文字サイズ変更

意味がわかると怖い話

#7

★穢れなき悪魔

 近所に住んでいる[漢字]海姫[/漢字][ふりがな]みき[/ふりがな]ちゃんは、まるで天使のようだと評判な女の子だった。
 その名に劣ることなく、まるでどこかの国のお姫様かと思うほどに美しい海姫ちゃん。彼女がひとたび微笑めば、それを見た人々はたちまち彼女の虜になってしまう。そんな不思議な魅力を持った女の子だった。

 そんな彼女と幼馴染みだった私は、幼いながらにそれを誇らしく思っていた。
 特に秀でた特技や容姿を持ち合わせていなかった私は、大人達から褒められている海姫ちゃんを見ては、まるで自分が褒められているかのような錯覚を覚えた。
 誰からも愛される海姫ちゃん。そんな彼女に強く憧れていたのは勿論のこと、彼女の友達だということが私の唯一の自慢でもあった。

 そんな関係性が微妙に崩れ出したのは、私達が小学四年生になった頃だった。
 夏休みに入り、クラスの子達と数人で近くの川へと遊びに来ていた私達。最初こそ楽しく過ごしていたものの、その内の一人が川へ流されたことでその状況は一変した。幸い大事に至ることなく救出はされたものの、すぐ近くにいたという理由で私はこっぴどく怒られることとなった。

 近くにいたという理由だけなら、海姫ちゃんだって同じはず。何故私が怒られるのだろうか?
 そんな疑問を感じながらチラリと海姫ちゃんを見ると、その視線に気付いた海姫ちゃんがニッコリと微笑んだ。まるで天使と[漢字]見紛[/漢字][ふりがな]みまご[/ふりがな]うほどの美しさで、私に向けて優しく微笑む海姫ちゃん。
 私はゴクリと小さく唾を飲み込むと、クシャリと歪ませた顔で涙を流した。


「……ごめんなさい」


 一体、何に対しての謝罪なのか。自分でもよく分からなかった。こうして、私の中に少しのしこりを残して終わった小四の夏休み。
 それは成長と共に大きく育ってゆくと、それに比例するかのようにして海姫ちゃんへの憧れはどんどん薄れていった。

 事あるごとに海姫ちゃんと比べられた私は、自分だけが悪者にされることに不満を抱き、その吐口としていつしか非行に走るようになっていった。
 そんな私のことを最初こそ注意していた両親も、暫くすると[漢字]匙[/漢字][ふりがな]さじ[/ふりがな]を投げたかのように静かになった。
 
 その後、高校生になる頃には殆ど疎遠になった海姫ちゃん。同じ学校に進学はしたものの、クラスが別だったこともあり特に関わることもなかった。
 ただ、海姫ちゃんの噂だけは時折私の耳にも届いていた。相変わらずの美貌は今でも健在なようで、クラスが別だとはいえ噂する人達はどこにでもいる。
 それだけ、彼女の存在とは特別なものなのだ。


「また騒いでるよ、男子達。あの女のどこがいいんだか」

「ほんとほんと、皆んなあの顔に騙されすぎ」


 友達の由香里と[漢字]空[/漢字][ふりがな]まどか[/ふりがな]が、スマホ片手に気だるそうな口調で愚痴を溢す。
 この高校へ進学した頃から、自然と一緒にいることの多くなったこの二人。どうやら海姫ちゃんのことを好ましく思っていないようで、私にはそれがとても心地良かった。
 そんな二人を横目に鞄からタバコを取り出すと、席を立った私は口を開いた。
 

「屋上行ってくる」
 

 それだけ告げると、私は一人屋上へと向かった。
 上空に広がる曇り空を眺めながら、私は一人、地べたに腰を降ろした。タバコから立ち込める煙はユラユラと上空を舞い、まるで最初から曇り空の一部だったかのようにして溶け合ってゆく。そんな光景をボンヤリと眺めながら、私はその自由さを羨ましく思った。


「──香奈ちゃん」


 不意に呼ばれた声に背後を振り返ってみると、そこには半年振りに見る海姫ちゃんが立っていた。


「タバコなんてもう辞めたら? 悪い子と一緒にいちゃダメだよ」


 そう言って優しく微笑んだ海姫ちゃんは、相変わらず天使のような美しさだった。
 離れたいと願う私の気持ちとは裏腹に、彼女を前にすると簡単に揺らいでしまう私の気持ち。そんな私の胸の内を見透かしたかのように、由香里と空は私の元を離れると二度と帰ってはこなかった。

 幼い頃から、まるで天使のようだと評判の海姫ちゃん。彼女は清らかな美しさで人々を魅了し、こうして私の自由さえも奪ってゆく。

 ──そんな彼女は、まさに穢れなき悪魔だ。

作者メッセージ

【解説】
川に流された子は、海姫がわざと突き飛ばした子。それを目撃した私は、親に告げようとしたが海姫が怖くて言えなかった。それをキッカケに次々と海姫の異常性を目撃した私は、次第に心を病んでゆくと非行に走った。
二度と帰ってこなかった由香里と空は、海姫が事故にみせかけて殺したから。

そんな海姫の本性を知ってはいても、いざ本人を前にするとその美しさに魅了されてしまう私。そんな私からしたら、海姫は穢れなき美しさをまとった悪魔のような存在なのだ。




これは自分が作者だったら…と仮定して
想像力を働かせないと難しかったんじゃないでしょうか?
ということで★付き。

2024/10/01 18:14

天音ろっく@暫くお休み中
ID:≫ 29AUQfmipv/.k
コメント

この小説につけられたタグ

ヒトコワ心霊ゾッとする不思議意味怖

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は天音ろっく@暫くお休み中さんに帰属します

TOP