もし、あの時違う選択をしていたら──あるいは違う行動を取っていたらと、そんな後悔をしたことのある人はきっと少なくはないだろう。
過ぎ去った時間を巻き戻すことなど出来ないと知りつつも、そう思ってしまうのはごく自然のことだったりする。それは私とて皆んなと変わらない。
ただ一つ私が皆んなと違うことといえば、私にはそれが実現可能だということだ。
【人生リセット】という名のアプリと出会ったことで、私は自分の望む未来を叶えることができるようになったのだ。
たまたま流れてきた広告で目にしたそのアプリは、五分前にしか戻れないという制限付きながらも、その効果は充分すぎるものだった。
時に、自分の次に並んだ人が得をすると知れば、私は過去に戻って順番を譲り、来店百万人記念として一万円分の商品券を手に入れた。また、誤った言葉が原因でその場の空気が悪くなれば、私はすぐさま五分前に戻ってその発言をやり直すことができた。
おかげで、今では何の苦労をすることもなく円滑な人間関係を築けている。
なんだ、そんなことぐらいか。と充分な満足感を得られない人も中にはいるかもしれない。
けれど、中学生の私からしてみたらそれだけでも充分すぎる程に便利なアプリだと思えた。なにより、何度でもやり直せると分かっているのだから、失敗を恐れる必要がないのだ。
そんな優秀なアプリの唯一の欠点といえば、過去に戻ってもその結末が変わらなかった場合の不便さだった。
どうやらこの過去戻りは、戻る前と結末が変わらない限り、永遠に同じ時間を繰り返してしまうらしい。一度無限ループに陥った時には、そこから抜け出すのに随分と苦労をした。
けれど、ボタン一つで簡単に未来を変えることが出来ると思えば、そんな不便さはほんの些細な問題だった。
目の前の信号が青に切り替わったのを確認すると、私は通い慣れた横断歩道を歩き始めた──次の瞬間。
突然、何かが破裂したかのような轟音が耳をつん裂くと、私の身体は宙に舞い上がった。
──────
────
「──ゔ……っ」
[漢字]朦朧[/漢字][ふりがな]もうろう[/ふりがな]とする意識の中、私は地面に横たわったまま小さな[漢字]呻[/漢字][ふりがな]うめ[/ふりがな]き声を上げた。
(一体……っ、何が……?)
ひしゃげた自分の片足が視界に入った瞬間、あり得ない程の鋭い痛みが私の全身を駆け抜けた。
下半身に生えているはずの脚が、何故私の目の前にあるのか。その理由さえも分からない。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い──)
痛みと呼吸困難で朦朧としながらも、私は視界に入ってきた携帯に向けて懸命に手を伸ばした。
[中央寄せ][太字]“リセットしますか?”[/太字][/中央寄せ]
ひび割れた画面に映し出されていたのは、そんな見慣れた一文と【はい】と【いいえ】と書かれた選択ボタンだった。
迷うことなく【はい】と書かれたボタンをクリックした──次の瞬間。
耳をつん裂くような轟音と共に、私の身体は空高く跳ね上がった。
過ぎ去った時間を巻き戻すことなど出来ないと知りつつも、そう思ってしまうのはごく自然のことだったりする。それは私とて皆んなと変わらない。
ただ一つ私が皆んなと違うことといえば、私にはそれが実現可能だということだ。
【人生リセット】という名のアプリと出会ったことで、私は自分の望む未来を叶えることができるようになったのだ。
たまたま流れてきた広告で目にしたそのアプリは、五分前にしか戻れないという制限付きながらも、その効果は充分すぎるものだった。
時に、自分の次に並んだ人が得をすると知れば、私は過去に戻って順番を譲り、来店百万人記念として一万円分の商品券を手に入れた。また、誤った言葉が原因でその場の空気が悪くなれば、私はすぐさま五分前に戻ってその発言をやり直すことができた。
おかげで、今では何の苦労をすることもなく円滑な人間関係を築けている。
なんだ、そんなことぐらいか。と充分な満足感を得られない人も中にはいるかもしれない。
けれど、中学生の私からしてみたらそれだけでも充分すぎる程に便利なアプリだと思えた。なにより、何度でもやり直せると分かっているのだから、失敗を恐れる必要がないのだ。
そんな優秀なアプリの唯一の欠点といえば、過去に戻ってもその結末が変わらなかった場合の不便さだった。
どうやらこの過去戻りは、戻る前と結末が変わらない限り、永遠に同じ時間を繰り返してしまうらしい。一度無限ループに陥った時には、そこから抜け出すのに随分と苦労をした。
けれど、ボタン一つで簡単に未来を変えることが出来ると思えば、そんな不便さはほんの些細な問題だった。
目の前の信号が青に切り替わったのを確認すると、私は通い慣れた横断歩道を歩き始めた──次の瞬間。
突然、何かが破裂したかのような轟音が耳をつん裂くと、私の身体は宙に舞い上がった。
──────
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「──ゔ……っ」
[漢字]朦朧[/漢字][ふりがな]もうろう[/ふりがな]とする意識の中、私は地面に横たわったまま小さな[漢字]呻[/漢字][ふりがな]うめ[/ふりがな]き声を上げた。
(一体……っ、何が……?)
ひしゃげた自分の片足が視界に入った瞬間、あり得ない程の鋭い痛みが私の全身を駆け抜けた。
下半身に生えているはずの脚が、何故私の目の前にあるのか。その理由さえも分からない。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い──)
痛みと呼吸困難で朦朧としながらも、私は視界に入ってきた携帯に向けて懸命に手を伸ばした。
[中央寄せ][太字]“リセットしますか?”[/太字][/中央寄せ]
ひび割れた画面に映し出されていたのは、そんな見慣れた一文と【はい】と【いいえ】と書かれた選択ボタンだった。
迷うことなく【はい】と書かれたボタンをクリックした──次の瞬間。
耳をつん裂くような轟音と共に、私の身体は空高く跳ね上がった。