◇
私は横髪を耳にかける。
「...狼をぶっ殺す、ね。物騒なことだけど、その意気込みだけは買っておいてあげるわ。」
私が冷たくあしらうと、七匹の仔山羊は満足げに口角をあげてようやく腕の力を緩めた。
その横で、赤ずきんが感情の読めない瞳で塔の入り口をじっと見つめている。
彼女の手に握られた小さなナイフが、鋭い光を放っていた。
「それで? その目当て二匹はどこにいるのよ。
まさか中でアフタヌーンティーでも嗜んでいるのかしら?」
私の問いに、赤ずきんが首を横に振る。
「......いない。...匂いが、薄い。」
「えっ、いないって...どういうこと?」
円卓の騎士が狼狽えた声を出す。
「...じゃあ確かめてみるか?」
くるみ割り人形がそう鼻で笑う。
「それもそうね。
......突入するわよ。」
私はそう言い恐る恐る扉に触れる。
私たちは武器を構え、慎重に塔の内部へと足を踏み入れた。
......だが、そこに広がっていたのは激しい戦闘の跡ではなく、もぬけの殻となったからっぽの部屋だけだった。
床には飲みかけのワイン瓶が転がり、暖炉の火は消えていて灰だらけだ。
狐の嫁入りが扇を閉じ、鋭い目つきで周囲を見回して一言。
「...逃げられちゃったみたいね♡それも、かなりの急ぎ足で。」
「そんな! ボクたちが来るのを察知してたっていうの?」
ラプンツェルが困惑したように眉を下げる。
七匹の仔山羊は、狼たちが座っていたであろう椅子にドカッと腰を掛けて舌打ちをした。
「だろうね。あの野郎ども、俺たちが合流して戦力が膨れ上がる前に、部下を壁にして尻尾を巻いて逃げ出しやがったな。...鼻が利くのは癪に障るね。」
「逃げた...。じゃあ、私たちのこの緊張感は何だったのよ......。」
赤い靴が脱力したようにその場に座り込む。
紅薔薇も「ケッ、空振りかよ」と忌々しげに壁を蹴った。
......いや、言うほど貴方達って緊張してたかしら...?
私は、開け放たれた窓から差し込む光を見つめた。
「私達が総出で動いていることを、向こうも理解しているということね」
敵が逃げたということは、彼らには合流先があるということだ。
...大方、狼たちはアイツの元へ状況を伝えに行っただろう。
......ならばこの件はもう諦めるしかない。次に移すか。
「赤ずきん、七匹の仔山羊。......悪いけど、狼はお預けよ。
別の奴にターゲットを移すわ。」
私はテキパキと指示を飛ばす。
全員の不満の声が、塔に虚しく響き渡った。
◆
狼なんて怖くない
◇
私は横髪を耳にかける。
「...狼をぶっ殺す、ね。物騒なことだけど、その意気込みだけは買っておいてあげるわ。」
私が冷たくあしらうと、七匹の仔山羊は満足げに口角をあげてようやく腕の力を緩めた。
その横で、赤ずきんが感情の読めない瞳で塔の入り口をじっと見つめている。
彼女の手に握られた小さなナイフが、鋭い光を放っていた。
「それで? その目当て二匹はどこにいるのよ。
まさか中でアフタヌーンティーでも嗜んでいるのかしら?」
私の問いに、赤ずきんが首を横に振る。
「......いない。...匂いが、薄い。」
「えっ、いないって...どういうこと?」
円卓の騎士が狼狽えた声を出す。
「...じゃあ確かめてみるか?」
くるみ割り人形がそう鼻で笑う。
「それもそうね。
......突入するわよ。」
私はそう言い恐る恐る扉に触れる。
私たちは武器を構え、慎重に塔の内部へと足を踏み入れた。
......だが、そこに広がっていたのは激しい戦闘の跡ではなく、もぬけの殻となったからっぽの部屋だけだった。
床には飲みかけのワイン瓶が転がり、暖炉の火は消えていて灰だらけだ。
狐の嫁入りが扇を閉じ、鋭い目つきで周囲を見回して一言。
「...逃げられちゃったみたいね♡それも、かなりの急ぎ足で。」
「そんな! ボクたちが来るのを察知してたっていうの?」
ラプンツェルが困惑したように眉を下げる。
七匹の仔山羊は、狼たちが座っていたであろう椅子にドカッと腰を掛けて舌打ちをした。
「だろうね。あの野郎ども、俺たちが合流して戦力が膨れ上がる前に、部下を壁にして尻尾を巻いて逃げ出しやがったな。...鼻が利くのは癪に障るね。」
「逃げた...。じゃあ、私たちのこの緊張感は何だったのよ......。」
赤い靴が脱力したようにその場に座り込む。
紅薔薇も「ケッ、空振りかよ」と忌々しげに壁を蹴った。
......いや、言うほど貴方達って緊張してたかしら...?
私は、開け放たれた窓から差し込む光を見つめた。
「私達が総出で動いていることを、向こうも理解しているということね」
敵が逃げたということは、彼らには合流先があるということだ。
...大方、狼たちはアイツの元へ状況を伝えに行っただろう。
......ならばこの件はもう諦めるしかない。次に移すか。
「赤ずきん、七匹の仔山羊。......悪いけど、狼はお預けよ。
別の奴にターゲットを移すわ。」
私はテキパキと指示を飛ばす。
全員の不満の声が、塔に虚しく響き渡った。
◆
狼なんて怖くない
◇