人の噂話ほど当てにはならない。私がそれに気付いたのは、まだ小学三年生の頃だった。
ある日の晩、ケーキ片手にご機嫌で帰宅してきた父。どうやらパチンコで数万円ほど勝ったらしく、いつもは酔って暴れているだけの父も、この日ばかりは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
それから数日が経ったある日。いつものように学校へ登校すると、私に気付いたクラスメイトの綾香ちゃんが近づいて来た。
「雅ちゃん。雅ちゃんのお父さん、宝くじが当たったって本当?」
どこからそんな話にまでなってしまったのだろうか? それは分からなかったが、近所に住む綾香ちゃんが言うには、どうやら私の父が”宝くじで数百万を当てた”という噂が広まっているらしかった。
実際にはパチンコで数万円勝っただけなのだが、人[漢字]伝[/漢字][ふりがな]づ[/ふりがな]てに噂が広まる内にどんどん話が膨らんでいってしまったのだろう。噂話とは大概そんなものなのだ。
現に今、高校生となった私にも根も歯もない噂話が広まっている。
働きもせずに呑んだくれている父と二人暮らしをしている私は、学費や生活費を工面する為、ついに年齢をごまかして水商売を始めた。夜な夜な出掛けているのはそのせいだと。そんな噂が広まっていると綾香ちゃんから聞かされたのは、つい昨日のことだった。
田舎とは時に厄介なもので、人様の家庭の事情にまでやたらと首を突っ込みたがる。心配してくれているだけなのかもしれないが、私には二年前に亡くなった母の保険金がまだ残っている。それさえあれば、水商売などしなくとも一人暮らしていくには充分に余裕があるのだ。
そんな事情を知らない大人達は、夜な夜な出掛ける私を見てあらぬ噂を広めたのだろう。本当に、噂とは当てにならないものだ。
けれど、そんな噂話も今日限り。明日からはもう、こんな夜更けに人目を忍んで出掛ける必要もなくなるのだ。
私はザクザクと掘り進めていた手を止めると、父の手を取ってそこへ投げ捨てた。
ある日の晩、ケーキ片手にご機嫌で帰宅してきた父。どうやらパチンコで数万円ほど勝ったらしく、いつもは酔って暴れているだけの父も、この日ばかりは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
それから数日が経ったある日。いつものように学校へ登校すると、私に気付いたクラスメイトの綾香ちゃんが近づいて来た。
「雅ちゃん。雅ちゃんのお父さん、宝くじが当たったって本当?」
どこからそんな話にまでなってしまったのだろうか? それは分からなかったが、近所に住む綾香ちゃんが言うには、どうやら私の父が”宝くじで数百万を当てた”という噂が広まっているらしかった。
実際にはパチンコで数万円勝っただけなのだが、人[漢字]伝[/漢字][ふりがな]づ[/ふりがな]てに噂が広まる内にどんどん話が膨らんでいってしまったのだろう。噂話とは大概そんなものなのだ。
現に今、高校生となった私にも根も歯もない噂話が広まっている。
働きもせずに呑んだくれている父と二人暮らしをしている私は、学費や生活費を工面する為、ついに年齢をごまかして水商売を始めた。夜な夜な出掛けているのはそのせいだと。そんな噂が広まっていると綾香ちゃんから聞かされたのは、つい昨日のことだった。
田舎とは時に厄介なもので、人様の家庭の事情にまでやたらと首を突っ込みたがる。心配してくれているだけなのかもしれないが、私には二年前に亡くなった母の保険金がまだ残っている。それさえあれば、水商売などしなくとも一人暮らしていくには充分に余裕があるのだ。
そんな事情を知らない大人達は、夜な夜な出掛ける私を見てあらぬ噂を広めたのだろう。本当に、噂とは当てにならないものだ。
けれど、そんな噂話も今日限り。明日からはもう、こんな夜更けに人目を忍んで出掛ける必要もなくなるのだ。
私はザクザクと掘り進めていた手を止めると、父の手を取ってそこへ投げ捨てた。