閲覧前に必ずご確認ください
話によるためシリーズとしてのタグはつけませんが、暴力表現がある場合がございます。読む前に、1話ごとにチェックしていただくことをお勧めします。
「じゃ、あたしからの報告は2つってことかなー?えっと、ひとつは今年度の新隊員選抜について!あとは・・・さっきもルリチャンが言ってたように!『死神』チャンについてー!」
・・・総帥。そんなニコニコしながら俺を指差さないでくれ。周りを見てみろ。怖い視線が約10個の目ん玉から飛んでくるんですけど。
怖いから現実逃避のために前回のあらすじ。会議してて総帥の番になったら声とは裏腹にシリアス展開きた。
「ほう・・・それは興味深いですな。まずは、新隊員選抜についてお聞かせ願おうか」
赤髪の人怖い。そんなこと言っておきながら目は俺から逸らさないんだよね。ま、目は合ってないんだけどね俺フードの中で目ぇ瞑ってるから!なんでって?現実逃避だよ勿論。総帥この野郎。なんでカミングアウトしてんだ。
「はーい!じゃあ今企画中の新隊員選抜についての説明をするよー!」
んでこの声色はなんとも思っていない声だなちくしょう。知ってたけど。知ってたけど!
「一年に一回行われる新隊員選抜。年々、魔物達は人を殺し、足りなければ『お互いを殺しあって』強さを増していく。数年前に優秀な成績で選抜された隊員も、今となっては弱くただの贄と散る・・・対策は講じていますが、やはり戦力となるのはごく少数です。今年はどんな選抜基準を設けられるのですか?」
紫の毛先をした黒髪の彼女が問いかける。
「昨年度は体内印力量を計測しての選抜だったが、それだと目ぼしいものは限られる。ある程度、体術などでも魔物と競える者が望ましい。特に、我々情報部隊にとってはその方が有利です」
白銀の女性が顎に手を当てる。
「我々としても、人員確保のために、これ以上隊員の数を減らしたくはない・・・むしろ定員数を上げたいぐらいなのだ。強い奴を多く入れなければならん」
赤髪の男性が腕組みをした。
そして俺も、フードの中から総帥の方へと目を向ける。
「だよねぇ・・・ということで今回は!かの『死神』チャンに!試験監督やってもらうよー!」
・・・総帥。今更何も言わないから、とりあえず殴らせろ。
「・・・総帥殿?」
ああほら。赤髪の人の頭からぷすぷす音してるよ。大丈夫かな、脳みそ弾け飛ばないようにね。俺が掃除することになるから。
「成程、だから今になって『死神』の情報の開示ですか。総帥も、何気に思慮深いことをされる」
紫の女性は楽しそうだな。
「・・・・・・」
白銀の女性は、考え事。
「試験内容の草案は作ってるから、後で渡すねー!」
急に振り返るな仕事を増やすな。あんたの仕事を俺に振ってくるからよくわからん書類にハンコを押し付けてしまうと言う大事故が起こったんだろうが。俺たちがらみの案件だったから助かったけれども。
「じゃー質問は!?」
ありまくりだよ馬鹿。
「・・・総帥殿、何故、『死神』を試験監督に起用するに至った?」
赤髪の男性が聞くも、総帥の目が光る。
「『今更』って顔だねー」
表情は動かないものの、雰囲気が揺れる。それを見て満足げに笑った総帥は、寝入っている白銀の少女に目を向け、笑う。その笑顔は、いつも人に向ける活発な笑顔ではなく。
「・・・哀愁、ですか」
「・・・サルカチャンは、変なとこ鋭いよねー」
「情報部隊故、人の表情はある程度まで読めなくては」
「優秀優秀ー♪」
ニンマリといつもの笑顔に戻った総帥は、椅子に座り直し、ずるずると背もたれに身を預ける。
「さっきのもう一つの話、『死神について』とも被っちゃうんだけどねー・・・本当は、させたくないんだよー。ハンターに関わるようなこと」
「・・・・・・」
総帥は、変なところが優しいよね。
「君たちにとっての『死神』とはー?はい、順番に」
総帥が赤髪の男性に指を刺す。男性は静かに目を瞑り、そして開いた。
「隊員を殺す悪魔、ですかな。それに、いい噂は聞きませぬ」
「だよねー。あたしでもそう思うもん。紫乃チャンは?」
「私ですか?私は・・・」
うーん、と顎に手を当て考える素振りをしながら、目を伏せて言った。
「確かに極次郎さんの言う通り、冷酷な方だとは思います。ですが・・・あの時、助けてくれたのもまた『死神』でした」
ふと、数年前の記憶。当時、まだ小さな餓鬼だった俺に、『あいつ』が魔物の血に溢れたまま縋り付いてきたことを思い出す。
「後ろの貴方。貴方もきっと、『死神』なのでしょう?ですが、恐らく貴方は、あの時の方とは違うのでしょう・・・マントである程度隠れているといえども、骨格が明らかに違う。けれども、違う方といえども、一度お礼がしたかった」
彼女が椅子をひき立つと、背後にいた男性も姿勢を正す。そして、2人揃って深々と俺に礼をした。
「あの時、私たちを、そして姉を助けてくて、ありがとうございます」
きっちり3秒、顔を上げた彼女たちの目は、この光が反射する黒い檻の中でも、潤んでいるように見えた。
どうしよう、動けない。こんな風に他人から真正面から礼をされるなんて、いつぶりだろうか。
嬉しいのだろうか、悲しいのだろうか。それとも、なんとも思っていないのだろうか。だって、マントの下の俺の口角は、多分この会議が始まってから一ミリも動いていない。
「嬉しいねー、睡蓮」
総帥が頬杖をついて、こちらを見ながらニヤニヤと笑っている。いつもの笑顔だ。・・・そうか、俺は今嬉しいのだろうか。総帥が言うのなら、そうなのかもしれない。
「どうするー?ラブレターでも送ってみるー?」
その言葉には、ふるふると首を振る。ラブレター、総帥がそう意味はわかってるけど、それを送るのは俺の役目じゃない。
「そっかー、なら炎楼に自分で届けてもらうかー!」
その言葉に、首を縦に振る。きっとその方が、両者にとって一番いい。
「えっと・・・?」
紫の女性が困ったように首を傾げている。
「大丈夫だよー!紫乃チャンと燈馬クンの言葉のお返事は、本人にしてもらうからねっ!」
「本人・・・?」
「そー。とりあえず座りなー?」
立ったままだった彼女に指で着席を促し、総帥は片手で頬杖をつき、片手の指先でテーブルをこつりと叩いた。
「『死神』は複数人いるんだよー。菜ノ花の事件に関わったあの死神はまだちゃんと生きてるよー!だから直接お礼言えるよー!声で返事は返してくれないかもしれないけどねー」
「・・・それでも十分です。あの日の感謝を返せるなら・・・ね、燈馬」
「おう」
2人は顔を合わせて笑い合う。そっくりな笑顔だ。確か情報では、あの2人は双子だった。
「よかったねー!・・・そういやサルカチャンの意見聞いてないじゃーん。どぞー」
「そんな雑にふられても・・・」
それはそう。
白銀の女性は、隣の椅子で寝こける己の妹を見やり、その髪の毛をそっと撫でながら、ポツリと言葉をこぼす。
「私にとっての『死神』・・・それは、憎悪、そして、感謝、とでも呼べるだろうか」
憎悪。その意味を、俺は。よく知っている。
「・・・長兄達が処刑された日。それは同じくして、両親をも亡くした日だ。そして、弟が1人消えた」
動揺が悟られないように、体内印力の流れを意識的に一定にする。・・・そう、悟られてはいけない。
「一時期とはいえ、悪に手を染めた情報部隊・・・そこに私が入ったのは、あの日の真実を解明し、探し出すため」
俺が、動揺している。それはつまり、
「『水面カオル』・・・全ての蛍黒寮の記録から消えた、弟を」
俺が、その『水面カオル』だということを。
「そっかー。頑張れ!多分無理だけど!」
「なっ、」
「『死神』が、全部消しちゃったからね」
「、」
一同黙り込み、総帥の言葉を待つ。それは、ひとつの可能性に、既に気づいているから。
「『死神』ってねー、何ににもなれなかった子達の集まりなのー。だーれにも認められることなく、だーれにも知られることなく。そんであの子達もー、それを望んでるんだー。
だからー、あり得る限りの技術を使って、あの子達に関わるデータはぜーんぶ消去してる。紙媒体もね。情報部隊の図書館にもないでしょー?それはー、あの子達が徹底して潰しているから。だからとーぜん、君達の記憶にこれっぽちも入ってない子が多いんだよー。元々知られることがなかった上に、知る手段まで絶たれているんだから」
そう。何にもなれなかった。
あの家に生まれた時点で、俺には生きることが許されていなかった。
『純白』。元々心が汚かった俺には、似合わない言葉。それを耐えて耐えて、心の中で蹴って蹴って蹴り倒して、その先に見た景色は、愛する兄の亡骸。
「・・・・・・」
「打開策はちゃんとあるんだよー?それを見つけられない君たちに、現時点での人物の詳細は明かせなー。だーって、あたしはともかく、あの子達は君たちを信用できないからー」
今日、総帥が他でもない俺をこの場に連れて来させたのは、あいつらのため。あいつらでも行けないことはないけど、この会議の内容ではあいつらの枷が邪魔で仕方がない。なら、何を言われても何とも思えない俺が、あいつらの盾になる。そうでなきゃ、俺もあいつらを守る、その認識の中に入れない。いつまでも守られるままじゃいけないから。
「あの子達は優しいんだよ。勿論、睡蓮もね」
俺を親指で指差しながらニヒヒと悪戯に笑うその笑顔は悪役にしか見えない。
「別にやらなくてもいいのにー、あたしからのお願いを率先してやってくれるんだー。元々ー、『死神』という組織を立ち上げたのは、蛍黒寮に違反する人を処罰するためーっていう機関が必要だったからなんだけどー・・・目的が変わってー、所属する人の内情も変わってー、なのに、本来の任務を遂行しよーって頑張ってる。それは一重に、人を守りたいーっていう気持ちは誰よりも強いから」
まぁ全部やろうとしてくれるからここ数年は全部押し付けてるんだけどねー、とサラッと暴露した総帥に、室内のにいる全ての人間の目が死んだ。やっぱり、そうだと思ったよ、ってか。そうなんだよ。
「この子も、あの子達も、あたしが育てた自慢の子供!君たちに教えてなんかあーげないっ!てへぺろ」
珍しくかっこいいこと言ってんのに最後の言葉で全部おじゃんだよ。いい年した大人がてへぺろやんな。きもいぞいい加減。
「・・・ふん、面白い。いいだろう、『死神』の試験監督着任に信任する」
赤髪の男が、ギラギラした目を隠さないまま、右手の甲を上にして机の上にのせる。
「あら、奇遇ですね極次郎さん。私もちょうど言おうと思っていたのに、先を越されてしまいました」
そう言って紫の女性も、右手を机の上へと出す。
「・・・『純白』の名の下、私も当主代理として信任し・・・そして、総帥のその言葉、覆して差し上げよう」
「頑張れー!」
ケラケラと野次を飛ばされながら、白銀の女性も手袋を取り、右手の甲を晒した。
「・・・御三家、全員『信任』とするー?」
「「「御意」」」
「では、総帥が命ずるー!此度の新隊員選抜、試験監督官は『死神』!
遊撃部隊、桔梗!医療部隊、炎楼!情報部隊、睡蓮!開発部隊、楠木!
以上の4名とするー!」
『睡蓮』として着任してから史上初の、大仕事だ。
・・・総帥。そんなニコニコしながら俺を指差さないでくれ。周りを見てみろ。怖い視線が約10個の目ん玉から飛んでくるんですけど。
怖いから現実逃避のために前回のあらすじ。会議してて総帥の番になったら声とは裏腹にシリアス展開きた。
「ほう・・・それは興味深いですな。まずは、新隊員選抜についてお聞かせ願おうか」
赤髪の人怖い。そんなこと言っておきながら目は俺から逸らさないんだよね。ま、目は合ってないんだけどね俺フードの中で目ぇ瞑ってるから!なんでって?現実逃避だよ勿論。総帥この野郎。なんでカミングアウトしてんだ。
「はーい!じゃあ今企画中の新隊員選抜についての説明をするよー!」
んでこの声色はなんとも思っていない声だなちくしょう。知ってたけど。知ってたけど!
「一年に一回行われる新隊員選抜。年々、魔物達は人を殺し、足りなければ『お互いを殺しあって』強さを増していく。数年前に優秀な成績で選抜された隊員も、今となっては弱くただの贄と散る・・・対策は講じていますが、やはり戦力となるのはごく少数です。今年はどんな選抜基準を設けられるのですか?」
紫の毛先をした黒髪の彼女が問いかける。
「昨年度は体内印力量を計測しての選抜だったが、それだと目ぼしいものは限られる。ある程度、体術などでも魔物と競える者が望ましい。特に、我々情報部隊にとってはその方が有利です」
白銀の女性が顎に手を当てる。
「我々としても、人員確保のために、これ以上隊員の数を減らしたくはない・・・むしろ定員数を上げたいぐらいなのだ。強い奴を多く入れなければならん」
赤髪の男性が腕組みをした。
そして俺も、フードの中から総帥の方へと目を向ける。
「だよねぇ・・・ということで今回は!かの『死神』チャンに!試験監督やってもらうよー!」
・・・総帥。今更何も言わないから、とりあえず殴らせろ。
「・・・総帥殿?」
ああほら。赤髪の人の頭からぷすぷす音してるよ。大丈夫かな、脳みそ弾け飛ばないようにね。俺が掃除することになるから。
「成程、だから今になって『死神』の情報の開示ですか。総帥も、何気に思慮深いことをされる」
紫の女性は楽しそうだな。
「・・・・・・」
白銀の女性は、考え事。
「試験内容の草案は作ってるから、後で渡すねー!」
急に振り返るな仕事を増やすな。あんたの仕事を俺に振ってくるからよくわからん書類にハンコを押し付けてしまうと言う大事故が起こったんだろうが。俺たちがらみの案件だったから助かったけれども。
「じゃー質問は!?」
ありまくりだよ馬鹿。
「・・・総帥殿、何故、『死神』を試験監督に起用するに至った?」
赤髪の男性が聞くも、総帥の目が光る。
「『今更』って顔だねー」
表情は動かないものの、雰囲気が揺れる。それを見て満足げに笑った総帥は、寝入っている白銀の少女に目を向け、笑う。その笑顔は、いつも人に向ける活発な笑顔ではなく。
「・・・哀愁、ですか」
「・・・サルカチャンは、変なとこ鋭いよねー」
「情報部隊故、人の表情はある程度まで読めなくては」
「優秀優秀ー♪」
ニンマリといつもの笑顔に戻った総帥は、椅子に座り直し、ずるずると背もたれに身を預ける。
「さっきのもう一つの話、『死神について』とも被っちゃうんだけどねー・・・本当は、させたくないんだよー。ハンターに関わるようなこと」
「・・・・・・」
総帥は、変なところが優しいよね。
「君たちにとっての『死神』とはー?はい、順番に」
総帥が赤髪の男性に指を刺す。男性は静かに目を瞑り、そして開いた。
「隊員を殺す悪魔、ですかな。それに、いい噂は聞きませぬ」
「だよねー。あたしでもそう思うもん。紫乃チャンは?」
「私ですか?私は・・・」
うーん、と顎に手を当て考える素振りをしながら、目を伏せて言った。
「確かに極次郎さんの言う通り、冷酷な方だとは思います。ですが・・・あの時、助けてくれたのもまた『死神』でした」
ふと、数年前の記憶。当時、まだ小さな餓鬼だった俺に、『あいつ』が魔物の血に溢れたまま縋り付いてきたことを思い出す。
「後ろの貴方。貴方もきっと、『死神』なのでしょう?ですが、恐らく貴方は、あの時の方とは違うのでしょう・・・マントである程度隠れているといえども、骨格が明らかに違う。けれども、違う方といえども、一度お礼がしたかった」
彼女が椅子をひき立つと、背後にいた男性も姿勢を正す。そして、2人揃って深々と俺に礼をした。
「あの時、私たちを、そして姉を助けてくて、ありがとうございます」
きっちり3秒、顔を上げた彼女たちの目は、この光が反射する黒い檻の中でも、潤んでいるように見えた。
どうしよう、動けない。こんな風に他人から真正面から礼をされるなんて、いつぶりだろうか。
嬉しいのだろうか、悲しいのだろうか。それとも、なんとも思っていないのだろうか。だって、マントの下の俺の口角は、多分この会議が始まってから一ミリも動いていない。
「嬉しいねー、睡蓮」
総帥が頬杖をついて、こちらを見ながらニヤニヤと笑っている。いつもの笑顔だ。・・・そうか、俺は今嬉しいのだろうか。総帥が言うのなら、そうなのかもしれない。
「どうするー?ラブレターでも送ってみるー?」
その言葉には、ふるふると首を振る。ラブレター、総帥がそう意味はわかってるけど、それを送るのは俺の役目じゃない。
「そっかー、なら炎楼に自分で届けてもらうかー!」
その言葉に、首を縦に振る。きっとその方が、両者にとって一番いい。
「えっと・・・?」
紫の女性が困ったように首を傾げている。
「大丈夫だよー!紫乃チャンと燈馬クンの言葉のお返事は、本人にしてもらうからねっ!」
「本人・・・?」
「そー。とりあえず座りなー?」
立ったままだった彼女に指で着席を促し、総帥は片手で頬杖をつき、片手の指先でテーブルをこつりと叩いた。
「『死神』は複数人いるんだよー。菜ノ花の事件に関わったあの死神はまだちゃんと生きてるよー!だから直接お礼言えるよー!声で返事は返してくれないかもしれないけどねー」
「・・・それでも十分です。あの日の感謝を返せるなら・・・ね、燈馬」
「おう」
2人は顔を合わせて笑い合う。そっくりな笑顔だ。確か情報では、あの2人は双子だった。
「よかったねー!・・・そういやサルカチャンの意見聞いてないじゃーん。どぞー」
「そんな雑にふられても・・・」
それはそう。
白銀の女性は、隣の椅子で寝こける己の妹を見やり、その髪の毛をそっと撫でながら、ポツリと言葉をこぼす。
「私にとっての『死神』・・・それは、憎悪、そして、感謝、とでも呼べるだろうか」
憎悪。その意味を、俺は。よく知っている。
「・・・長兄達が処刑された日。それは同じくして、両親をも亡くした日だ。そして、弟が1人消えた」
動揺が悟られないように、体内印力の流れを意識的に一定にする。・・・そう、悟られてはいけない。
「一時期とはいえ、悪に手を染めた情報部隊・・・そこに私が入ったのは、あの日の真実を解明し、探し出すため」
俺が、動揺している。それはつまり、
「『水面カオル』・・・全ての蛍黒寮の記録から消えた、弟を」
俺が、その『水面カオル』だということを。
「そっかー。頑張れ!多分無理だけど!」
「なっ、」
「『死神』が、全部消しちゃったからね」
「、」
一同黙り込み、総帥の言葉を待つ。それは、ひとつの可能性に、既に気づいているから。
「『死神』ってねー、何ににもなれなかった子達の集まりなのー。だーれにも認められることなく、だーれにも知られることなく。そんであの子達もー、それを望んでるんだー。
だからー、あり得る限りの技術を使って、あの子達に関わるデータはぜーんぶ消去してる。紙媒体もね。情報部隊の図書館にもないでしょー?それはー、あの子達が徹底して潰しているから。だからとーぜん、君達の記憶にこれっぽちも入ってない子が多いんだよー。元々知られることがなかった上に、知る手段まで絶たれているんだから」
そう。何にもなれなかった。
あの家に生まれた時点で、俺には生きることが許されていなかった。
『純白』。元々心が汚かった俺には、似合わない言葉。それを耐えて耐えて、心の中で蹴って蹴って蹴り倒して、その先に見た景色は、愛する兄の亡骸。
「・・・・・・」
「打開策はちゃんとあるんだよー?それを見つけられない君たちに、現時点での人物の詳細は明かせなー。だーって、あたしはともかく、あの子達は君たちを信用できないからー」
今日、総帥が他でもない俺をこの場に連れて来させたのは、あいつらのため。あいつらでも行けないことはないけど、この会議の内容ではあいつらの枷が邪魔で仕方がない。なら、何を言われても何とも思えない俺が、あいつらの盾になる。そうでなきゃ、俺もあいつらを守る、その認識の中に入れない。いつまでも守られるままじゃいけないから。
「あの子達は優しいんだよ。勿論、睡蓮もね」
俺を親指で指差しながらニヒヒと悪戯に笑うその笑顔は悪役にしか見えない。
「別にやらなくてもいいのにー、あたしからのお願いを率先してやってくれるんだー。元々ー、『死神』という組織を立ち上げたのは、蛍黒寮に違反する人を処罰するためーっていう機関が必要だったからなんだけどー・・・目的が変わってー、所属する人の内情も変わってー、なのに、本来の任務を遂行しよーって頑張ってる。それは一重に、人を守りたいーっていう気持ちは誰よりも強いから」
まぁ全部やろうとしてくれるからここ数年は全部押し付けてるんだけどねー、とサラッと暴露した総帥に、室内のにいる全ての人間の目が死んだ。やっぱり、そうだと思ったよ、ってか。そうなんだよ。
「この子も、あの子達も、あたしが育てた自慢の子供!君たちに教えてなんかあーげないっ!てへぺろ」
珍しくかっこいいこと言ってんのに最後の言葉で全部おじゃんだよ。いい年した大人がてへぺろやんな。きもいぞいい加減。
「・・・ふん、面白い。いいだろう、『死神』の試験監督着任に信任する」
赤髪の男が、ギラギラした目を隠さないまま、右手の甲を上にして机の上にのせる。
「あら、奇遇ですね極次郎さん。私もちょうど言おうと思っていたのに、先を越されてしまいました」
そう言って紫の女性も、右手を机の上へと出す。
「・・・『純白』の名の下、私も当主代理として信任し・・・そして、総帥のその言葉、覆して差し上げよう」
「頑張れー!」
ケラケラと野次を飛ばされながら、白銀の女性も手袋を取り、右手の甲を晒した。
「・・・御三家、全員『信任』とするー?」
「「「御意」」」
「では、総帥が命ずるー!此度の新隊員選抜、試験監督官は『死神』!
遊撃部隊、桔梗!医療部隊、炎楼!情報部隊、睡蓮!開発部隊、楠木!
以上の4名とするー!」
『睡蓮』として着任してから史上初の、大仕事だ。