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君と僕、私とあなた。─三年前、僕の前から消えた彼女が「忘れないで」と笑っていた理由─

#2

2話 瀬戸悠真─現在

「悠真ー!起きなさーい!」
母さんの声で目が覚める。普段は自分から起きているのに、声をかけてくるなんて珍しいな。
枕元のスマホを確認する。
「は!?8時!?」
しまった。凛のことを考えて夜更かしをしたのがよくなかった。
登校完了時刻まで30分しかない。
『あんた、起きるの遅くない?』
ふと耳元で声がした。
「うわっ」
『何よ。人をお化けみたいに。』
「いや、お化けだろ!!」

「行ってきまーす!!」
振り返らずに通学路を全力で駆け抜ける。
風が髪を揺らした。
─────
「はぁ。はぁ。」
教室に駆け込み息を整える。
「瀬戸、珍しーね。遅刻ギリなの。」
茶化すように日向が言う。無視を決め込みカバンからノートを出していると、
「ねー!瀬戸ってば!聞ーてる?」
しつこくてイライラする。
そう思った時だった。
「うわっ」
少し開いていた窓から信じられないほどの強風が吹いた。
顔を上げるとそこには悪戯っぽく舌を出した凛がいた。
思わず呆れる。何をしているんだ。
『私の悠真を馬鹿にすんな!』
僕がぽかんとしている横で日向が前髪を直しながら、窓際の生徒に向かって囃し立てている。
「ちょっと!窓しめて!」
「いいよ。僕がしめる。」
「え、瀬戸…」
先ほどよりかなり下がったテンションの日向を無視しながら窓に手をかける。
……視線が集まってるな。
少しでも凛と接触したくて名乗り出たつもりだけど、全く目立たないタイプの僕がクラスの中心にいる日向と話していたのがそんなに嫌だったろうか。
『じゃ、昼休みね。』
それだけ言い残すと凛はフッと消えた。

キーンコーンカーンコーン
チャイムがなり休み時間になった。
「お昼食べよー」
クラスメイトの声を聞きつつ考える。
昼、どこで食べようか。
─『じゃ、昼休みね。』
あ、凛が待ってるな。もう行くか。
重い腰を上げ廊下に出た時だった。
「あ、瀬戸。」
声をかけられ振り返る。
そこには昼ごはんだろうかパンを持った日向が立っていた。
両隣にいる友達─昨日もいた2人だ─に先に行くように言うとこちらに駆け寄ってきた。
「どこ行くの?」
「あ、昼、食べに行く」
「そーなんだ!でもそっちって旧校舎じゃ…」
「そうだけど。」
何か慌てたようなそぶりを見せている。なんなんだ。
「あ、あのさっ!」
「…何」
「朝、ありがとう。私が話しかけて騒いじゃって目立つの嫌だったっしょ?」
「あぁ。それは別にいいよ。遅刻しかけたのは僕だし。」
それじゃあ、と言って立ち去ろうとする。
「昼って言ってるのになんも持ってないじゃん!」
……バレた。
「ほら!あたしの上げる!てかもらって!朝のお礼!」
「あ、あぁ…ありがと…」
僕が差し出されたパンを受け取ると日向は手を振って去っていった。
残された僕はその場で呟く。
「これじゃあ、凛は食べられないか。」
そのまま凛の待つ旧校舎へ向かって歩き出した。

2026/06/17 17:07

花音
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