教室の扉を開けた瞬間、いつも通り、空気がすこしだけ冷たくなった。
誰かの会話がほんの一瞬だけ止まり、またすぐに戻る。
私は目を伏せて、何も言わずに席へと歩いた。
後ろ指をさされるわけじゃない。あからさまな笑い声が上がるわけでもない。
ただ、見えない膜のようなものが、私をクラスの「外」に押しやる。
---------------------
席に着く。
バッグを横にかけ、筆箱を出す。
それだけで、十分すぎるほどの気力を使った。
隣の席には、いつも通り綾瀬さんがいた。
今日も静かに、ゆっくりと本を読んでいる。
前までは、誰が隣でも関係なかった。
みんな私を避けるから。
でも今は、少しだけ意識してしまう。
綾瀬さんは、必要以上に私を避けない。
昨日のペアトークで話してから、一回も話してない。
その前も話したことなんてない。
なのに、たまにコチラを見て微笑んでくる。
それが、不思議でたまらなかった。
無関心のようで、どこか、こちらを見ているような感じがするから。
----------------
授業が始まり、黒板の前に先生が立つ。
私はペンを持って、ただ紙の上に文字を並べていく。
意味は、頭に入らなかった。
思考のどこかが、ずっと綾瀬さんのほうを向いている。
話しかける勇気なんて、なかった。
でも、隣にいるというだけで、昨日よりも息がしやすい。
そんな風に思ってしまう自分が、少しだけ怖かった。
----------------------
昼休み、私は立ち上がらなかった。
教室に残る生徒は少ない。
みんな、それぞれの場所へと散っていく。
私はカバンから、くしゃくしゃのおにぎりを取り出した。
買ったものじゃない。昨日の残りを、ラップで包んできただけ。
食欲は、やっぱりあまりなかった。
でも、机に向かって黙々と食べる綾瀬さんの姿が、少しだけ私を落ち着かせた。
彼女の弁当は、小さなタッパーに詰められていて、色合いも綺麗だった。
誰かが作ったのか、自分で作ったのかは分からない。
私はただ、視界の隅で彼女の横顔を見つめていた。
それだけで、不思議と時間が穏やかに流れていく気がした。
-------------------
放課後、私は誰よりも遅れて教室を出た。
綾瀬さんの席はもう誰も座っていなかった。
ふと、窓の外に目を向ける。
曇り空のすき間から、少しだけ光が差していた。
私はスマホを取り出し、今日の記録を残す。
--------------------
【100日後に死ぬ私 5日目】
今日は、誰とも話していない。
でも、教室で昼ごはんを食べてみた。
綾瀬さんが隣にいたから。
それだけで、少しだけ、怖くなかった。
声はかけられなかった。
でも、今日の私は、昨日より少しだけ――生き生きしてた。
---------------------
明日は、何かひとことだけでも言えるように。
きっかけがほしい。
ほんの、ささいな理由でいい。
あれ、、、、私、成長してる、、、?
みんなと仲良くなれるのも、そう遠くないのかな、?
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私が死ぬまで、残り95日
誰かの会話がほんの一瞬だけ止まり、またすぐに戻る。
私は目を伏せて、何も言わずに席へと歩いた。
後ろ指をさされるわけじゃない。あからさまな笑い声が上がるわけでもない。
ただ、見えない膜のようなものが、私をクラスの「外」に押しやる。
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席に着く。
バッグを横にかけ、筆箱を出す。
それだけで、十分すぎるほどの気力を使った。
隣の席には、いつも通り綾瀬さんがいた。
今日も静かに、ゆっくりと本を読んでいる。
前までは、誰が隣でも関係なかった。
みんな私を避けるから。
でも今は、少しだけ意識してしまう。
綾瀬さんは、必要以上に私を避けない。
昨日のペアトークで話してから、一回も話してない。
その前も話したことなんてない。
なのに、たまにコチラを見て微笑んでくる。
それが、不思議でたまらなかった。
無関心のようで、どこか、こちらを見ているような感じがするから。
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授業が始まり、黒板の前に先生が立つ。
私はペンを持って、ただ紙の上に文字を並べていく。
意味は、頭に入らなかった。
思考のどこかが、ずっと綾瀬さんのほうを向いている。
話しかける勇気なんて、なかった。
でも、隣にいるというだけで、昨日よりも息がしやすい。
そんな風に思ってしまう自分が、少しだけ怖かった。
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昼休み、私は立ち上がらなかった。
教室に残る生徒は少ない。
みんな、それぞれの場所へと散っていく。
私はカバンから、くしゃくしゃのおにぎりを取り出した。
買ったものじゃない。昨日の残りを、ラップで包んできただけ。
食欲は、やっぱりあまりなかった。
でも、机に向かって黙々と食べる綾瀬さんの姿が、少しだけ私を落ち着かせた。
彼女の弁当は、小さなタッパーに詰められていて、色合いも綺麗だった。
誰かが作ったのか、自分で作ったのかは分からない。
私はただ、視界の隅で彼女の横顔を見つめていた。
それだけで、不思議と時間が穏やかに流れていく気がした。
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放課後、私は誰よりも遅れて教室を出た。
綾瀬さんの席はもう誰も座っていなかった。
ふと、窓の外に目を向ける。
曇り空のすき間から、少しだけ光が差していた。
私はスマホを取り出し、今日の記録を残す。
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【100日後に死ぬ私 5日目】
今日は、誰とも話していない。
でも、教室で昼ごはんを食べてみた。
綾瀬さんが隣にいたから。
それだけで、少しだけ、怖くなかった。
声はかけられなかった。
でも、今日の私は、昨日より少しだけ――生き生きしてた。
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明日は、何かひとことだけでも言えるように。
きっかけがほしい。
ほんの、ささいな理由でいい。
あれ、、、、私、成長してる、、、?
みんなと仲良くなれるのも、そう遠くないのかな、?
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私が死ぬまで、残り95日