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最終投稿プレビュー

「最低だよ……」

その言葉は、まだ頭の奥で響いていた。
お姉様の声、あの目つき、指先の震え、すべてが焼き付いて離れない。

私は、ただ立ち尽くしていた。
小さな部屋の隅で、両手を握りしめて、床を見つめたまま。
涙は出ない。
出せなかった。

どうして私は、こんなにも無力なんだろう。
どうして、努力しても、笑顔でいても、誰かに認めてもらえないのだろう。

その夜、私は窓際に座った。
外の月は、静かに輝き、街の屋根を白く染めている。
冷たい風がカーテンを揺らす。
一人で見る世界は、こんなにも広く、孤独だった。

でも、月の光は不思議と優しかった。
誰も選ばなくても、誰も褒めなくても、ただそこに在る。
その輝きは、私に問いかけた。

「あなたは、本当に、ここにいていいの?」

私は小さく息をつき、拳を握った。
「……私は、私でいいんだ」

その時、胸の奥で何かがはじけた。
泣いても、怒っても、誰も私を止められない。
もう、誰かの期待に縛られる必要はない。

――次の日。

学校へは行かず、私は裏通りを歩いた。
石畳の隙間から冷たい風が吹き込み、古い建物の影が長く伸びる。
誰も通らない道、誰も気にしない小さな世界。
私はそこで、自分の呼吸と足音だけを感じた。

家に戻れば、あの顔がある。
あの笑顔、あの優しさ――だけど裏には嫉妬と怒りが渦巻いている。
そんな場所に、もう戻れない。

歩きながら、私は初めて、心の中で呟いた。
「……私は、私の人生を作る」
誰かに褒められなくても、誰かに認められなくても、私は自分で自分を認める。

その夜も、月は静かに輝いていた。
私は街灯の下で立ち止まり、影を見つめる。
影の中の私は、小さく震えている。
でも、同時に、初めて自分を信じる力を感じていた。

――日々は、少しずつ私を変えていった。

裏通りでの生活は厳しかった。
食べ物も少なく、雨風を凌ぐだけでも精一杯。
誰も教えてくれない、誰も助けてくれない。
でも、それでも生きるしかなかった。

ある日、私は出会った。
裏社会で名を馳せる、冷酷だが腕の立つ剣士。
彼は私を見て、こう言った。

「面白い子だな。才能がある。教えてやろう」

その瞬間、私は心が震えた。
誰かに認められる喜び、誰かに守られる温かさ――
それは、ガラスの靴の光景とは違う、本物の感情だった。

私は、必死で学んだ。
剣術も、戦い方も、生き残る術も。
夜も昼も、休む暇もなく、ただひたすらに訓練した。
でも、楽しかった。
自分で選んだ道を進んでいると実感できたから。

――そして、気づいた。

痛みや孤独は、私を弱くするどころか、強くしてくれる。
誰かに「最低だ」と言われたことも、涙が出なかったことも、
すべてが私の力になったのだ、と。

やがて私は、「灰被り」と呼ばれる存在になった。
シンデレラの物語のように、誰かに認められるのを待つのではなく、
自分の手で未来を切り拓くための存在。

月明かりの下、私は小さく微笑む。
「ありがとう、あの日の私。あの日のお姉様。あなたがいたから、私は今の私でいられる」

夜風が髪を揺らし、静かに街を包む。
そして私は、初めて本当に、自分だけの物語の始まりを感じた――

リレー小説「【スパイ兼暗殺者】【命短し暴れろ主役】さしずめ最低【灰被り】」

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