夕涼みと宵蛍
[小文字][中央寄せ]主人公:[漢字]坂東[/漢字][ふりがな]さとう[/ふりがな] [漢字]旭[/漢字][ふりがな]あさひ[/ふりがな][/中央寄せ][/小文字]
蝉がやけに煩い8月の終わり、君は言った。
「…ねえ、もうちょっとで夏終わっちゃうね。」
と。
僕は特に何も考えず、
「最近は10月まで暑いからいいんじゃないの?」
と口にした。
「もー…わかってないなあ、旭くんは。8月で一応夏っていう季節は終わりなんだよ」
君は何処か遠くを眺めてた。
窓越し、風で葉が揺れる。
都会の昼は、楽しみなんぞない。ただ蝉時雨が耳に入って、揺れる葉を眺めるだけ。
それでも君は、ずっと8月を名残惜しそうにしている。
「どうしてそんなに君は、8月が好きなのさ。9月も10月も、なんなら6月からずっと暑いじゃないか」
僕が言った言葉に、君は少し笑った。
いや、僕自身に笑ったのかもしれない。
でも笑われる理由って、何だろうか。
僕はそんなに可笑しなこと言ったか…?
「…ね、今日この後少しだけ…海に行かない?」
ぐるぐると駆け巡る頭の中に、そんな君の言葉が入ってきた。
僕は考えれず、
「いいよ」
と口にした。
口にした後に、ようやく意味が頭の中に入ってくる。
「…海???!」
「え、なんで返事した後にそんな事叫ぶのよ」
「…海に行って、何するつもり?まさか泳ぐの?」
僕が問いかける。
君はそれに答えた。
「そんな訳ないじゃん!夕涼みだよ、夕涼み」
夕涼み…?それなら別に海じゃなくてもいいじゃないか、と言いかけたが、きっと君なりの考えでもあるんだろう。
「…いいよ、行ってあげても」
「いやそもそも連れてく予定だったから」
君はまたこっちを見ずに言う。
君の背中はどこか淋しそうだった。
少し時間が経って、僕たちの視界は海でいっぱいになった。
潮の匂いと、冷たい風が全身を通り抜けていく。
「…ね?海沿いって涼しいでしょ」
君は隣でどやっとしている。
その顔がなんだか面白くて、僕は笑って、
「そうだね」
と答えた。
海の方を見てみると、ちょうど陽が沈み始めた頃だった。
眩しい程の赤色が、海面にも反射している。
「わ、まぶしっ…」
と言って、君は片目を閉じた。
「…そういえばさ、なんでわざわざ海にまで来たの?」
僕が言うと、君は手で光を防御しながら僕をじっと見つめた。
_「…覚えてない?約束」
「…やくそく?」
気付けばあたりに蛍が飛んでいた。
蛍は沢山いるのに、居たはずの君はいなかった。
どうして、と考える間もなく僕は全部を思い出した。
丁度4年前、君と僕はこの海で約束をした。
「あと4年で18歳だからー、4年後に結婚しようね!この海辺で」
「もちろん」
でも叶わなかった。
2年前、君はこの海で命を絶った。
…いや、" 絶たされた "が、正しいのかもしれない。
_[小文字]「あーあ、あの時もうちょっとだけ私が大人だったら…今頃坂東って名乗れたかな」[/小文字]
耳元で、確かに君の声がした。
耐えきれなくて、涙が頬を伝う。
その時既に、君の声も気配も温もりもなくなっていた。
でも、今の記憶は脳味噌の中にある。
きっと、これから先もずっと。
僕は最後に君に向けて、
「大好きだよ」
と言葉を残した。
君が、笑っている気がした。
蝉がやけに煩い8月の終わり、君は言った。
「…ねえ、もうちょっとで夏終わっちゃうね。」
と。
僕は特に何も考えず、
「最近は10月まで暑いからいいんじゃないの?」
と口にした。
「もー…わかってないなあ、旭くんは。8月で一応夏っていう季節は終わりなんだよ」
君は何処か遠くを眺めてた。
窓越し、風で葉が揺れる。
都会の昼は、楽しみなんぞない。ただ蝉時雨が耳に入って、揺れる葉を眺めるだけ。
それでも君は、ずっと8月を名残惜しそうにしている。
「どうしてそんなに君は、8月が好きなのさ。9月も10月も、なんなら6月からずっと暑いじゃないか」
僕が言った言葉に、君は少し笑った。
いや、僕自身に笑ったのかもしれない。
でも笑われる理由って、何だろうか。
僕はそんなに可笑しなこと言ったか…?
「…ね、今日この後少しだけ…海に行かない?」
ぐるぐると駆け巡る頭の中に、そんな君の言葉が入ってきた。
僕は考えれず、
「いいよ」
と口にした。
口にした後に、ようやく意味が頭の中に入ってくる。
「…海???!」
「え、なんで返事した後にそんな事叫ぶのよ」
「…海に行って、何するつもり?まさか泳ぐの?」
僕が問いかける。
君はそれに答えた。
「そんな訳ないじゃん!夕涼みだよ、夕涼み」
夕涼み…?それなら別に海じゃなくてもいいじゃないか、と言いかけたが、きっと君なりの考えでもあるんだろう。
「…いいよ、行ってあげても」
「いやそもそも連れてく予定だったから」
君はまたこっちを見ずに言う。
君の背中はどこか淋しそうだった。
少し時間が経って、僕たちの視界は海でいっぱいになった。
潮の匂いと、冷たい風が全身を通り抜けていく。
「…ね?海沿いって涼しいでしょ」
君は隣でどやっとしている。
その顔がなんだか面白くて、僕は笑って、
「そうだね」
と答えた。
海の方を見てみると、ちょうど陽が沈み始めた頃だった。
眩しい程の赤色が、海面にも反射している。
「わ、まぶしっ…」
と言って、君は片目を閉じた。
「…そういえばさ、なんでわざわざ海にまで来たの?」
僕が言うと、君は手で光を防御しながら僕をじっと見つめた。
_「…覚えてない?約束」
「…やくそく?」
気付けばあたりに蛍が飛んでいた。
蛍は沢山いるのに、居たはずの君はいなかった。
どうして、と考える間もなく僕は全部を思い出した。
丁度4年前、君と僕はこの海で約束をした。
「あと4年で18歳だからー、4年後に結婚しようね!この海辺で」
「もちろん」
でも叶わなかった。
2年前、君はこの海で命を絶った。
…いや、" 絶たされた "が、正しいのかもしれない。
_[小文字]「あーあ、あの時もうちょっとだけ私が大人だったら…今頃坂東って名乗れたかな」[/小文字]
耳元で、確かに君の声がした。
耐えきれなくて、涙が頬を伝う。
その時既に、君の声も気配も温もりもなくなっていた。
でも、今の記憶は脳味噌の中にある。
きっと、これから先もずっと。
僕は最後に君に向けて、
「大好きだよ」
と言葉を残した。
君が、笑っている気がした。
クリップボードにコピーしました