであまりなかった感覚。
次に皇さんが挨拶した。
「皇華乃音と申しますわ。皆さんとご一緒できて光栄ですの」
その口調は、優雅で、少し距離を感じさせる。けれど、どこか柔らかさもあって、私は思わず引きつけられた。
最後に、私の番。緊張で息が詰まりそうになる。声を出すかどうか迷って、でも、ほんの小さな声を振り絞った。
「遥です……よろしくお願いします」
声は震えていた。少ししか聞こえないかもしれない。でも、言えた自分を、かすかに褒めたくなる。
自己紹介が終わると、班でテーマをどうするか話し合いが始まった。蓬莱さんがすっと提案する。
「災害をいくつかに分けましょう。地震、洪水、台風、火山……。みんなで分担して調べて発表しましょう」
皇さんが手を挙げ、ゆっくり言った。
「私は火山災害の分野をやってみたいと思いますの」
その声には自信があった。けれど私は、口を閉じたままじっと聞いた。
私は、蓬莱さんに小さく促されて、質問した。「あの……地震の被害って、何を見ればいいですか……?」声がかすれて、言葉が詰まりそうになる。
蓬莱さんは、にこりと笑いながら答えた。「被害が出ている地域、それぞれの建物被害、人的被害、救助活動などを資料で見てみるといいわ」
その説明が、私には道しるべのように感じられた。
綾瀬さんはその間、静かにノートにメモを取りながら、たまに私を見てくる。私も思わず顔を逸らす。
話し合いが進み、役割分担が決まった。私は「被害のデータ集め」を担当することになった。声はまだ震えるけれど、少しだけ、自分の存在がこの班に置かれた気がした。
授業が終わるチャイムが鳴る。班員たちはノートや資料をしまい始める。皇さんは静かに立ち上がり、「準備がんばりましょうね」とだけ言って席を移る。
あっという間に時間が過ぎた気がして、私は息をついた。
帰り道、教室を後にしながら、ポケットの中でスマホを握る。
【100日後に死ぬ私 6日目】
今日は班活動で、初めて皇さんと一緒の班になった。
自己紹介で、小さな声だけれど、自分の名前を言えた。
蓬莱さんは頼れる。綾瀬さんは静かな強さを持ってる。
声はまだ怖い。でも、今日、少しだけ、班の輪の中に入れた気がした。
明日は、もう少し声が出せますように。

2025/10/13 11:52

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