貴女がくれたぬくもりを溢さないように。
俺は、気付いたら精神病棟にぶち込まれていた。
理由はわからない。
何かで気を失って、目が覚めたときには病院のベッドに寝転がっていた。
しかも精神病棟の。
_随分前のことのように語ってしまったが、これはごく最近のことだ。
というか先週。
そして俺のベッドの隣に配置されている1つの椅子には、謎のお姉さんがいて、ちょくちょく話しかけてくる。
…これも先週からだ。
名を、確か……霞さんといった気がする。
長くて綺麗な黒髪と美しい茶色がかった瞳からは大人な雰囲気が醸し出されているが、彼女の温もりを感じる笑顔からは不思議と子供っぽさも見て取れた。
「ン?急にこっち向いてどうしたの〜?ハグでもしたくなった?」
「そんな訳無いだろ…」
もう高校2年生なんだが、俺。と何回言っても彼女は俺のことをまるで幼稚園児かのように扱う。
ただ、前までの扱いが奴隷以下だった俺からすれば少しだけありがたかった。
そんな俺が先週先生に言われたのは「双極性障害」。
気分が高まる躁状態と気分が落ち込む鬱状態を繰り返す精神疾患の1つだそう。
だが俺は最近躁状態が来ていないらしい。
…それはただの鬱では?と思っているが、こんなド素人よりは確実に病院の先生のほうが言っていることは正しいからな…。
そういえばなぜ霞さんは俺の病室に毎日いるんだろうか。
一週間もすれば慣れてきてしまったから、聞き忘れていた。
「…あの、霞さん」
「今度こそ何か用ー?なんでも聞いてね〜」
「…あの、なんで霞さんは俺の病室にいるんですか…?」
彼女は少し目を丸くさせ、少しだけ眉間にシワを寄せた。
そして考える素振りを見せた後こう言った。
「ンー、…私も君と同じだったんだよ。」
俺は、その言葉の意味を理解するのに数秒の時間を要した。
頭が回っていなかった訳でもないけれど、何故か意味が全然わからなくて。
「…同じ?」
「うん。私も、君と同じような感じで入院してたの。ちょうど君くらいの時。…でね、ある時別の内容で検診に行った時にふと訪れてみたら当時の私の年齢と同じくらいの君がいたから…」
「だから俺に付き纏ってるってことなんですね」
「そうだけどこういう話は最後まで聞いてよね!?」
隙を作らずツッコむ彼女は、どこか楽しそうで。
本当に俺みたいな奴だったのか、信じられない。
「ついでに君の家庭環境は医師から聞かせてもらったんだけどね〜、おんなじような感じだったから運命感じちゃったよね」
その彼女の言葉に驚いた。
医師が勝手に患者の情報をよくわからない人に告げる事ではなく、俺と同じような家庭環境が他にもあったことに。
今まで、何回か…俺の家庭環境は一般的ではないと感じた時にネット掲示板を漁っていた。
けれど、どの掲示板を見ても俺と同じような例,そして…俺の家庭環境より酷い例は、1つも見られなかった。
だから、心の何処かで不安が蓄積していたんだろうなと思う。
「…君、絶対不安だったんだよ。体のどっかでね。」
彼女はどこか遠くを向いている。
今までの俺の思考回路をすべて見られていたのかと、少し怖くなった。
だが彼女にはそういった才能があるんだろう。うまれつき。
_「でもね、…ここで人の体温を忘れちゃったら後々しんどいよ。だからお姉さんから1つおまじな〜い」
急に彼女がこっちを向いた。
おまじないって…やっぱり幼稚園児だと思われてるだろ。
すると、彼女は俺の両手をぎゅっと強く握った。
ちょっと痛い。
「あの…なんですかこれ…」
「いいからいいから!今までの人の体温のイメージにあったかさなんてなかっただろうけどさ、…せめて、あったかい人もいっぱいいるんだよって…知ってほしいの」
確かに、人の体温なんて感じたこと、あまりなかったかもしれない。
でも、確かに霞さんの手からはぬくもりを感じる。
「でも、またぬくもりのない人にぶち当たるかもしれないじゃないですか」
俺は思っていた不安を口に出してしまっていた。
でも霞さんは否定しなかった。
「…そうだね。確かに、全員があったかい訳じゃない。勿論冷たい人もいっぱいいる。…君や私の家族みたいなね。」
身近な例を挙げられてしまい、何も言えない。
霞さんは続けた。
「でもね、大丈夫。私のぬくもりが一滴でも残ってたらきっとぬくもりを思い出せるから。」
そう笑う霞さんからは、ほのかにラベンダーの香りがする。
何故か、いつでも彼女のぬくもりを思い出せる気がしてきたのは…当の本人には内緒だ。
理由はわからない。
何かで気を失って、目が覚めたときには病院のベッドに寝転がっていた。
しかも精神病棟の。
_随分前のことのように語ってしまったが、これはごく最近のことだ。
というか先週。
そして俺のベッドの隣に配置されている1つの椅子には、謎のお姉さんがいて、ちょくちょく話しかけてくる。
…これも先週からだ。
名を、確か……霞さんといった気がする。
長くて綺麗な黒髪と美しい茶色がかった瞳からは大人な雰囲気が醸し出されているが、彼女の温もりを感じる笑顔からは不思議と子供っぽさも見て取れた。
「ン?急にこっち向いてどうしたの〜?ハグでもしたくなった?」
「そんな訳無いだろ…」
もう高校2年生なんだが、俺。と何回言っても彼女は俺のことをまるで幼稚園児かのように扱う。
ただ、前までの扱いが奴隷以下だった俺からすれば少しだけありがたかった。
そんな俺が先週先生に言われたのは「双極性障害」。
気分が高まる躁状態と気分が落ち込む鬱状態を繰り返す精神疾患の1つだそう。
だが俺は最近躁状態が来ていないらしい。
…それはただの鬱では?と思っているが、こんなド素人よりは確実に病院の先生のほうが言っていることは正しいからな…。
そういえばなぜ霞さんは俺の病室に毎日いるんだろうか。
一週間もすれば慣れてきてしまったから、聞き忘れていた。
「…あの、霞さん」
「今度こそ何か用ー?なんでも聞いてね〜」
「…あの、なんで霞さんは俺の病室にいるんですか…?」
彼女は少し目を丸くさせ、少しだけ眉間にシワを寄せた。
そして考える素振りを見せた後こう言った。
「ンー、…私も君と同じだったんだよ。」
俺は、その言葉の意味を理解するのに数秒の時間を要した。
頭が回っていなかった訳でもないけれど、何故か意味が全然わからなくて。
「…同じ?」
「うん。私も、君と同じような感じで入院してたの。ちょうど君くらいの時。…でね、ある時別の内容で検診に行った時にふと訪れてみたら当時の私の年齢と同じくらいの君がいたから…」
「だから俺に付き纏ってるってことなんですね」
「そうだけどこういう話は最後まで聞いてよね!?」
隙を作らずツッコむ彼女は、どこか楽しそうで。
本当に俺みたいな奴だったのか、信じられない。
「ついでに君の家庭環境は医師から聞かせてもらったんだけどね〜、おんなじような感じだったから運命感じちゃったよね」
その彼女の言葉に驚いた。
医師が勝手に患者の情報をよくわからない人に告げる事ではなく、俺と同じような家庭環境が他にもあったことに。
今まで、何回か…俺の家庭環境は一般的ではないと感じた時にネット掲示板を漁っていた。
けれど、どの掲示板を見ても俺と同じような例,そして…俺の家庭環境より酷い例は、1つも見られなかった。
だから、心の何処かで不安が蓄積していたんだろうなと思う。
「…君、絶対不安だったんだよ。体のどっかでね。」
彼女はどこか遠くを向いている。
今までの俺の思考回路をすべて見られていたのかと、少し怖くなった。
だが彼女にはそういった才能があるんだろう。うまれつき。
_「でもね、…ここで人の体温を忘れちゃったら後々しんどいよ。だからお姉さんから1つおまじな〜い」
急に彼女がこっちを向いた。
おまじないって…やっぱり幼稚園児だと思われてるだろ。
すると、彼女は俺の両手をぎゅっと強く握った。
ちょっと痛い。
「あの…なんですかこれ…」
「いいからいいから!今までの人の体温のイメージにあったかさなんてなかっただろうけどさ、…せめて、あったかい人もいっぱいいるんだよって…知ってほしいの」
確かに、人の体温なんて感じたこと、あまりなかったかもしれない。
でも、確かに霞さんの手からはぬくもりを感じる。
「でも、またぬくもりのない人にぶち当たるかもしれないじゃないですか」
俺は思っていた不安を口に出してしまっていた。
でも霞さんは否定しなかった。
「…そうだね。確かに、全員があったかい訳じゃない。勿論冷たい人もいっぱいいる。…君や私の家族みたいなね。」
身近な例を挙げられてしまい、何も言えない。
霞さんは続けた。
「でもね、大丈夫。私のぬくもりが一滴でも残ってたらきっとぬくもりを思い出せるから。」
そう笑う霞さんからは、ほのかにラベンダーの香りがする。
何故か、いつでも彼女のぬくもりを思い出せる気がしてきたのは…当の本人には内緒だ。
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