閲覧前に必ずご確認ください
この小説を読んでいて不快な気持ちになった方は、即座にブラウザバックすることを推奨致します。
✦
皆川夏奈 様
拝啓
先立つ幸せをお許し下さい。
この度私、野村詩織は結婚することになりました。
それに伴い、結婚式の招待を__________
✧
親友が、結婚した。
付き合っていたのは知っていたけれど、こんなに早く結婚するとは思っていなかった。
「⋯⋯詩織、そんなのもっと早く教えてよ⋯⋯」
どうせ今回もあんな男と別れる、と何処か油断していた自分がいた。
あいつよりも私の方が詩織のことが大好きだって ずっと思っていた。
私は眼の前の 純白のドレスに身を包んだ詩織を眺める。
やはり何度見ても、隣にいるのは私ではなくあの男だった。
悔しいなあ、と思う。
数十年の付き合いの私を差し置いて、彼女はぽっと出のあの男と幸せになるのか、なんて考える。
それはそれは憎たらしくて、晴々とした笑顔であろう男の顔を見る気にはなれなかった。
『___それでは新婦のご友人、皆川夏奈様。スピーチの方を___』
そう司会の人がマイクを通して話しかける。
別に、詩織が恋愛的に好きな訳じゃない。きっといつまで経ってもこの感情に名前はつけられないなと思う。
「あ、夏奈!」
ガタリ、席をたった瞬間に詩織は私の目を真っ直ぐ見つめる。
彼女は私にしか見えないぐらいの小ささで、手を振った。
笑顔が、素敵だった。
この笑顔を家で見られるのは、もうあの男になってしまったのか、と思う。
つい数ヶ月前、独りぼっちになった1LDKの部屋は最近やけに広く感じるな、なんてふと思い出す。
ポケットの中から、小さく折りたたんだ紙を取り出した。
詩織へのメッセージを読もうと正面を向く。
⋯⋯そのとき、不覚にもあの男と目が合ってしまった。
彼は気不味そうに目を逸らす訳でも、小さく会釈する訳でもなく、私にふわりと微笑んだ。
それはそれは、詩織に似た、春の陽だまりみたいな微笑みだった。
ああきっと彼女はこの男のこういうところに惹かれたんだろうなあ、と思った。
⋯だって、親友の私には出来っこない笑顔だったから。
悔しいなあ、と思う。
こんな私がなれない、彼女の好みが詰まったような人間に、私が勝てるはずもないから。
ぐしゃり、手にある紙を潰す。
あまりにも悔しいものだから、スピーチで一言 言ってやろうかと思っていたけれど、やっぱりやめた。
こんなスピーチは、詩織の、私の親友の、私の大好きな人の、華やかな晴れ舞台には似合わない。
「詩織。」
アドリブだけど仕方ない、なんて考える。
「結婚おめでとう。」
少しの沈黙の後、私はマイクの前で口を開いた。
✦
__________以上の理由から、
私は野村詩織の結婚をどうしても許すことができません。
先立つ不幸をお許し下さい。
敬具
皆川夏奈
✧
皆川夏奈 様
拝啓
先立つ幸せをお許し下さい。
この度私、野村詩織は結婚することになりました。
それに伴い、結婚式の招待を__________
✧
親友が、結婚した。
付き合っていたのは知っていたけれど、こんなに早く結婚するとは思っていなかった。
「⋯⋯詩織、そんなのもっと早く教えてよ⋯⋯」
どうせ今回もあんな男と別れる、と何処か油断していた自分がいた。
あいつよりも私の方が詩織のことが大好きだって ずっと思っていた。
私は眼の前の 純白のドレスに身を包んだ詩織を眺める。
やはり何度見ても、隣にいるのは私ではなくあの男だった。
悔しいなあ、と思う。
数十年の付き合いの私を差し置いて、彼女はぽっと出のあの男と幸せになるのか、なんて考える。
それはそれは憎たらしくて、晴々とした笑顔であろう男の顔を見る気にはなれなかった。
『___それでは新婦のご友人、皆川夏奈様。スピーチの方を___』
そう司会の人がマイクを通して話しかける。
別に、詩織が恋愛的に好きな訳じゃない。きっといつまで経ってもこの感情に名前はつけられないなと思う。
「あ、夏奈!」
ガタリ、席をたった瞬間に詩織は私の目を真っ直ぐ見つめる。
彼女は私にしか見えないぐらいの小ささで、手を振った。
笑顔が、素敵だった。
この笑顔を家で見られるのは、もうあの男になってしまったのか、と思う。
つい数ヶ月前、独りぼっちになった1LDKの部屋は最近やけに広く感じるな、なんてふと思い出す。
ポケットの中から、小さく折りたたんだ紙を取り出した。
詩織へのメッセージを読もうと正面を向く。
⋯⋯そのとき、不覚にもあの男と目が合ってしまった。
彼は気不味そうに目を逸らす訳でも、小さく会釈する訳でもなく、私にふわりと微笑んだ。
それはそれは、詩織に似た、春の陽だまりみたいな微笑みだった。
ああきっと彼女はこの男のこういうところに惹かれたんだろうなあ、と思った。
⋯だって、親友の私には出来っこない笑顔だったから。
悔しいなあ、と思う。
こんな私がなれない、彼女の好みが詰まったような人間に、私が勝てるはずもないから。
ぐしゃり、手にある紙を潰す。
あまりにも悔しいものだから、スピーチで一言 言ってやろうかと思っていたけれど、やっぱりやめた。
こんなスピーチは、詩織の、私の親友の、私の大好きな人の、華やかな晴れ舞台には似合わない。
「詩織。」
アドリブだけど仕方ない、なんて考える。
「結婚おめでとう。」
少しの沈黙の後、私はマイクの前で口を開いた。
✦
__________以上の理由から、
私は野村詩織の結婚をどうしても許すことができません。
先立つ不幸をお許し下さい。
敬具
皆川夏奈
✧