死体の蝶
#1
壱話【花車】
[明朝体]氷点下三℃、日本の中でも特に寒い場所に位置する雪蝶村、僕はここに旅行に来ていた。正しく言えば、目的地の通り道にある村に寄り道したのだ。
なんせ一人旅、僕がどうしようがそれを咎める人間はいない。どうせ何もない身だ、好き勝手やろう。
僕は唐木裕太。親はいない、友達もいない、22歳。大学にも行っていない。文字通り何もない。必死にバイトして、最期の旅に来たのだ。
旅を決めた理由は単純だった。死のうと包丁を喉に近づけた時、ふと思ったのだ。両親に持っていく話がないと。友だちもできたことないし、大切な人もいない、あと恋人もいない。じゃあせめて、なにか手向ける話を作ろう。そう思ってこの旅行を計画したのだ。
雪蝶村につく。昔さながらの家が立ち並んでいる。なんだか過去にタイムリープしたみたいだな。そんなことをぼやきながら車を近くに泊め、村に足を踏み入れる。
すると、近くにいたおばあさんが僕に話しかけてきた
「あら、外から来た方かしら?」
「ああ、はい。旅行に来て、なんとなくここが気になりまして」
そんな曖昧な返答をした僕に、怪訝な顔一つせずおばあさんは言った。
「あらあらまあまあ、泊まる場所は決まってるの?」
「いえ、それが決めてなくて」
そう言うとおばあさんの顔がぱあっと輝いた。
「それならうちに泊まるといいわ! うちはもともと宿屋なのよ〜」
「え? いいんですか?」
「ええ! 私夫に先立たれてからずっと一人でね、寂しかったのよ」
「ぜひ泊まってちょうだい!」
「ではお言葉に甘えて……」
この優しさも、家族に話そう。家族の性格とか知らないから、喜ぶかどうかはわからないけど。でもこの優しさは純粋に、とても嬉しい。
「そうだ、観光に来たのよね? 良ければ案内しましょうか?」
「いいんですか?」
「観光客なんてめったにこないもの、行きましょう」
おばあさんに連れられるままに色んなところを周った。肉屋、野菜屋など色んなところを紹介してくれた。その行く先々のお店の方々が温かく歓迎してくれるので、これまた胸が少し暖かくなった。その代わり両手には野菜が入った袋とお肉の入った袋を抱える羽目になったが。まあ幸せの代わりと考えれば安いものだろう。
「あら? 雪華ちゃん」
「せつかちゃん?」
「ええ、うちの村の中でも絶世の美女でね、村の皆から大人気なの」
「ほら、あっちで舞を踊ってる子よ」
そうおばあさんが指を指す方を向く。その瞬間、彼女と目があった。息が一瞬止まった。
「綺麗……」
「じゃあ、裕太くん私は寒いから家に入るけど、裕太くんは? 雪華ちゃんの舞見ていく?」
「は、はい」
僕がそう答えるとおばあさんは僕の野菜と肉を抱えて家に入っていった。
僕は駆け足気味で彼女の舞の近くに行く。彼女の周りにはたくさんの人がいて、僕もそれに入って彼女の美しさに見とれていた。
透き通るような白い肌、艶のある黒髪、吸い込まれそうな青色の目、鼻筋の通った鼻、慎ましい唇。
「美しい……」
また彼女と目が合う。彼女はにこりと微笑んでくれた。
好きだ、彼女が。
生きる意味なんてないと思っていた。
でも今できた
[太字]彼女が僕の生きる意味だ。[/太字][/明朝体]
なんせ一人旅、僕がどうしようがそれを咎める人間はいない。どうせ何もない身だ、好き勝手やろう。
僕は唐木裕太。親はいない、友達もいない、22歳。大学にも行っていない。文字通り何もない。必死にバイトして、最期の旅に来たのだ。
旅を決めた理由は単純だった。死のうと包丁を喉に近づけた時、ふと思ったのだ。両親に持っていく話がないと。友だちもできたことないし、大切な人もいない、あと恋人もいない。じゃあせめて、なにか手向ける話を作ろう。そう思ってこの旅行を計画したのだ。
雪蝶村につく。昔さながらの家が立ち並んでいる。なんだか過去にタイムリープしたみたいだな。そんなことをぼやきながら車を近くに泊め、村に足を踏み入れる。
すると、近くにいたおばあさんが僕に話しかけてきた
「あら、外から来た方かしら?」
「ああ、はい。旅行に来て、なんとなくここが気になりまして」
そんな曖昧な返答をした僕に、怪訝な顔一つせずおばあさんは言った。
「あらあらまあまあ、泊まる場所は決まってるの?」
「いえ、それが決めてなくて」
そう言うとおばあさんの顔がぱあっと輝いた。
「それならうちに泊まるといいわ! うちはもともと宿屋なのよ〜」
「え? いいんですか?」
「ええ! 私夫に先立たれてからずっと一人でね、寂しかったのよ」
「ぜひ泊まってちょうだい!」
「ではお言葉に甘えて……」
この優しさも、家族に話そう。家族の性格とか知らないから、喜ぶかどうかはわからないけど。でもこの優しさは純粋に、とても嬉しい。
「そうだ、観光に来たのよね? 良ければ案内しましょうか?」
「いいんですか?」
「観光客なんてめったにこないもの、行きましょう」
おばあさんに連れられるままに色んなところを周った。肉屋、野菜屋など色んなところを紹介してくれた。その行く先々のお店の方々が温かく歓迎してくれるので、これまた胸が少し暖かくなった。その代わり両手には野菜が入った袋とお肉の入った袋を抱える羽目になったが。まあ幸せの代わりと考えれば安いものだろう。
「あら? 雪華ちゃん」
「せつかちゃん?」
「ええ、うちの村の中でも絶世の美女でね、村の皆から大人気なの」
「ほら、あっちで舞を踊ってる子よ」
そうおばあさんが指を指す方を向く。その瞬間、彼女と目があった。息が一瞬止まった。
「綺麗……」
「じゃあ、裕太くん私は寒いから家に入るけど、裕太くんは? 雪華ちゃんの舞見ていく?」
「は、はい」
僕がそう答えるとおばあさんは僕の野菜と肉を抱えて家に入っていった。
僕は駆け足気味で彼女の舞の近くに行く。彼女の周りにはたくさんの人がいて、僕もそれに入って彼女の美しさに見とれていた。
透き通るような白い肌、艶のある黒髪、吸い込まれそうな青色の目、鼻筋の通った鼻、慎ましい唇。
「美しい……」
また彼女と目が合う。彼女はにこりと微笑んでくれた。
好きだ、彼女が。
生きる意味なんてないと思っていた。
でも今できた
[太字]彼女が僕の生きる意味だ。[/太字][/明朝体]