カップルが甘々な夜を過ごす話
「お、お邪魔するのだわ…!」
「そんな緊張しなくて良いって、楽にしろよ」
肩を固めながら玄関に上がる零那にそっと手を差し出す。
「そう言われても…初めてだもの、緊張ぐらいしてしまうわ」
零那は恥ずかしがりながらも、手を取り返してくれた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
事の発端は数日前のメール。
[一彩さん、今度デートに行きませんか]
宛先は零那から。…なぜ敬語?と思ったがスマホを使い慣れてないらしいし事の持ち掛けということで固くなっちまったんだろうな。気持ちは分かる。
「(こういう時は…直接話した方がやりやすいか?)」
電話で話さないか、と聞けばすぐにOKの返答。電話に出るのは1コールもかからなかった。
付き合っているとはいえ、気軽には会いにくい距離に住んでいる関係。
だから偶にのデートが二人の楽しみだった…のだが
『…泊まり?零那が?』
『えぇ、その…してみたくなった、としか言えなくって…』
…何か悪い影響を受けてないか心配になる。
『いや、俺はいいんだが…大丈夫なのか…?』
俺も零那も年頃の男女だ、正直…何も間違いを起こさずいられる自信がない。
『大丈夫よ。それに…普段から、もっと長く一緒に居たいって思ってたもの』
……お前がこういうことを言ってくるせいだよ…!
『…分かった。なら必要なもん準備しておく』
『!あ、ありがとうなのだわ…一彩さん…!』
電話越しに聞こえる嬉しそうな声に、またやられたな…と俺は内心呟いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そうして夜までは普段通りのデートを楽しみ、今に至る。
「ここが一彩さんの家…」
部屋まで案内すれば、零那はすぐに足を踏み入れていった。
「と言っても一人暮らししてるマンションだけどな」
収集癖もないし、特段面白い物も無いだろう。まぁ別室にあるトレーニング道具ぐらいか…
「いつもここで暮らしてるのね…この部屋で…」
…零那にとっては興味津々らしい。俺のことなら何でも知りたいのか…ちょっと嬉しいけど。
「っとそうだ…布団出してなかった」
「布団?」
流石に来客は想定してなかったし、急ぎで買った布団のことを思い出した。
「泊まるなら無いと困るだろ。用意はしてたんだが…」
まだ物置に…と、足を進めようとした時だった。
そっと引き留めるように、俺の手に柔らかく小さな手が重ねられて…
「…わたしは、困らないわよ…?」
「っ…!!」
ほんのりと赤く染まった顔がこちらを見上げていた。
紡がれる甘い声色は、まるでそうなることを望んでるかのようで…
「れ、零那…流石にそれは…」
…自分でもすぐに否定できなかったのを後悔した。
仕方ないだろ…!好きな相手にこんなこと言われたら誰だって…!
「分かってるわ、わざわざお布団を用意してくれたのにこんなこと言って悪いとも思ってる。
だけど、気になるの…貴方のすぐ傍で一緒に眠れたら、どれだけ幸せなんだろう…って」
……助けてくれ、と何処にも居ない救世主に縋りたくなる。
どうして俺は泊まりなんて了承したんだ…!というか零那はもっとものを知ってくれ…!
「~~~っ…それはともかく!」
これ以上はまずい、無理矢理思考を切り替えるように声を上げ…
「どっちにせよ風呂入らないと寝れないだろ…用意は出来てる、先入ってこいよ」
「ぁ……うん、そうね…そうさせて貰うのだわ」
落ち込んだ様子で零那はそっと手を離した。
拒絶してしまったように見られただろうか…悪い言い方をしたかもしれない。
「…ふぅ…嫌って訳じゃないんだけどな…」
零那を浴室まで案内した後、俺はベッドに腰を下ろす。
あくまで零那とは未成年同士としての付き合い方をしたいとは思ってる。
思ってるんだが…あぁいう態度を見せられる度に理性が飛びそうになる…
本当に、俺になら何をされてもいいと思い知らされてるみたいで……
「っ…やめろ考えるな!」
なんですぐに甘えた考えを出しそうになるんだ…!
別のことで頭を埋めよう。布団出しと歯磨きと…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぅ……」
身体を温かい湯舟に浸からせて、わたしは便々と天井を見上げる。
やっぱり普段の家よりは狭いけど…これはこれで落ち着くかも。
「…やっぱり突然過ぎたかしら」
つい咄嗟にあんなことを言ってしまったことを後悔してる。
一彩さんの前だと、どうしても…抑えられなくなってしまう…
「…あぁ、やっぱり…それでもダメね」
はぐらかすなんてずるいわ、一彩さん…だって…
断られてはいないというだけで…こんなにドキドキしちゃうんだもの…
「……まだ、話したい」
浴槽から上がり、寸暇を惜しむようにシャンプーを手に取る。
この髪も…いつか貴方に洗って貰えるのかしら…
身体は…さ、流石に恥ずかしいけれど…
なんてことを考えて…丁寧に、でも少しだけ急ぎながら泡を洗い流す。
身体と髪を拭く時間も、ドライヤーで乾かす時間も、今だけはとても長く感じてしまう。
お風呂は上がったはずなのに…身体の奥は、熱くなるばかりだった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「一彩さん、お先…上がったわ」
その声を聞いてパソコンの画面に向けていた視線を上げる。
入浴から戻った零那が立っている。…っ、ちょっと待て服めちゃくちゃ可愛い…
「あ、あぁ…おかえり」
見惚れている間に、零那は一歩ずつこちらへと歩いてくる…
本当に…これが、同じ屋根の下で夜を過ごす相手なのか…
あまりに現実感を実感できず、感情が背徳感で埋め尽くされていくようだった。
「それ…パソコン?って物なのかしら…?」
隣まで歩いてきた零那はクッションに腰掛け、画面を覗き込む。
「あぁ。海外の知り合いと話してる所だった」
「海外の知り合い…そう、顔が広いのね…」
…どことなく、何かを気にしているような声色に聞こえた。
零那の前で他人の話をするのがまずかったか…いや…
まさか知り合いって聞いて嫉妬なんて…してたら、流石に可愛すぎるだろ…
「…ぁ、ねぇ一彩さ[大文字]「零那」[/大文字]
話しかけた言葉を遮るように声を張り、そっとパソコンを閉じる。
「断言する。お前より綺麗な奴なんて世界中どこにも居ねぇよ」
「っ……ぁ…」
そのまま身体ごと振り向き、零那の頬にそっと手を添えて
何も言わせる間を与えず、唇で優しくその口を塞いだ。
別にこうする意味は無かったかもしれない、けど…
ただ、俺がそうしたかった。それだけで原動力には充分だった。
「……っ、ふぅ…」
「ぁ、は…ぁ……」
零那は突然のキスで訳も分からないまま蕩けた顔になっている。
うん、流石に伝わっただろ…俺も死ぬほど恥ずかしいけど…
「急に、するなんて…びっくりするじゃない…」
「悪い。さっきのお返しってことにしといてくれ」
…キスしたこと自体には怒ってこないんだな…
「さっき…風呂に行く前の話。後回しにしちまったけど…
動転してたんだ。あんなこと言われて…嫌なわけない」
頬に手を添えたまま、じっと顔を見て話し続ける。
「だから突き返してごめん…本当に、嬉しかったよ」
…お互い、顔も真っ赤になっているんだろう。
しばらく互いの呼吸音だけが場を満たして…
「…一彩、さん…」
零那が片手を伸ばし、俺の背中へと手を回した。
「…零那?」
予想外の反応に戸惑って、零那の目を見ると…
「わたし、ね…今のキスじゃ…足りない、みたい」
……本当に、それは予想外だった。
俺が弁明してる間も少し静かだとは思ったけど…
「ぅ…なら、もう一回するか…?」
その潤んだ瞳を向けてせがまれては断れない…
「する、けど…次は……教えてくれたあのキス、して…?」
…断れないの分かって言ってるよな…!?
教えてくれた、って…初めてのデートで俺からした…
「っ……!」
既に零那は受け入れる体勢に入っている。
でも流石に…今、これ以上してしまったら…
そう踏み止まっていたとき、一つの香りを感じ取る。
俺がいつも使っているシャンプーの匂いだ…
それは目の前の零那の髪から発せられていて……
あ、ヤバい、ダメだこれ
好きな人がよく知る香りを纏ってるってこれ、思ったより
「…目、閉じて」
「ん…」
俺も零那も堪え兼ねたのだろう。もう、止めようがなかった。
俺達は再び唇を重ね、その中で互いの舌を触れ合わせる。
粘膜が擦れ合い、痺れ蕩けるような刺激が脳へと走る…
「んっ、ちゅる…ふ、くちゅ、っ…はむぅ…!」
気持ちいい、止められない…勢いを増して貪ってしまう。
頬に添えていた手を零那の背中へ回し、強く抱き締める。
零那も、まるで抵抗しないどころか呼応するように…
「ふ、ぁ…!ちゅぅ、ん…っ、じゅるぅ…!」
狭い部屋の中に混ざり合う水音が響き続ける。
律していた箍が外れたように、抑えていた欲が溢れるように、
もう思考など止めて目の前の相手を愛していたい。
お互いそう思ってるし、思われていると分かっている。
だから止められないのだ、もう愛し合う幸福を知ってしまったから…
「っ…!ぷは…っ、はぁ…!はぁー……」
どちらが口を離したかは分からないが、終わりは訪れる。
結局、呼吸の限界が来るまでどちらも止まらなかった。
「は、ぁ……はぁ…」
キスの余韻だけで力が抜けそうなほど幸福感に満ちている。
意識が朦朧とする中、互いの身体を必死に抱き締め合う。
意識を保つ為でもあるが、本能的に離れることを拒んでいるんだろう…
そう。本能的に離れることを拒んでいるんだ。
「……」
「ん、っ…ひい、ろ……?」
抱き締めていた手を回し直し、零那の身体をそっと持ち上げ…
背後のベッドに、自分の身体と共に横たわらせた。
「ぁ……」
綺麗で、可愛くて、大好きな相手が目の前に…
布団は敷いてたはずなんだが…まぁ、どうでもいいか。
「こうやって、寝てみたかった…んだよな?」
「…うん…」
返事を聞き、ブランケットで互いの身体を覆った。
「(零那が…ベッドの中で、隣に…)」
「(今、わたし…一彩さんのベッドで寝てるんだ…)」
心臓の鼓動が鳴り止まない、幸福なんてものじゃない、
そんな短い言葉で片付けられる想いじゃないんだ。
愛する人の顔が目前にある、愛する人と同じ枕で寝転んでいる
「ん、っ…!」
更にぐっと距離が縮まる…零那に抱き着かれたのか。
本当に可愛すぎる…こんなの、抱き締め返したくなるだろ…
「ん…ぁ、あったかい…えへへぇ…」
お互いに抱き合うと、零那は幸せそうに笑ってくれる。
密着した相手の身体から、心臓の鼓動が直接響いてくる…
零那もドキドキしてくれてるんだな…すごく安心する。
でも…色々、当たってるどころか押し付けられてるし…
何より近距離でそんな顔、見せられると…
「…ダメだ…あれだけしたのに、まだ…」
こちらの視線に気付いたのか、零那が目を合わせる。
「まだ、したいの…?」
何も言わず、軽く頷いた。すると…
「…わたしは、貴方になら…何をされても、嬉しいのよ…?」
「…ほんと、そういうとこ…ズルいよ」
ベッドの中で、また二人は唇を重ねる。
静かな夜は、もう少しだけ終わりそうにない……
「そんな緊張しなくて良いって、楽にしろよ」
肩を固めながら玄関に上がる零那にそっと手を差し出す。
「そう言われても…初めてだもの、緊張ぐらいしてしまうわ」
零那は恥ずかしがりながらも、手を取り返してくれた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
事の発端は数日前のメール。
[一彩さん、今度デートに行きませんか]
宛先は零那から。…なぜ敬語?と思ったがスマホを使い慣れてないらしいし事の持ち掛けということで固くなっちまったんだろうな。気持ちは分かる。
「(こういう時は…直接話した方がやりやすいか?)」
電話で話さないか、と聞けばすぐにOKの返答。電話に出るのは1コールもかからなかった。
付き合っているとはいえ、気軽には会いにくい距離に住んでいる関係。
だから偶にのデートが二人の楽しみだった…のだが
『…泊まり?零那が?』
『えぇ、その…してみたくなった、としか言えなくって…』
…何か悪い影響を受けてないか心配になる。
『いや、俺はいいんだが…大丈夫なのか…?』
俺も零那も年頃の男女だ、正直…何も間違いを起こさずいられる自信がない。
『大丈夫よ。それに…普段から、もっと長く一緒に居たいって思ってたもの』
……お前がこういうことを言ってくるせいだよ…!
『…分かった。なら必要なもん準備しておく』
『!あ、ありがとうなのだわ…一彩さん…!』
電話越しに聞こえる嬉しそうな声に、またやられたな…と俺は内心呟いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そうして夜までは普段通りのデートを楽しみ、今に至る。
「ここが一彩さんの家…」
部屋まで案内すれば、零那はすぐに足を踏み入れていった。
「と言っても一人暮らししてるマンションだけどな」
収集癖もないし、特段面白い物も無いだろう。まぁ別室にあるトレーニング道具ぐらいか…
「いつもここで暮らしてるのね…この部屋で…」
…零那にとっては興味津々らしい。俺のことなら何でも知りたいのか…ちょっと嬉しいけど。
「っとそうだ…布団出してなかった」
「布団?」
流石に来客は想定してなかったし、急ぎで買った布団のことを思い出した。
「泊まるなら無いと困るだろ。用意はしてたんだが…」
まだ物置に…と、足を進めようとした時だった。
そっと引き留めるように、俺の手に柔らかく小さな手が重ねられて…
「…わたしは、困らないわよ…?」
「っ…!!」
ほんのりと赤く染まった顔がこちらを見上げていた。
紡がれる甘い声色は、まるでそうなることを望んでるかのようで…
「れ、零那…流石にそれは…」
…自分でもすぐに否定できなかったのを後悔した。
仕方ないだろ…!好きな相手にこんなこと言われたら誰だって…!
「分かってるわ、わざわざお布団を用意してくれたのにこんなこと言って悪いとも思ってる。
だけど、気になるの…貴方のすぐ傍で一緒に眠れたら、どれだけ幸せなんだろう…って」
……助けてくれ、と何処にも居ない救世主に縋りたくなる。
どうして俺は泊まりなんて了承したんだ…!というか零那はもっとものを知ってくれ…!
「~~~っ…それはともかく!」
これ以上はまずい、無理矢理思考を切り替えるように声を上げ…
「どっちにせよ風呂入らないと寝れないだろ…用意は出来てる、先入ってこいよ」
「ぁ……うん、そうね…そうさせて貰うのだわ」
落ち込んだ様子で零那はそっと手を離した。
拒絶してしまったように見られただろうか…悪い言い方をしたかもしれない。
「…ふぅ…嫌って訳じゃないんだけどな…」
零那を浴室まで案内した後、俺はベッドに腰を下ろす。
あくまで零那とは未成年同士としての付き合い方をしたいとは思ってる。
思ってるんだが…あぁいう態度を見せられる度に理性が飛びそうになる…
本当に、俺になら何をされてもいいと思い知らされてるみたいで……
「っ…やめろ考えるな!」
なんですぐに甘えた考えを出しそうになるんだ…!
別のことで頭を埋めよう。布団出しと歯磨きと…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぅ……」
身体を温かい湯舟に浸からせて、わたしは便々と天井を見上げる。
やっぱり普段の家よりは狭いけど…これはこれで落ち着くかも。
「…やっぱり突然過ぎたかしら」
つい咄嗟にあんなことを言ってしまったことを後悔してる。
一彩さんの前だと、どうしても…抑えられなくなってしまう…
「…あぁ、やっぱり…それでもダメね」
はぐらかすなんてずるいわ、一彩さん…だって…
断られてはいないというだけで…こんなにドキドキしちゃうんだもの…
「……まだ、話したい」
浴槽から上がり、寸暇を惜しむようにシャンプーを手に取る。
この髪も…いつか貴方に洗って貰えるのかしら…
身体は…さ、流石に恥ずかしいけれど…
なんてことを考えて…丁寧に、でも少しだけ急ぎながら泡を洗い流す。
身体と髪を拭く時間も、ドライヤーで乾かす時間も、今だけはとても長く感じてしまう。
お風呂は上がったはずなのに…身体の奥は、熱くなるばかりだった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「一彩さん、お先…上がったわ」
その声を聞いてパソコンの画面に向けていた視線を上げる。
入浴から戻った零那が立っている。…っ、ちょっと待て服めちゃくちゃ可愛い…
「あ、あぁ…おかえり」
見惚れている間に、零那は一歩ずつこちらへと歩いてくる…
本当に…これが、同じ屋根の下で夜を過ごす相手なのか…
あまりに現実感を実感できず、感情が背徳感で埋め尽くされていくようだった。
「それ…パソコン?って物なのかしら…?」
隣まで歩いてきた零那はクッションに腰掛け、画面を覗き込む。
「あぁ。海外の知り合いと話してる所だった」
「海外の知り合い…そう、顔が広いのね…」
…どことなく、何かを気にしているような声色に聞こえた。
零那の前で他人の話をするのがまずかったか…いや…
まさか知り合いって聞いて嫉妬なんて…してたら、流石に可愛すぎるだろ…
「…ぁ、ねぇ一彩さ[大文字]「零那」[/大文字]
話しかけた言葉を遮るように声を張り、そっとパソコンを閉じる。
「断言する。お前より綺麗な奴なんて世界中どこにも居ねぇよ」
「っ……ぁ…」
そのまま身体ごと振り向き、零那の頬にそっと手を添えて
何も言わせる間を与えず、唇で優しくその口を塞いだ。
別にこうする意味は無かったかもしれない、けど…
ただ、俺がそうしたかった。それだけで原動力には充分だった。
「……っ、ふぅ…」
「ぁ、は…ぁ……」
零那は突然のキスで訳も分からないまま蕩けた顔になっている。
うん、流石に伝わっただろ…俺も死ぬほど恥ずかしいけど…
「急に、するなんて…びっくりするじゃない…」
「悪い。さっきのお返しってことにしといてくれ」
…キスしたこと自体には怒ってこないんだな…
「さっき…風呂に行く前の話。後回しにしちまったけど…
動転してたんだ。あんなこと言われて…嫌なわけない」
頬に手を添えたまま、じっと顔を見て話し続ける。
「だから突き返してごめん…本当に、嬉しかったよ」
…お互い、顔も真っ赤になっているんだろう。
しばらく互いの呼吸音だけが場を満たして…
「…一彩、さん…」
零那が片手を伸ばし、俺の背中へと手を回した。
「…零那?」
予想外の反応に戸惑って、零那の目を見ると…
「わたし、ね…今のキスじゃ…足りない、みたい」
……本当に、それは予想外だった。
俺が弁明してる間も少し静かだとは思ったけど…
「ぅ…なら、もう一回するか…?」
その潤んだ瞳を向けてせがまれては断れない…
「する、けど…次は……教えてくれたあのキス、して…?」
…断れないの分かって言ってるよな…!?
教えてくれた、って…初めてのデートで俺からした…
「っ……!」
既に零那は受け入れる体勢に入っている。
でも流石に…今、これ以上してしまったら…
そう踏み止まっていたとき、一つの香りを感じ取る。
俺がいつも使っているシャンプーの匂いだ…
それは目の前の零那の髪から発せられていて……
あ、ヤバい、ダメだこれ
好きな人がよく知る香りを纏ってるってこれ、思ったより
「…目、閉じて」
「ん…」
俺も零那も堪え兼ねたのだろう。もう、止めようがなかった。
俺達は再び唇を重ね、その中で互いの舌を触れ合わせる。
粘膜が擦れ合い、痺れ蕩けるような刺激が脳へと走る…
「んっ、ちゅる…ふ、くちゅ、っ…はむぅ…!」
気持ちいい、止められない…勢いを増して貪ってしまう。
頬に添えていた手を零那の背中へ回し、強く抱き締める。
零那も、まるで抵抗しないどころか呼応するように…
「ふ、ぁ…!ちゅぅ、ん…っ、じゅるぅ…!」
狭い部屋の中に混ざり合う水音が響き続ける。
律していた箍が外れたように、抑えていた欲が溢れるように、
もう思考など止めて目の前の相手を愛していたい。
お互いそう思ってるし、思われていると分かっている。
だから止められないのだ、もう愛し合う幸福を知ってしまったから…
「っ…!ぷは…っ、はぁ…!はぁー……」
どちらが口を離したかは分からないが、終わりは訪れる。
結局、呼吸の限界が来るまでどちらも止まらなかった。
「は、ぁ……はぁ…」
キスの余韻だけで力が抜けそうなほど幸福感に満ちている。
意識が朦朧とする中、互いの身体を必死に抱き締め合う。
意識を保つ為でもあるが、本能的に離れることを拒んでいるんだろう…
そう。本能的に離れることを拒んでいるんだ。
「……」
「ん、っ…ひい、ろ……?」
抱き締めていた手を回し直し、零那の身体をそっと持ち上げ…
背後のベッドに、自分の身体と共に横たわらせた。
「ぁ……」
綺麗で、可愛くて、大好きな相手が目の前に…
布団は敷いてたはずなんだが…まぁ、どうでもいいか。
「こうやって、寝てみたかった…んだよな?」
「…うん…」
返事を聞き、ブランケットで互いの身体を覆った。
「(零那が…ベッドの中で、隣に…)」
「(今、わたし…一彩さんのベッドで寝てるんだ…)」
心臓の鼓動が鳴り止まない、幸福なんてものじゃない、
そんな短い言葉で片付けられる想いじゃないんだ。
愛する人の顔が目前にある、愛する人と同じ枕で寝転んでいる
「ん、っ…!」
更にぐっと距離が縮まる…零那に抱き着かれたのか。
本当に可愛すぎる…こんなの、抱き締め返したくなるだろ…
「ん…ぁ、あったかい…えへへぇ…」
お互いに抱き合うと、零那は幸せそうに笑ってくれる。
密着した相手の身体から、心臓の鼓動が直接響いてくる…
零那もドキドキしてくれてるんだな…すごく安心する。
でも…色々、当たってるどころか押し付けられてるし…
何より近距離でそんな顔、見せられると…
「…ダメだ…あれだけしたのに、まだ…」
こちらの視線に気付いたのか、零那が目を合わせる。
「まだ、したいの…?」
何も言わず、軽く頷いた。すると…
「…わたしは、貴方になら…何をされても、嬉しいのよ…?」
「…ほんと、そういうとこ…ズルいよ」
ベッドの中で、また二人は唇を重ねる。
静かな夜は、もう少しだけ終わりそうにない……
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