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俺の黒歴史ノートが、予言書として世界に配信されている件について

#3

偽マスター遂に登場

[大文字]ー 4話 ー[/大文字]

リムジンが新宿アルタ前に停車した瞬間、何万という群衆の怒号のような歓声が、厚い防弾ガラスを突き破って響いてきた。
「マスター!」「終焉の王(ジ・エンド・マスター)を地上に!」「俺たちの魂を解放してくれ!」
自衛官たちに守られながら車外へ踏み出した俺の目に飛び込んできたのは、狂乱の光景だった。ビルの巨大スクリーンには、俺の黒歴史ノートの1ページが、まるで神の啓示のように映し出されている。
そして、そのスクリーンの真下。特設されたステージの上に、「彼」はいた。
「待たせたね、愛すべき迷える子羊(モブキャラ)たち」
スピーカーから響くその声は、俺の声と瓜二つだった。
そこに立っていたのは、俺と全く同じ顔、全く同じ体格、そして……俺が中二の時に「これこそが最強にカッコいい正装だ」と思い込んでノートの余白に描き殴った、『紅蓮の刺繍が入った非対称(アシンメトリー)な漆黒のコート』を完璧に着こなした青年だった。
「……偽物(ドッペルゲンガー)……!?」
俺が戦慄していると、ステージ上の「彼」は、冷ややかな、それでいてどこか慈愛に満ちた瞳で俺を見下ろした。
「司くん、遅いじゃないか。君が『設定』した世界だよ? 作者が不在のまま物語を終わらせるなんて、読者に対して失礼だと思わないかい?」
「ふざけるな! お前、誰だ! なんで俺の姿を……」
「僕は誰かって? 決まっているじゃないか」
偽の俺は、優雅に両手を広げ、空に浮かぶ禍々しい『第三の月』を指差した。
「僕は、君が捨てた『純粋な憧れ』の結晶さ。君が大人になる過程で『痛い』『恥ずかしい』と切り捨て、押し入れの奥に封じ込めた……君自身が望んだ、理想の姿(マスター)だよ」
その瞬間、俺の右腕の脈動が最大に達し、黒い霧が巨大な剣の形を成した。
[漢字]「さあ、始めよう。君が書いたノートの第12章――『偽りの自分と、真実の自分。世界を賭けた魂の決闘(ソウル・デュエル)』。これを完遂しない限り、この月は地上に堕ち、すべては無に帰る」
偽マスターが指を鳴らす。すると、周囲の群衆がまるで糸の切れた人形のように静まり返り、一斉に俺に向かって深々と頭を下げた。
「マスター、どうか僕を……『今の自分(恥を知る大人)』を、殺してごらんよ」
偽の俺が携えるのは、俺が当時「最強の聖剣」として設定した、厨二病の権化のようなデザインの長剣。
対する俺の手にあるのは、ただの「黒歴史の塊」である。
群衆が見守り、全世界に生中継される中、俺は人生で最大級の「羞恥(痛み)」を伴う、自分自身との戦いを強いられることになった。
[/漢字][ふりがな][/ふりがな]

[大文字]ー 5話 ー[/大文字]

[漢字]「……思い出した。まだある。まだ、お前が知らない『最深部(アビス)』が……!」
俺は膝をつき、右腕から溢れる黒い霧に耐えながら、脳内の記憶の貯蔵庫(ストレージ)を必死にかき回した。
偽マスターは余裕の笑みを浮かべ、聖剣を肩に担いでいる。
「無駄だよ、司くん。君がそのノートに書いたことは、すべて僕の力になっている。君の想像力の限界が、僕の強さなんだ」
「……いいや、お前は分かってない。俺の妄想が、常に『カッコいい設定』だけで完結してたと思うなよ」
俺の脳裏に、中学三年の冬、受験のストレスで精神が完全に崩壊していた時期に書いた、『封印された真のノート(別名:ポエム帳)』の内容がフラッシュバックした。
それは、あまりの痛々しさに自分でも数日でページを糊付けして封印した、黒歴史の中でも「劇薬」に分類されるシロモノだ。
「現れろ……! 『絶望の暗黒騎士・サトウ(時給850円)』!」
俺が叫ぶと、右腕の黒い霧が、スタイリッシュな剣ではなく、ボロボロの「コンビニのレジ袋」と「折れたビニール傘」のような形に変質していった。
「な、なんだその格好は……!? 醜い、美しくないぞ司くん!」
偽マスターが初めて動揺を見せ、顔を歪ませた。
「そうだろう、美しくないさ! これは俺が、当時好きだった女子に『司くんって、なんかコンビニの袋が似合うよね(笑)』って言われたショックで生み出した、自虐(セルフ・ディス)の化身なんだからな!」
俺はそのまま、ビニール傘状の武器を振り回して突進した。
「喰らえ! 必殺、『現実逃避(リアリティ・エスケープ)・ラッシュ)』!!」
それは、カッコいい剣技でも何でもない。ただの、中学生が自室でクッションを相手に暴れるような、見苦しくも必死な泥臭い動き。
しかし、その「あまりの格好悪さ」は、偽マスターが体現している『理想の自分』という設定の対極にあった。
「くっ、来るな! 輝かしい僕の世界に、そんな『生活感』を持ち込むな!」
偽マスターが聖剣で防ごうとするが、俺の「ビニール傘」は、物理法則ではなく「自己嫌悪の深さ」で強度を増している。
「お前は俺の理想かもしれないが、俺の『惨めさ』まではコピーできてないんだよ! 俺の黒歴史は、カッコいいポエムだけじゃない……! 誰にも言えない、深夜のポテチ完食後の虚無感や、鏡を見て泣いた夜の記憶も全部、俺の歴史なんだ!!」
俺の叫びに呼応するように、新宿の空に浮かぶ「第三の月」が、ヒビ割れ始めた。
そのヒビからは、禍々しい紫の光ではなく、「安っぽい茶の間の蛍光灯」のような、あまりにも日常的な光が漏れ出している。
「やめろ……消える、僕の『完璧なシナリオ』が……!」
偽マスターの漆黒のコートが、徐々にヨレヨレのジャージへと変化していく。
俺は最後の一撃を叩き込むべく、もっとも深い、もっとも痛い記憶を呼び覚ました。
「これで終わりだ! 秘奥義――『お母さんに音読されたラブレター(未投函)』!!」
「それだけはやめてええええええ!!」
偽マスターの絶叫が、新宿のビル群に木霊した。[/漢字][ふりがな][/ふりがな]

作者メッセージ

えぇもう僕ストーリー訳解んないや。って言う状況です。こんにちわ。

2026/02/14 20:34

ゆっくりると
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