神は、そう簡単に死なせてくれないらしい
#1
死んだはずなのになあ…
信号が青になった。桜田は、最近着なっている漫画のつづきを読みながら歩き始めた。会社へ向かういつもの道。車通りが多く、排気ガスでなんだか煙たい。少し咳払いをして、巨大な会社のビルへ入っていく。
「課長、おはようございます」
「うん」
すれ違う部下に挨拶をされる。他にも何人かから挨拶を受けて、自分の席に着く。すると、先に来ていた四十代くらいの社員が軽く軽蔑した目で見てきた。三十代前半でこの地位にいるのだから、よく思わない人がいないわけがない。しかも、美人の妻と二人の可愛い子供もいる。挨拶をしてくれている人はいいのだが、ああも冷たい目で見られると、少しばかり傷つく。深呼吸をして、気持ちを切り替えた。次々と社員が出社すると、桜田の仕事は始まる。
「昨日頼まれていた資料です」
さっそく、部下が書類を持ってきた。彼はやる気に満ち溢れていて、桜田は目をかけているのだ。確かまだ、二十四、五くらいではなかっただろうか。書類に一通り目を通すと彼に返した。
「うん。いいと思う」
彼の顔が輝いて、頭を勢いよく下げる。
「ありがとうございます!」
彼が席に戻っていくのを横目で見ながら、家の近所で買ったコーヒーを飲む。
「課長、新しい企画の資料なんですが」
一旦コーヒーを置いて、彼の資料に目を通す。思わずため息が漏れた。目の前にいる彼は四十代くらいの男性社員で二十年以上この会社に勤めているらしい。彼だって頑張っているし、年下の桜田が物申すのも違う気がする。だが、この企画書は、いやこれだけに限らず、彼が書く文章は矛盾点が多すぎるのだ。
「君、もう一度やり直してくれ」
彼の顔に焦りとも悲しみとも、怒りとも似つかないような表情が浮かんだ。
「なんでですか」
「こことここ、書いてあることが全然違うじゃないか」
彼は肩を落として桜田の差し出した企画書を受け取り、自席に帰っていった。桜田はキレられなかったことにホッとしてスマホを手に取り、気を紛らわすために漫画のページを開いた。その時だった。
「課長には、死んでもらいましょう」
彼が振り返る。その手には、ナイフが握られていた。彼が動いたと思った次の瞬間には、もうなにも分からなくなった。
[水平線]
気がつくと、見慣れない町の路地にいた。おかしい。どう考えても、おかしい。さっきまで、会社のビルの中にいて気がついたら、見慣れない町にいることなど。だいたい、殺されたはずだ。桜田は少し考えて、ピンと来た。これは、もしかしたら「転生」と呼ばれるものかもしれない。そのとき、ポケットに何かがあることに気がついた。
「課長、おはようございます」
「うん」
すれ違う部下に挨拶をされる。他にも何人かから挨拶を受けて、自分の席に着く。すると、先に来ていた四十代くらいの社員が軽く軽蔑した目で見てきた。三十代前半でこの地位にいるのだから、よく思わない人がいないわけがない。しかも、美人の妻と二人の可愛い子供もいる。挨拶をしてくれている人はいいのだが、ああも冷たい目で見られると、少しばかり傷つく。深呼吸をして、気持ちを切り替えた。次々と社員が出社すると、桜田の仕事は始まる。
「昨日頼まれていた資料です」
さっそく、部下が書類を持ってきた。彼はやる気に満ち溢れていて、桜田は目をかけているのだ。確かまだ、二十四、五くらいではなかっただろうか。書類に一通り目を通すと彼に返した。
「うん。いいと思う」
彼の顔が輝いて、頭を勢いよく下げる。
「ありがとうございます!」
彼が席に戻っていくのを横目で見ながら、家の近所で買ったコーヒーを飲む。
「課長、新しい企画の資料なんですが」
一旦コーヒーを置いて、彼の資料に目を通す。思わずため息が漏れた。目の前にいる彼は四十代くらいの男性社員で二十年以上この会社に勤めているらしい。彼だって頑張っているし、年下の桜田が物申すのも違う気がする。だが、この企画書は、いやこれだけに限らず、彼が書く文章は矛盾点が多すぎるのだ。
「君、もう一度やり直してくれ」
彼の顔に焦りとも悲しみとも、怒りとも似つかないような表情が浮かんだ。
「なんでですか」
「こことここ、書いてあることが全然違うじゃないか」
彼は肩を落として桜田の差し出した企画書を受け取り、自席に帰っていった。桜田はキレられなかったことにホッとしてスマホを手に取り、気を紛らわすために漫画のページを開いた。その時だった。
「課長には、死んでもらいましょう」
彼が振り返る。その手には、ナイフが握られていた。彼が動いたと思った次の瞬間には、もうなにも分からなくなった。
[水平線]
気がつくと、見慣れない町の路地にいた。おかしい。どう考えても、おかしい。さっきまで、会社のビルの中にいて気がついたら、見慣れない町にいることなど。だいたい、殺されたはずだ。桜田は少し考えて、ピンと来た。これは、もしかしたら「転生」と呼ばれるものかもしれない。そのとき、ポケットに何かがあることに気がついた。