◇
戦闘が終わり、一先ず全員集合した。
負傷者は二人、円卓の騎士と赤い靴だ。私は口を開く。
「どうせそんなことだろうと思ってもう呼んでおいたわ、御伽噺保全委員会の回復役。」
遠くに馬に乗る二人の人影が見える。
「アーサー!大丈夫かー!?」
そう叫びながら馬に乗ってきたのはくるみ割り人形...本名、クララ・ドール・カナッツである。
彼女はアーサー・クローディン...即ち、円卓の騎士の彼女でもある。
...それはそうと彼女は呼んでいないはずだが...。まさか彼氏が心配で来てしまったのだろうか?
「みんな〜!ボクが来たよ〜!」
くるみ割り人形の後ろの馬に乗っているのは塔の上のラプンツェルの末裔、ラツェルだ。
彼は戦闘に特化した人間が多い委員会の中で珍しい、回復役に徹したタイプだった。
激しい戦闘をする機会が多い我々にとって、非常にありがたい人材である。
「っ...クララ...?」
円卓の騎士が自分の彼女が来たことに気付いたのか、ぼそりと呟いた。
思わず私の口から反射的に皮肉が飛び出る。
「お熱いことね。死にかけの騎士様を迎えに、わざわざお姫様が馬を飛ばしてくるなんて。」
「相変わらずくるみ割り人形は心配性ね〜。
前回円卓の騎士が倒れたときだって、15分後にはこちらへたどり着いてたわよ♡」
そう狐の嫁入りが話す。そうだ、そんなこともあったな...。
紅薔薇が悪態をついた。
「ッチ、カップルが...。」
「...そんなことより、早く私の貧血をどうにかして...。」
忘れていた。そう、こちらには二人の負傷者が居るのである。
一人はめまいと吐き気、もう一人は貧血。
「ラプンツェル、早く治療を開始して頂戴。」
私がそう指示すると、ラプンツェルは円卓の騎士と赤い靴の手を片方ずつ握った。
「分かった。
......うわ、かなり辛そうだね...。ボクにはこれくらいしか出来ないけれど...。」
そう言ってラプンツェルが目からポロポロと涙を零す。
その涙が彼らの触れると そこが仄かに光り輝いた後、光は空気に溶けていった。
「...ありがとう、助かったよ...。」
「...私も。ありがとね!」
ラプンツェルの治療が終わり、二人の顔に血色が戻るのを確認して、私はふうと小さく息を吐いた。
だが、安堵の空気は長くは続かない。
地響きのような勢いで馬から飛び降り、砂埃を上げて駆け寄ってきた影があったからだ。
「アーサー!!」
くるみ割り人形が、文字通り騎士に飛びついた。
「...っ、クララ、苦しい...そんなに勢いよく来なくても、僕は......。」
「僕は、じゃないぞ!また無茶して!ラプンツェルがいなかったらどうするつもりだったんだ?」
まくしたてる彼女と、タジタジになりながらもどこか嬉しそうな彼。
その光景を眺めながら、紅薔薇が「あーあ、やってらんね」と吐き捨てるように顔を背けた。
「...あ、あの、ボク、まだ泣いてる最中なんだけどな......。
二人とも、少しはボクの存在も思い出して?」
治療のために涙を流し続けているラプンツェルが、ハンカチで目元を拭いながら困ったように笑う。
私はそんな彼を横目に、小さくため息をついた。
「......再会を喜ぶのは勝手だけど、ここがまだ戦場の跡地だってことは忘れないで頂戴。
狐の嫁入り、周囲の警戒を継続。ラプンツェルは赤い靴のバイタルをもう一度チェックして。...それから、」
私は、抱き合う二人に冷ややかな視線を向けた。
「そこの騎士様とお姫様。
公衆の面前で失神するほど熱い抱擁を交わしたいなら、せめて家に戻ってからにしてくれるかしら?」
私がそう言うと、くるみ割り人形は歯を見せて笑った。
そして私は、胃痛が戻ってくることを確信し、頭を抱えるのだった。
◆
戦闘が終わり、一先ず全員集合した。
負傷者は二人、円卓の騎士と赤い靴だ。私は口を開く。
「どうせそんなことだろうと思ってもう呼んでおいたわ、御伽噺保全委員会の回復役。」
遠くに馬に乗る二人の人影が見える。
「アーサー!大丈夫かー!?」
そう叫びながら馬に乗ってきたのはくるみ割り人形...本名、クララ・ドール・カナッツである。
彼女はアーサー・クローディン...即ち、円卓の騎士の彼女でもある。
...それはそうと彼女は呼んでいないはずだが...。まさか彼氏が心配で来てしまったのだろうか?
「みんな〜!ボクが来たよ〜!」
くるみ割り人形の後ろの馬に乗っているのは塔の上のラプンツェルの末裔、ラツェルだ。
彼は戦闘に特化した人間が多い委員会の中で珍しい、回復役に徹したタイプだった。
激しい戦闘をする機会が多い我々にとって、非常にありがたい人材である。
「っ...クララ...?」
円卓の騎士が自分の彼女が来たことに気付いたのか、ぼそりと呟いた。
思わず私の口から反射的に皮肉が飛び出る。
「お熱いことね。死にかけの騎士様を迎えに、わざわざお姫様が馬を飛ばしてくるなんて。」
「相変わらずくるみ割り人形は心配性ね〜。
前回円卓の騎士が倒れたときだって、15分後にはこちらへたどり着いてたわよ♡」
そう狐の嫁入りが話す。そうだ、そんなこともあったな...。
紅薔薇が悪態をついた。
「ッチ、カップルが...。」
「...そんなことより、早く私の貧血をどうにかして...。」
忘れていた。そう、こちらには二人の負傷者が居るのである。
一人はめまいと吐き気、もう一人は貧血。
「ラプンツェル、早く治療を開始して頂戴。」
私がそう指示すると、ラプンツェルは円卓の騎士と赤い靴の手を片方ずつ握った。
「分かった。
......うわ、かなり辛そうだね...。ボクにはこれくらいしか出来ないけれど...。」
そう言ってラプンツェルが目からポロポロと涙を零す。
その涙が彼らの触れると そこが仄かに光り輝いた後、光は空気に溶けていった。
「...ありがとう、助かったよ...。」
「...私も。ありがとね!」
ラプンツェルの治療が終わり、二人の顔に血色が戻るのを確認して、私はふうと小さく息を吐いた。
だが、安堵の空気は長くは続かない。
地響きのような勢いで馬から飛び降り、砂埃を上げて駆け寄ってきた影があったからだ。
「アーサー!!」
くるみ割り人形が、文字通り騎士に飛びついた。
「...っ、クララ、苦しい...そんなに勢いよく来なくても、僕は......。」
「僕は、じゃないぞ!また無茶して!ラプンツェルがいなかったらどうするつもりだったんだ?」
まくしたてる彼女と、タジタジになりながらもどこか嬉しそうな彼。
その光景を眺めながら、紅薔薇が「あーあ、やってらんね」と吐き捨てるように顔を背けた。
「...あ、あの、ボク、まだ泣いてる最中なんだけどな......。
二人とも、少しはボクの存在も思い出して?」
治療のために涙を流し続けているラプンツェルが、ハンカチで目元を拭いながら困ったように笑う。
私はそんな彼を横目に、小さくため息をついた。
「......再会を喜ぶのは勝手だけど、ここがまだ戦場の跡地だってことは忘れないで頂戴。
狐の嫁入り、周囲の警戒を継続。ラプンツェルは赤い靴のバイタルをもう一度チェックして。...それから、」
私は、抱き合う二人に冷ややかな視線を向けた。
「そこの騎士様とお姫様。
公衆の面前で失神するほど熱い抱擁を交わしたいなら、せめて家に戻ってからにしてくれるかしら?」
私がそう言うと、くるみ割り人形は歯を見せて笑った。
そして私は、胃痛が戻ってくることを確信し、頭を抱えるのだった。
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