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#2

hsrb様 共依存

「みなさん、お疲れ様でした!では、次回の配信でお会いしましょう。さようなら〜!」
配信終了のボタンを押し、画面が暗転したのを確認してから、大きくほっと一息つく。

「疲れた〜……」

でも、休めるのも少しのあいだ。
これからレッスンスタジオに行って、今度のイベントの練習をしなくちゃいけない。

「……よし、頑張るか!」



「そこ、ちょっと遅れてる!」

「タイミングズレてるよ!」

「ダメ、はい、もう一回!5、6、7、8!」

もう何回目、とか思いながらも、必死に食らいついてレッスンを続ける。

「○○さん、そこ練習してきてね!」

レッスンの中で次々と課せられる課題。
上手くいってないのは私だけだって、痛いほど分かってる。

「は、はい!」

「はい、次ここ行くよ!1、2、3、4!こんな感じでね!」

先生の動きを見ながら、必死に少しだけ動きを試してみる。

「はい、やるよ!1、2、3、4!」

「まだ全体がバラバラだね。でも大体はできてるよ。あとここを何回かやって、最後に3回くらい通しでやってから終わるからね!」

「はい!」



「あ〜、もう疲れた〜!」

ソファーの背もたれに深く寄りかかって、泥のように休憩する。

「そりゃそうだろ。あれだけやって疲れないやつがいるかよ」

ロウに、呆れ気味に同意される。

「……はぁ、今日もう疲れたから、私帰るね〜」

荷物をまとめて帰ろうとした、その時だった。

「あ、それなら今、渡しておきたいものがあります」

「ショウ、どうしたの?」

不意に声をかけられたので、驚いて聞き返してしまった。

「これです。前、●●さん、好きって言ってましたよね」

「え、覚えてたの?」

驚くのも無理はない。昔、ちょっとした配信の中で、ほんの少し呟いたくらいの小さなことだったからだ。

「ショウ、ありがとう。すっごくうれしい!」



ショウも、ちょうどもう帰るらしい。せっかくなら、ということで一緒に帰ることにした。
夜道を少し話しながら歩いていると、ショウがふと足を止めて言った。

「……●●さん、疲れてます?」

びっくりした。話しているだけで、それが分かってしまうなんて。

「そう、かな……?」

「そうです。何か、悩みでもあるのですか? 辛かったら、人に話してみるのもいいですよ」

辛いことを人に話すという考えは、これまでの私にはなかった。辛いことはいつも、自分1人で抱え込んで乗り越えてきたから。

「嫌でなければ、今日の夜にでも話してみませんか?」



夜、言われた通りに通話を繋いだ。

『聞こえてますか?』

「大丈夫、聞こえてるよ。こっちはどう?」

『聞こえてますよ』

考えてみれば、私にとって誰かとプライベートで二人きりの通話をするのは、これが初めてかもしれない。

「よかった。……ねぇ、さっき歩いてる時、なんで私が疲れてるって分かったの? 顔に出てた?」

『顔というか、いつもより少し歩くのが遅かったですし、元気がなさそうでしたから』

「そこまで見られてたんだ。ショウの前だと隠せないや」

『隠さなくていいですよ。何かあったんですよね?』

そう優しく促されて、昼間の悔しさが一気に込み上げてくる。

「私は、みんなみたいにうまくできないから。どれだけ頑張っても、みんなに追いつけないの。それが、本当に悔しくて……」

ショウは、何も言わずに静かに聞いてくれる。それだけで、胸の奥がすうっと軽くなっていく。

「今日だって、また注意されてばっかりだった」

『……大丈夫ですよ。●●さんはちゃんと上手にできてます。例えば、その悩みを私に話してくれたこととか。そんなに簡単にできることではないですよ』

ショウは、私を否定せずに認めてくれる。弱音を吐きだせるのは、ここだけなんだ。
いつしか、夜中の通話は毎日の日課になっていた。毎晩交わす彼の言葉だけが、ボロボロな私の心の支えになっていった。



ある日の通話のこと。

「今日はライがね……」

「あと、そのときカゲツがさ……」

いつも通り楽しく話していたはずなのに、ふと、ショウがあまり話していないことに気づく。

「……ショウ、どうかした?」

『……私と話すのは、退屈、ですか?』

「そんなこと、ないよ!」

『私がいるのに、そんなに他の人と仲良くしないでくださいよ……』

「っ、ごめ、」

突然、泣き出しそうな、寂しそうな声でそんなことを話し出すんだ。どうすればいいか分からなくなって、胸が締め付けられる。

「私は、ショウが一番だから……っ」

今、私に言える言葉はこれしかなかった。ショウが私から離れてしまわないように。私の心を支え続けてくれるように。
その日を境に、私はロウたちとあまり話さなくなった。またショウにあんな思いをさせたくなくて、私の日常は、どんどんショウ一色に染まっていった。



「―――なぁ、●●。お前さ、自分のやりたいこと、ちゃんとできてんの?」

ある日、突然ロウに呼び止められてそう言われた。

「え?」

「……ショウのことだよ。あいつになんか言われたり、されてねぇか……?」

「私は私がやりたくてやってるだけで、別になにか言われたわけじゃ……」

……そうだ。私はショウに辛い思いをさせたくなくて、自分の意志でやってるんだ。なにか言われたわけじゃない。

「……本当か?」

「本当だよ」

「俺には、本当にやりたいことができてるようには思えねぇんだけど」

うるさい。何も知らないくせに。私にはショウが必要なの! 私を支えてくれてるんだから!

「だから本当だって! 私がやりたくてやってるの!」

私はそう突っぱねて、ロウに背を向けて走り出した。



『……明日、私の家に来て、ボイスドラマの練習でもしませんか?』

夜、ショウから届いたメッセージにびっくりした。突然そんな誘いを受けるなんて思っていなかったから。

「……いいよ、またスタジオで注意されて、落ち込みたくもないしね」

『じゃあ、明日家に着いたらインターホンを押してください。すぐ鍵を開けますから』



次の日。
ショウの家の扉の前に立ち、緊張しながらインターホンを押すと、ショウはすぐに鍵を開けてくれた。「上がっていいよ」と言われたので、靴を脱いで部屋に上がる。

「台本は持ってきましたか?」

「大丈夫、あるよ」

「よかった。早速ですが、始めてしまいましょうか」

台本を開いて、セリフを目で追う。
外の世界から遮断された、この2人だけの空間が、不思議とひどく心地よく思えた。

――ふと、通知が鳴った。

画面を見ると、同期からのメッセージだった。

『いま外で探してる。あいつの家か? 頼むから一回でいいから外に出てくれ』

そのスマホの画面に映し出された文字を、ショウも横から冷ややかな目で見つめていた。そして、ショウは私にこう告げた。

「……選んでください。ここに残るか、外に出るか。……ただし、一歩でも外に出れば、私はもうあなたを助けてあげませんよ。どうしますか?」

少し前から、私はショウに違和感を感じていた。危険だと、どこかで本能が察しているのに、離れられなかった。いや、離れなかった。

私は、自分の意思で離れなかったんだ。

ショウから離れることができない私に、「外に出る」という選択肢は、どうしても選べなかった。

『私は行かないよ。迷惑だからもう探さないで』

私は震える手でそう返信した。

「ふふ、良い子ですね。……私は始めから、全て分かっていましたよ。あなたが私を選んでくれることも、こうなることもね」

返信を送り終えたあと、私はふと、自分が深く安心していることに気がついた。

―――あぁ、私はショウといるから落ち着くんだ。

そう完全に自覚してしまったら、もう二度と、ショウから離れることはできないだろう。でも、私にはそれで良かった。いつの間にか、私の世界はショウだけで満たされていた。



『お願い、目を覚まして』
『1人で抱え込むな』
『何があったの』
『助けたい、まだ間に合うから』
同期たちから何度も送られてくる、「助けたい」という切実な言葉。それらの言葉が、部屋に置かれた●●のスマホを虚しく震わせ続けている。
ショウは1人、その画面を見つめながら、暗闇のなかで愉しそうに笑っていた。

「ふふ、馬鹿みたいだなぁ。●●が苦しんでいた時にただ笑って見ていただけの人に、何が分かりますか。●●を知っているのは、私だけでいいんですよ」

ショウは、もうすっかりこちらの世界に堕ちてしまった彼女へ、優しく視線を落とした。

「ねぇ、そうでしょう?」

作者メッセージ

hsrb様 共依存 3338字

遅くなりましてすみません。
リクエストありがとうございます。
ありがたく書かせていただきました!
解釈が合っていない所があれば、
指摘していただいて構いません。
(どんどん指摘してください)
次のリクエストもお待ちしております!

2026/06/28 19:44

筆の向くまま
ID:≫ 0trswgl0X2OQs
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