[大文字]ー 6話 ー[/大文字]
[漢字]「待て……! その技だけは……それだけは、世界の理(物理法則)を完全に崩壊させるぞ!!」
ジャージ姿に成り果てた偽マスターが、涙目で後ずさりする。だが、俺の「自己嫌悪(エナジー)」はもう止まらない。俺がノートの隅に書きなぐり、あまりの羞恥心にページをノリで固めた伝説のポエム――。
「聴け……世界よ! これが俺の、中三のクリスマスイブの叫びだッ!!」
俺が口を開こうとした、その時。
「――つーくん? あんた、何やってんの。そんな格好して」
全人類が固まった。
新宿アルタ前の巨大ビジョンが、一人の女性を映し出す。
割烹着の上からダウンジャケットを羽織り、スーパーの買い物袋を提げた、あまりにも「日常」を体現しすぎた存在。
「か……母ちゃん!!?」
俺の叫びが、衛星中継を通じて世界200カ国に同時配信された。
母ちゃんは、俺の「暗黒の右腕(ビニール傘)」を怪訝そうに見つめると、ガサガサと買い物袋を探り、一通の、見覚えがありすぎるピンク色の封筒を取り出した。
「あんた、掃除の時に机の引き出しの奥からこれ見つけたわよ。『深淵の姫君へ贈る、血の接吻(くちづけ)』って書いてあったから、心配になって……」
「やめろぉぉぉぉぉ!! 読むな! 全世界に音声が拾われてるんだぞ!!」
だが、無情にも会場の超高性能集音マイクが、母ちゃんの「愛の朗読」を完璧に拾い上げた。
『拝啓、漆黒の翼を持つ君へ。僕の左胸の鼓動は、君という太陽に焼かれる氷のようで……』
「ああああああああああ!!!」
偽マスターが、あまりの気恥ずかしさに悶絶し、光の粒子となって消滅していく。
「完璧な理想」だった彼は、この「実の親による黒歴史の公開処刑」という、全人類共通の最大級のダメージに耐えられなかったのだ。
同時に、空に浮かんでいた「第三の月」が、パァン! と巨大なクラッカーのように弾けた。
中から降ってきたのは、魔力でも毒液でもない。
――大量の、「俺が中学時代に描いた、下手くそな自作キャラのシール」だった。
「ひ、ひえぇ……」
新宿の街が、俺の黒歴史シールで埋め尽くされていく。
大統領も、自衛隊も、熱狂していた信者たちも、あまりの「いたたまれなさ」に目を逸らし、現場には静寂だけが流れた。
「……マスター?」
銀狼(田中先輩)が、震える手でアイパッチを外した。
「なんか……急に冷静になりました。僕、明日も早いんで、市役所の仕事に戻りますね」
「待てよ! 田中さん! 俺を一人にしないでくれ!!」
こうして、世界滅亡の危機は去った。
予言書(俺のノート)は、「人類が二度と繰り返してはならない悲劇の記録」としてユネスコの世界記憶遺産に登録され、俺は「世界を救った救世主」ではなく、「世界で一番恥ずかしい男」として、歴史にその名を刻むことになった。
俺の物語は、まだ終わらない。
なぜなら、母ちゃんの手には、まだ「未開封のノート(高校時代のポエム)」が残っていたからだ。
「つーくん、次のも読む?」
「……勘弁してください」
俺の黒歴史は、明日も世界に配信される。[/漢字][ふりがな][/ふりがな]
[漢字]「待て……! その技だけは……それだけは、世界の理(物理法則)を完全に崩壊させるぞ!!」
ジャージ姿に成り果てた偽マスターが、涙目で後ずさりする。だが、俺の「自己嫌悪(エナジー)」はもう止まらない。俺がノートの隅に書きなぐり、あまりの羞恥心にページをノリで固めた伝説のポエム――。
「聴け……世界よ! これが俺の、中三のクリスマスイブの叫びだッ!!」
俺が口を開こうとした、その時。
「――つーくん? あんた、何やってんの。そんな格好して」
全人類が固まった。
新宿アルタ前の巨大ビジョンが、一人の女性を映し出す。
割烹着の上からダウンジャケットを羽織り、スーパーの買い物袋を提げた、あまりにも「日常」を体現しすぎた存在。
「か……母ちゃん!!?」
俺の叫びが、衛星中継を通じて世界200カ国に同時配信された。
母ちゃんは、俺の「暗黒の右腕(ビニール傘)」を怪訝そうに見つめると、ガサガサと買い物袋を探り、一通の、見覚えがありすぎるピンク色の封筒を取り出した。
「あんた、掃除の時に机の引き出しの奥からこれ見つけたわよ。『深淵の姫君へ贈る、血の接吻(くちづけ)』って書いてあったから、心配になって……」
「やめろぉぉぉぉぉ!! 読むな! 全世界に音声が拾われてるんだぞ!!」
だが、無情にも会場の超高性能集音マイクが、母ちゃんの「愛の朗読」を完璧に拾い上げた。
『拝啓、漆黒の翼を持つ君へ。僕の左胸の鼓動は、君という太陽に焼かれる氷のようで……』
「ああああああああああ!!!」
偽マスターが、あまりの気恥ずかしさに悶絶し、光の粒子となって消滅していく。
「完璧な理想」だった彼は、この「実の親による黒歴史の公開処刑」という、全人類共通の最大級のダメージに耐えられなかったのだ。
同時に、空に浮かんでいた「第三の月」が、パァン! と巨大なクラッカーのように弾けた。
中から降ってきたのは、魔力でも毒液でもない。
――大量の、「俺が中学時代に描いた、下手くそな自作キャラのシール」だった。
「ひ、ひえぇ……」
新宿の街が、俺の黒歴史シールで埋め尽くされていく。
大統領も、自衛隊も、熱狂していた信者たちも、あまりの「いたたまれなさ」に目を逸らし、現場には静寂だけが流れた。
「……マスター?」
銀狼(田中先輩)が、震える手でアイパッチを外した。
「なんか……急に冷静になりました。僕、明日も早いんで、市役所の仕事に戻りますね」
「待てよ! 田中さん! 俺を一人にしないでくれ!!」
こうして、世界滅亡の危機は去った。
予言書(俺のノート)は、「人類が二度と繰り返してはならない悲劇の記録」としてユネスコの世界記憶遺産に登録され、俺は「世界を救った救世主」ではなく、「世界で一番恥ずかしい男」として、歴史にその名を刻むことになった。
俺の物語は、まだ終わらない。
なぜなら、母ちゃんの手には、まだ「未開封のノート(高校時代のポエム)」が残っていたからだ。
「つーくん、次のも読む?」
「……勘弁してください」
俺の黒歴史は、明日も世界に配信される。[/漢字][ふりがな][/ふりがな]