◇
さて、この狼たちをどうしようか。
「...数が多いわね。でも、統治だの王様だのと言い張る割には、包囲網が甘いわ」
視界の端で、艶やかな妓女の姿へと変貌した狐の嫁入りが、ゆらりと袖を振る。
その変幻自在な虚飾が、狼たちの野性的な直感に微かな混乱を生んでいるのが分かった。
「紅薔薇、あなたは正面の狼たちを散らして。赤い靴、貴女は跳ね回って攪乱。
狐の嫁入り、あなたはそのまま泥臭くヘイトを稼ぎなさい。」
私は一歩前へ踏み出し、冷たい風の中に混じる獣臭を真っ向から受け止める。
「さあ、一仕事始めましょう。」
私の言葉を合図に、静まり返っていた北の森が、一気に殺気立った。
「あら、案外、お行儀がいいのね。」
私は、低く唸り声を上げながら距離を詰めてくる狼たちの群れを冷ややかに見据えた。
...統治を気取っているだけあって、彼らの動きには野生の無秩序さがない。
指揮官の合図を待つ兵士のような、薄気味悪い静寂がそこにはあった。
「...でも、その『規律』が命取りよ。」
私の呟きが終わるより早く、紅薔薇が地面を蹴った。
「あーあ、服が汚れるっつーの!」
吐き捨てながら振るわれた短剣が、最前列の狼の喉笛を正確に切り裂く。
鮮血が舞う中、紅薔薇の動きは獣よりも鋭かった。
...その一方、赤い靴は可憐にひらひらと舞っていた。
「あはは! ほらほら、こっちよ! 」
彼女が手足を動かすたび、狼たちの手足が彼らの意志と関係なく動いていく。
味方を切りつけたと思えば、訳の分からぬ方向へ腕が曲がっていく。...まさに地獄絵図ね。
「...ほらぁ、ぼーっとしてないで攻撃してきなよぉ〜www」
妓女へと姿を変えた狐の嫁入りが、扇子で口元を隠しながら艶然と微笑む。
その周囲には、幻惑の霧が立ち込めていた。
狼たちは、目の前にいるのが「獲物」なのか「愛しい仲間」なのか、あるいは「恐ろしい化け物」なのか、判断を狂わされているようだ。
やればできるじゃない、なんて思いながら、視線を右端へ向ける。
「隠れてないで出てきたらどう?」
草むらからがさりと音がした。
出てきたのは金髪碧眼の男。
「......そ、それ、僕に言ってます?」
「お茶の時間までには、この森を『更地』にする予定なの。協力してくれるかしら?」
アーサー・クローディン。通称円卓の騎士である。
「え、で、でも僕...」
「煩いわね、協力しろって言ってるの。」
人手なんてあればあるほどいいもの。
しかも、大規模な戦闘といったらそれこそ。
「ほら、とっとと働いて頂戴。」
そう言って私は円卓の騎士の背中を押した。
◆
さて、この狼たちをどうしようか。
「...数が多いわね。でも、統治だの王様だのと言い張る割には、包囲網が甘いわ」
視界の端で、艶やかな妓女の姿へと変貌した狐の嫁入りが、ゆらりと袖を振る。
その変幻自在な虚飾が、狼たちの野性的な直感に微かな混乱を生んでいるのが分かった。
「紅薔薇、あなたは正面の狼たちを散らして。赤い靴、貴女は跳ね回って攪乱。
狐の嫁入り、あなたはそのまま泥臭くヘイトを稼ぎなさい。」
私は一歩前へ踏み出し、冷たい風の中に混じる獣臭を真っ向から受け止める。
「さあ、一仕事始めましょう。」
私の言葉を合図に、静まり返っていた北の森が、一気に殺気立った。
「あら、案外、お行儀がいいのね。」
私は、低く唸り声を上げながら距離を詰めてくる狼たちの群れを冷ややかに見据えた。
...統治を気取っているだけあって、彼らの動きには野生の無秩序さがない。
指揮官の合図を待つ兵士のような、薄気味悪い静寂がそこにはあった。
「...でも、その『規律』が命取りよ。」
私の呟きが終わるより早く、紅薔薇が地面を蹴った。
「あーあ、服が汚れるっつーの!」
吐き捨てながら振るわれた短剣が、最前列の狼の喉笛を正確に切り裂く。
鮮血が舞う中、紅薔薇の動きは獣よりも鋭かった。
...その一方、赤い靴は可憐にひらひらと舞っていた。
「あはは! ほらほら、こっちよ! 」
彼女が手足を動かすたび、狼たちの手足が彼らの意志と関係なく動いていく。
味方を切りつけたと思えば、訳の分からぬ方向へ腕が曲がっていく。...まさに地獄絵図ね。
「...ほらぁ、ぼーっとしてないで攻撃してきなよぉ〜www」
妓女へと姿を変えた狐の嫁入りが、扇子で口元を隠しながら艶然と微笑む。
その周囲には、幻惑の霧が立ち込めていた。
狼たちは、目の前にいるのが「獲物」なのか「愛しい仲間」なのか、あるいは「恐ろしい化け物」なのか、判断を狂わされているようだ。
やればできるじゃない、なんて思いながら、視線を右端へ向ける。
「隠れてないで出てきたらどう?」
草むらからがさりと音がした。
出てきたのは金髪碧眼の男。
「......そ、それ、僕に言ってます?」
「お茶の時間までには、この森を『更地』にする予定なの。協力してくれるかしら?」
アーサー・クローディン。通称円卓の騎士である。
「え、で、でも僕...」
「煩いわね、協力しろって言ってるの。」
人手なんてあればあるほどいいもの。
しかも、大規模な戦闘といったらそれこそ。
「ほら、とっとと働いて頂戴。」
そう言って私は円卓の騎士の背中を押した。
◆