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100日後にいなくなる私。

#1

【1日目】やっぱり、私は嫌われている

 「君は、あと……おそらく、百日。百日くらいだと思います」
 医者の口ぶりはやけに淡々としていた。
 まるで、天気予報でも聞かされているような気分だった。
 私は黙って頷いた。
 泣きもしなかったし、怒りもしなかった。
 そうする感情が、出てこなかった。
 たぶん私は、最初から人生なんて終わっていたんだ。
 親に殴られる日々。
 ごはんの時間は、怒号と暴力の時間だった。
 外に逃げても、学校では「気持ち悪い」「喋ったら呪われそう」と笑われた。
 いつしか「疫病神」というあだ名がついて、みんなが私を避けるようになった。
 笑ったことなんて、一度もない。
 “笑われること”は、何度もあったけど。
 先生たちは見て見ぬふり。
 それが社会なんだと、子供ながらに悟った。
 それでも――。
 あと100日で終わるなら、
 私のことを、少しでも“知って”もらってから死にたいと思った。
 何かひとつでも、誰かひとりでも。
 私のことを、「可哀想」でも「変なやつ」でもなく、
 “ちゃんとした人間”として見てくれる人がいたら――
 初めて、「笑う」ってことができると思う。

------------------------------------
 朝の教室は、ざわざわとした喧騒で満ちていた。
 私がドアを開けた瞬間、その空気がほんの少しだけ変わる。
 目の端で、数人が私をちらっと見て、すぐに視線を逸らす。
 いつものことだ。
 私の姿を見ると、教室の空気が少しだけ冷たくなる。
 私は無言で、窓際の席に座った。
 バッグを机の横にかけ、カバンの中から筆箱を出す。
 全部、機械的な動き。
 それでも、今日は少し違う。
 私は――喋ろうと思っていた。
 席の前の女子が、ノートを取り出している。
 クラスで特に目立つタイプではないけど、いつも一人で読書をしていて、私と同じ“目立たない”側の人間。
 ……それでも、私とは違って、ちゃんと「人間」として認識されている人。
 喉が渇く。声を出すのが怖い。
 だって、私が声を出すと、笑われるか、気持ち悪がられるか、無視されるか――。
 でも、でも。
 私はもう、100日しかない。
 たった一言だけ。声をかけてみるだけ。
 それくらいで、何が変わるわけじゃないかもしれないけど――
 それでも、やってみたかった。
 勇気を振り絞る。
 胃がねじれるような感覚。心臓が、ドクドクと不自然なほどに早く打っている。
 口が乾いて、舌が引っかかる。
 それでも、私は――言った。
 「……あの……」
 声になっていなかった。蚊の鳴くような声。
 彼女は、反応しなかった。聞こえていなかったのか、それとも――
 「…………」
 ……違う。違った。
 彼女は、肩をすくめて、少しだけ身を引いた。
 ほんの数センチ。でも、それが全部だった。
 ああ、私はやっぱり――気持ち悪いんだ。

--------------------------------
 昼休み、誰とも目を合わせずに、私は屋上に向かった。
 人が来ない場所。風の音だけが聞こえる。
 ポケットからスマホを取り出す。
 カメラを開いて、自撮りモードにしてみた。
 画面の中の私は、ぼさぼさの髪、青白い顔、死んだ目。
 服はくたびれていて、袖口には縫い目のほつれ。
 まるで幽霊みたいだった。
 「……こんな私、誰が好きになるのさ」
 画面越しの自分に、問いかけた。
 当然、返事はない。
 私は画面を閉じ、スマホのメモ帳を開いた。


【100日後に死ぬ私 1日目】
 初めて、自分から声をかけようとした。
 失敗した。
 きっと、声も震えてたし、気持ち悪かったんだろう。
 それでも、自分なりに頑張ったつもり。
 今日は0点。
 でも、0点からしか始められない人間だっている。
 次は、もう少しだけ声を大きく出せたらいい。
-------------------------------
 風が、空っぽの教室みたいに吹き抜けていった。
 私は、屋上のフェンスに手をかけて空を見上げた。
 あと99日。
 この世界に、自分の形を少しでも残せるのだろうか。

作者メッセージ

えー、、初めまして。
彩り豊かな小説を
と申します。
今回、100話に渡る超長編に挑戦してみました。
この物語は見たらわかる通り、嫌われている少女が100日後に幸せに死ねるように頑張る物語です。
どうか、最後まで見ていって下さい。

2025/10/11 15:37

彩り豊かな小説を
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100日後嫌われ愛されいじめ

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