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【短編集】シェフの気まぐれオードブル
#1
1. あなたの仇討ち
✦
今日も、先生から、両親から怒られた。
何度も同じ間違いを繰り返したからだ。ヴァイオリンなんて辞めてしまえと言われた。
大好きなヴァイオリンを辞めるなんて絶対に嫌だ。だけど、そんなことを言える勇気は微塵も無くて。
けれど、指が動かなくなった。頭の中がいっぱいいっぱいになって、泣いてしまいたかった。
ヴァイオリンを続けたいのに、もうヴァイオリンなんて辞めてしまいたかった。
「ああ、憧れのあなたならどうしたでしょうか。」
思わず、言葉がこぼれた。
いつも私の憧れだったあなた。才能に溢れていたのにも関わらず、努力を惜しまず、一生懸命だったあなた。
指が動かなくなったとき、孤独感に押しつぶされそうになったとき、あなたも私のようにヴァイオリンを置きたくなったことはありますか。
それとも、その苦しみさえも美しい旋律の一部として、微笑みながら受け入れていたのでしょうか。
「...なんで、あんなに頑張れたんですか。」
言葉が詰まる。もう全て、投げ出してしまいたかった。
春風がカーテンを揺らし、頬を撫でる。窓の向こうに、あなたの幻想が見える。
......いや、あなたはそんなことなんて、しない。
酷いことを言われても、あなたはヴァイオリンを置かないし、苦しみを受け入れたりしない。
あなたはきっと、見返すために、血が滲むような努力をする。
そう思ったら、なぜか心がふわりと軽くなった。
私の幻想のあなたが、窓の外でヴァイオリンで「カノン」を演奏する。
私の幻想のあなたが、憧れのためだったらどんなに辛くても頑張れると微笑む。
「そうですよね、だってあなたは、」
憧れになれないまま、この世界から居なくなってしまったのだから。
なんて残酷なんだろう、と思う。なんであんなに素敵な人が事故にあわなくてはいけないんだ、と思う。
けれどどれだけそう想いにふけたって世界は何も変わらない、とも思う。
ヴァイオリンを再び肩に乗せる。
これはあなたの仇討ちであり、私の憧れでもある。
「きっとそういうものですよね。」
世界は残酷だけど美しいし、それは運命だった。
そんなことを考えながら、私は「カノン」を演奏する。
あなたの仇討ちのために。
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今日も、先生から、両親から怒られた。
何度も同じ間違いを繰り返したからだ。ヴァイオリンなんて辞めてしまえと言われた。
大好きなヴァイオリンを辞めるなんて絶対に嫌だ。だけど、そんなことを言える勇気は微塵も無くて。
けれど、指が動かなくなった。頭の中がいっぱいいっぱいになって、泣いてしまいたかった。
ヴァイオリンを続けたいのに、もうヴァイオリンなんて辞めてしまいたかった。
「ああ、憧れのあなたならどうしたでしょうか。」
思わず、言葉がこぼれた。
いつも私の憧れだったあなた。才能に溢れていたのにも関わらず、努力を惜しまず、一生懸命だったあなた。
指が動かなくなったとき、孤独感に押しつぶされそうになったとき、あなたも私のようにヴァイオリンを置きたくなったことはありますか。
それとも、その苦しみさえも美しい旋律の一部として、微笑みながら受け入れていたのでしょうか。
「...なんで、あんなに頑張れたんですか。」
言葉が詰まる。もう全て、投げ出してしまいたかった。
春風がカーテンを揺らし、頬を撫でる。窓の向こうに、あなたの幻想が見える。
......いや、あなたはそんなことなんて、しない。
酷いことを言われても、あなたはヴァイオリンを置かないし、苦しみを受け入れたりしない。
あなたはきっと、見返すために、血が滲むような努力をする。
そう思ったら、なぜか心がふわりと軽くなった。
私の幻想のあなたが、窓の外でヴァイオリンで「カノン」を演奏する。
私の幻想のあなたが、憧れのためだったらどんなに辛くても頑張れると微笑む。
「そうですよね、だってあなたは、」
憧れになれないまま、この世界から居なくなってしまったのだから。
なんて残酷なんだろう、と思う。なんであんなに素敵な人が事故にあわなくてはいけないんだ、と思う。
けれどどれだけそう想いにふけたって世界は何も変わらない、とも思う。
ヴァイオリンを再び肩に乗せる。
これはあなたの仇討ちであり、私の憧れでもある。
「きっとそういうものですよね。」
世界は残酷だけど美しいし、それは運命だった。
そんなことを考えながら、私は「カノン」を演奏する。
あなたの仇討ちのために。
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