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偽マスの消されたあとの物語。

#31

30話

「……少し、自分に酔いすぎたようだな。少年」
るとは影の中から実体化し、最凶の神を宿して暴走する勇者の背後に、音もなく降り立った。
勇者——いや、虚無の戦鬼(アレス・カオス)の依代となった少年が、禍々しい黒炎を纏って振り返る。その瞳に理性はなく、ただ万物を破壊せんとする殺意のみが渦巻いていた。
「ガ……ァアアアッ!!」
勇者の右腕、次元を削り取る漆黒の爪が、るとの喉笛を狙って振り下ろされる。だが、るとは避けない。
『事象再現(リプレイ):絶対命令(オーソリティ)』
るとが指をパチンと鳴らす。その瞬間、勇者の魂の深淵に埋め込まれていた『暴食』の種子が爆ぜた。アレスと闇神を繋ぎ止めている「核」を、るとが直接掌握(グリップ)する。
「お前を創ったのは誰だ? その力を与え、その神を喰らわせたのは誰だ? ……思い出せ。お前の魂の『所有者』を」
「ガ……ア、ガハッ……!?」
勇者の動きがピタリと止まる。脳内に強制的に流れ込むのは、師匠として過ごした日々、そして絶望の淵で自分を導いた(と思い込まされている)るとの圧倒的な支配の記憶。
暴走していた神の力が急速に収束し、勇者はるとの前に力なく膝を突いた。
「……し、しょう……。俺、は……」
「そうだ。お前は俺の最高傑作だ。……なら、その『初陣』に相応しい仕事を与えてやる」
るとは遠く、地平線の彼方にそびえ立つ魔王城(自らが創造した舞台)を指差した。
「あそこにある、俺が創り出した偽物の『絶望』を、その力で粉々に砕いてこい。お前が真の英雄として世界に認められるための、最初で最後の供物だ」
「……はい、師匠。あなたの、仰せのままに」
勇者は虚ろな瞳で立ち上がり、一歩踏み出す。その背中からは、リヴァイアサン、フェニックス、アレス、そして闇神の権能が混ざり合った、この世で最も美しい死の翼が広がった。
数秒後、遠方の空が爆ぜた。
るとが心血を注いで構築した魔王城が、勇者の一撃によって次元ごと消滅し、空には偽りの平和を告げる蒼い炎が舞い散る。
王都の民衆は、魔王が討たれた光景に歓喜の声を上げる。
だが、その光景を玉座の側で見守るアイリスだけは、絶望に震えていた。魔王を倒した英雄すら、目の前の男の「飼い犬」に過ぎないのだと理解したからだ。
「さて、これで『魔王』はいなくなった。……次は、どんな『新しい遊び』を世界に提供してやろうか?」

2026/02/15 13:52

ゆっくりると
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