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◆
「......あ、あ、」
背後で、兄様___ヘンゼルの壊れた笛のような声がした。
ああ、そんな声をさせたいわけじゃなかったのに。
私は壁に背を預け、裂けたメイド服の袖から覗く自分の腕を眺める。
次の瞬間、兄様が叫んだ。
「姉様、大丈夫!?」
私の腕には木苺ジャムのような赤黒い液体が。
それは、氷砂糖の刃で仕留め損ねたあの「魔女」の残党が、死に物狂いで振り回したナイフの跡だった。
「大丈夫?痛い?待ってて、今手当てをするから...!
ああ最悪だ、魔女のせいで僕の姉様が、こんなにも...」
駆け寄ってきたヘンゼルの指先が、私の傷口のすぐ側を滑る。
普段はあんなに器用に獲物を解体するその手が、今は、私だけを捉えている。
「いいのよ、兄様。そんなに怒らないで。少し油断しただけだもの。」
兄様は必死な手つきで救急箱を漁り、包帯を取り出した。
「ダメだよ、姉様。君の肌に傷が残ったら、僕が僕を許せない。」
彼の瞳から、人間らしい光がみるみる消えて、どろりとした執着に変わっていく。
兄様がこんな顔をすることは滅多にない_____と言っても、私が少しでも傷つくとすぐこうなるが。
「痛い? ごめんね、すぐに終わるから。」
消毒液の冷たい刺激が走る。けれど、それ以上にヘンゼルの体温が熱い。
彼は私の腕を、まるで壊れやすいガラス細工でも扱うように丁寧に包帯で巻いていく。
...そんなに優しく扱わなくてもいいのに。
「心配しすぎよ、兄様。大丈夫、手当てぐらい自分でできるわ。
兄様こそ大丈夫なの?さっきの戦闘でかなりの体力を消費したでしょう?」
私がそう言っても、彼は聞く耳を持たずに一言。
「愛しいる人を守りたいのは当たり前でしょ?」
そう言いながら私の腕を必死に手当てをしてくれる彼の目は、真剣そのもので。
...何故か、少しだけ、懐かしい気がした。
「ふふ、嬉しいわ、兄様。
兄様の手、暖かい...。
こんなに優しくしてくれるのなら、怪我をして良かったなんて、少しだけ思っちゃうわね。」
私は空いている方の手で、彼の頬を撫でる。
兄様が私を見上げた。その黒い瞳には、私しか映っていなくて。
外ではまだ、逃げ惑うネズミたちの悲鳴が聞こえるけれど、そんなものはどうでもいい。
「...はい、姉様、包帯、綺麗に巻けたよ。」
私は立ち上がり、彼と指を絡める。
「ありがとう、兄様。助かったわ。」
私がそう口にすると、彼は柔らかく微笑んだ。
「お返しに、今度は私が兄様のことを手当てするわね。」
私たちは二人でひとつ。この世で一番残酷で、この世で一番幸せな兄妹なのだから。
◇
砂糖菓子より包帯を!
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「......あ、あ、」
背後で、兄様___ヘンゼルの壊れた笛のような声がした。
ああ、そんな声をさせたいわけじゃなかったのに。
私は壁に背を預け、裂けたメイド服の袖から覗く自分の腕を眺める。
次の瞬間、兄様が叫んだ。
「姉様、大丈夫!?」
私の腕には木苺ジャムのような赤黒い液体が。
それは、氷砂糖の刃で仕留め損ねたあの「魔女」の残党が、死に物狂いで振り回したナイフの跡だった。
「大丈夫?痛い?待ってて、今手当てをするから...!
ああ最悪だ、魔女のせいで僕の姉様が、こんなにも...」
駆け寄ってきたヘンゼルの指先が、私の傷口のすぐ側を滑る。
普段はあんなに器用に獲物を解体するその手が、今は、私だけを捉えている。
「いいのよ、兄様。そんなに怒らないで。少し油断しただけだもの。」
兄様は必死な手つきで救急箱を漁り、包帯を取り出した。
「ダメだよ、姉様。君の肌に傷が残ったら、僕が僕を許せない。」
彼の瞳から、人間らしい光がみるみる消えて、どろりとした執着に変わっていく。
兄様がこんな顔をすることは滅多にない_____と言っても、私が少しでも傷つくとすぐこうなるが。
「痛い? ごめんね、すぐに終わるから。」
消毒液の冷たい刺激が走る。けれど、それ以上にヘンゼルの体温が熱い。
彼は私の腕を、まるで壊れやすいガラス細工でも扱うように丁寧に包帯で巻いていく。
...そんなに優しく扱わなくてもいいのに。
「心配しすぎよ、兄様。大丈夫、手当てぐらい自分でできるわ。
兄様こそ大丈夫なの?さっきの戦闘でかなりの体力を消費したでしょう?」
私がそう言っても、彼は聞く耳を持たずに一言。
「愛しいる人を守りたいのは当たり前でしょ?」
そう言いながら私の腕を必死に手当てをしてくれる彼の目は、真剣そのもので。
...何故か、少しだけ、懐かしい気がした。
「ふふ、嬉しいわ、兄様。
兄様の手、暖かい...。
こんなに優しくしてくれるのなら、怪我をして良かったなんて、少しだけ思っちゃうわね。」
私は空いている方の手で、彼の頬を撫でる。
兄様が私を見上げた。その黒い瞳には、私しか映っていなくて。
外ではまだ、逃げ惑うネズミたちの悲鳴が聞こえるけれど、そんなものはどうでもいい。
「...はい、姉様、包帯、綺麗に巻けたよ。」
私は立ち上がり、彼と指を絡める。
「ありがとう、兄様。助かったわ。」
私がそう口にすると、彼は柔らかく微笑んだ。
「お返しに、今度は私が兄様のことを手当てするわね。」
私たちは二人でひとつ。この世で一番残酷で、この世で一番幸せな兄妹なのだから。
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砂糖菓子より包帯を!
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