鳥居前、集合で。
「え!?こんなに締め付けて大丈夫なの!?私倒れちゃわない!?」
「ちゃんと締めてなかったら途中でずり落ちてくるけど、それでもいいの?」
難しい〜なんて嘆きながら、お母さんは私の浴衣の帯を結んでくれている。普段はクールなんだけど、珍しい。
_リボン風にするか、シンプルに結ぶか。どっちがいい?…そう究極の選択を迫られたのはつい最近だった。
そろそろ夏祭りだし、誰か誘おうかなぁ?とメッセージアプリの画面を開いたは良いものの、友達の欄に心から友達と呼べる人はそう多くない。それは、私のすぐスクロールしている指を見るとすぐに分かってしまうようだった。
「…友達とまでは言えない人とお祭りに行くのは、やめたほうが良いよ」
お母さんが不意にそう告げた。私は戸惑って、なんと言ったのか聞き返す。
お母さんはその問いには答えずに、一瞬だけこちらを向いた。
「どうせ行くなら、楽しんでほしい。年に10回もないんだし」
確かにお母さんの言う通り、夏祭りなんて片手で数えるくらいの頻度もない。
そんなイベントを、マイナスな気持ちで消費してほしくないということなんだろう。
私が「うん。分かってるよ。」と言うまでに空いた少しの間に、クーラーの冷たい風が部屋を過ぎ去った。
そういえばこんな会話したなぁ…。
思い出にふけるのはまだ早い気もするが、特に考えることもなかったので、ここ最近で1番印象に残ったシーンが脳内で流れたのだろう。
きっちり浴衣の帯も完成したので、なんとか見つけ出した数少ない女友達にメッセージを送る。
「今浴衣着終わった!」
すぐに既読がつき、親指を立てた可愛い…お餅?のキャラクターのリアクションをつけてくれた。
「わかった〜。今から家出るね。鳥居の前に集合だからね」という返答に対し、私もしっかりリアクションをつけておいた。了解と書かれている下にねこちゃんが描かれているものだ。
_このメッセージを見れば、鳥居の前に行けば着いてた!おまたせ!行こう!となると誰もが予想するだろう。私もそう予想していた。というか、それ以外の可能性が見出だせなかった。
だが、私が覚束ない足取りで鳥居まで向かうと、そこに彼女はいなかった。
彼女も私と同じく浴衣らしいので、すぐに見つかると思ったのだが、辺りを見回しても浴衣姿の人すらあまり見つけられない。
先に屋台見てるのかな。
いや、でも、彼女に限ってそんなことはないだろう。あったとしてもしっかりメッセージを送ってくれるはず。
ああ、考えすぎて頭がパンクしそうだ。外気温も確実に高く、帯に汗がたまっている気がして気持ち悪い。
ハンディファンとか持ってくれば良かったかなあ。
そんな間抜けなことを考えていても彼女は来ず、楽しそうに数人で鳥居を通り過ぎていく人々の姿を眺めることしかできない。
もし、置いていかれていたりしたらどうしよう。ある訳もない想像に嫌に鼓動が高鳴った。
人々の喧騒が、私にはとても妬ましく感じて。
手を繋いで歩いているカップルなんか見ていると、さっきまでは彼女とあんな距離感だったのに_と彼女の事しか頭に入らなくなる。
「あごめん‥!おまたせ」
不意に聞き覚えのある声を背後から感じ、反射的にそちら側に顔を向けた。
そこには、浴衣姿の彼女が息を切らしている姿があった。
「[大文字]よ[/大文字]かっ[大文字]た[/大文字]ぁ、来なかったらどうしようって思ってた」
変な部分で声が裏返った。
彼女の浴衣姿が、似合いすぎているせいだ。
一言で表すと、めろい。
黒と紅色が彼女の整った顔立ちと素晴らしい程合っている。目が離せないという言葉を、身に持って体験した。
「いやー、ありがとう。着付け1人だったからしんどかったよ」
着付けを、1人で_?
確かに帯を見てみると、お母さんがやってくれた様なきらびやかなものではない。シンプルだ。
この色合いであればシンプルな帯の方が似合いそうではあるし、丁度いい気もする。
まだ息を整えている彼女に、そろそろ行こうと手を差し出された。
さっきまでの悶々とした気持ちがスッと晴れて、少ししてなんだか恥ずかしい様な嬉しい様な感情に蓋をした。
「ちゃんと締めてなかったら途中でずり落ちてくるけど、それでもいいの?」
難しい〜なんて嘆きながら、お母さんは私の浴衣の帯を結んでくれている。普段はクールなんだけど、珍しい。
_リボン風にするか、シンプルに結ぶか。どっちがいい?…そう究極の選択を迫られたのはつい最近だった。
そろそろ夏祭りだし、誰か誘おうかなぁ?とメッセージアプリの画面を開いたは良いものの、友達の欄に心から友達と呼べる人はそう多くない。それは、私のすぐスクロールしている指を見るとすぐに分かってしまうようだった。
「…友達とまでは言えない人とお祭りに行くのは、やめたほうが良いよ」
お母さんが不意にそう告げた。私は戸惑って、なんと言ったのか聞き返す。
お母さんはその問いには答えずに、一瞬だけこちらを向いた。
「どうせ行くなら、楽しんでほしい。年に10回もないんだし」
確かにお母さんの言う通り、夏祭りなんて片手で数えるくらいの頻度もない。
そんなイベントを、マイナスな気持ちで消費してほしくないということなんだろう。
私が「うん。分かってるよ。」と言うまでに空いた少しの間に、クーラーの冷たい風が部屋を過ぎ去った。
そういえばこんな会話したなぁ…。
思い出にふけるのはまだ早い気もするが、特に考えることもなかったので、ここ最近で1番印象に残ったシーンが脳内で流れたのだろう。
きっちり浴衣の帯も完成したので、なんとか見つけ出した数少ない女友達にメッセージを送る。
「今浴衣着終わった!」
すぐに既読がつき、親指を立てた可愛い…お餅?のキャラクターのリアクションをつけてくれた。
「わかった〜。今から家出るね。鳥居の前に集合だからね」という返答に対し、私もしっかりリアクションをつけておいた。了解と書かれている下にねこちゃんが描かれているものだ。
_このメッセージを見れば、鳥居の前に行けば着いてた!おまたせ!行こう!となると誰もが予想するだろう。私もそう予想していた。というか、それ以外の可能性が見出だせなかった。
だが、私が覚束ない足取りで鳥居まで向かうと、そこに彼女はいなかった。
彼女も私と同じく浴衣らしいので、すぐに見つかると思ったのだが、辺りを見回しても浴衣姿の人すらあまり見つけられない。
先に屋台見てるのかな。
いや、でも、彼女に限ってそんなことはないだろう。あったとしてもしっかりメッセージを送ってくれるはず。
ああ、考えすぎて頭がパンクしそうだ。外気温も確実に高く、帯に汗がたまっている気がして気持ち悪い。
ハンディファンとか持ってくれば良かったかなあ。
そんな間抜けなことを考えていても彼女は来ず、楽しそうに数人で鳥居を通り過ぎていく人々の姿を眺めることしかできない。
もし、置いていかれていたりしたらどうしよう。ある訳もない想像に嫌に鼓動が高鳴った。
人々の喧騒が、私にはとても妬ましく感じて。
手を繋いで歩いているカップルなんか見ていると、さっきまでは彼女とあんな距離感だったのに_と彼女の事しか頭に入らなくなる。
「あごめん‥!おまたせ」
不意に聞き覚えのある声を背後から感じ、反射的にそちら側に顔を向けた。
そこには、浴衣姿の彼女が息を切らしている姿があった。
「[大文字]よ[/大文字]かっ[大文字]た[/大文字]ぁ、来なかったらどうしようって思ってた」
変な部分で声が裏返った。
彼女の浴衣姿が、似合いすぎているせいだ。
一言で表すと、めろい。
黒と紅色が彼女の整った顔立ちと素晴らしい程合っている。目が離せないという言葉を、身に持って体験した。
「いやー、ありがとう。着付け1人だったからしんどかったよ」
着付けを、1人で_?
確かに帯を見てみると、お母さんがやってくれた様なきらびやかなものではない。シンプルだ。
この色合いであればシンプルな帯の方が似合いそうではあるし、丁度いい気もする。
まだ息を整えている彼女に、そろそろ行こうと手を差し出された。
さっきまでの悶々とした気持ちがスッと晴れて、少ししてなんだか恥ずかしい様な嬉しい様な感情に蓋をした。
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