「つかれたぁー…」
お馴染みの学校のチャイムの音と共に昇降口にに駆け込むと、やっと大きく息を吐いた。あの後、自室に帰った時にはもう既に1限目も後半に差し掛かっている時間で、カノンを置いて大急ぎで走ってきたのだ。
「ははっ、センパイちっこくー?」
昇降口の奥で野次を飛ばしてきたのは、一年後輩の如月遥だった。やや内巻きのセミロングで、両目を隠している。口調も相まって、飄々とした雰囲気を感じさせる。
「もう、こういう時だけ先輩呼びして……。」
「じゃあ[漢字]千煌[/漢字][ふりがな]ちあき[/ふりがな]んとでも呼んで欲しいんですか?うん?」
へらへらと冗談を言う遥は、全く何を考えているのかよめない。
「意地悪言わないのー。でも[漢字]千煌[/漢字][ふりがな]ちあき[/ふりがな]んって結構可愛くない?」
「じゃあ[漢字]煌[/漢字][ふりがな]あき[/ふりがな]ピとか」
「それはちょっと嫌だなー」
軽口を言い合いながら上履きを履いて遥の元へ歩く。
「そういえば、遥はどうしてここに?」
「移動教室だヨ、ですヨ〜。2限美術なので」
それだけ言うと、「ではでは〜」と美術室駆けていく。こういう時、事情を深く聞かないのが遥のいいところだろう。重みがないというか、一緒にいて気楽だ。もし聞かれていたら、口が裂けても魔法少女になったなんていえない。そんなこと言った暁には気が狂っている人だと思われかねない。「いい後輩を持ってるノンね」うん、全く同意────…ん?
(何か今、リュックサックから声がしなかったか?)
とてつもなく嫌な予感がする。リュックサックのファスナーを恐る恐る開けると、見慣れた白いもふもふがいた。
「[大文字]カノン!!!!????[/大文字]」
「わっ、いきなり叫んでどうしたノン!?」
きょとんと目を丸くして、リュックサックの中から自分を見上げるカノン。いやいや、そんな可愛い顔しても誤魔化されない。
「[小文字]ど、どどどどうしてここに…?留守番してたはずじゃ…[/小文字]」
最初は叫んでしまったが、カノンの姿を見せるわけにはいかないので、小声でカノンに話しかける。
「えへへ。やっぱり1妖精としては、魔法少女と仲を深めておくことが大事なんじゃないかなあって。それで…」
「…それで?」
「まずは千煌の学校生活を見学にしにきたノン!」
[大文字]馬鹿あああああああ!!!!!!!!![/大文字]…と叫びそうになるのを、喉にグッと力を入れて堪える。駄目だ、あと1分で二限が始まってしまう。
(ええい、ままよ!)
今日はカノンを隠しながら生活するしかない。吹っ切れてリュックを抱き抱えると、自分の教室に向かって全速力でダッシュしていった────。
[中央寄せ]꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°[/中央寄せ]
空は、少し紅に染まっていた。夕日が射す教室で、自分は何をしていたかというと────自分の机に項垂れていた。
原因は言わずもがな隣で心配そうに見つめている精霊。朝の出来事といい、自分で原因をつくっておいて心配するだなんて、酷いマッチポンプだ。
例えば二限の理科。理科室だったので教室に置いてきたが、それが間違いだった。自分の後をついて理科準備室に潜入していたようで、それを目撃したクラスメイトがいたことで心霊やら怪異やらという騒ぎになっていた(苦笑いをすることしかできなかった)。例えば三限の音楽。家と理科室で学んだことは、カノンの目を離してはいけないということ。三度目の正直、人は学ぶ。ということで音楽室の机に隠していたら、なんと歌い始めたのだ(その後、自分がカノンほどの高い声を出して誤魔化した。ものすごく恥ずかしかった)。
その後の教科も山あり谷ありで常に警戒しておかねばならず。一日中精神を疲弊させて、放課後にこの有様だ。なんという災難。アーメン・・・。
「あのね千煌。疲れてるところ悪いんだけど、話したいことがあるノン」
「んんー・・・何?」
「千煌は魔法少女になったばかりだから、知識が少ないノン。だから、魔法都市にいってみてほしいノン」
「魔法都市ぃ?」
またまた知らない単語が出てきて、煮え切らない感じでカノンの言葉を繰り返す。
「魔法少女のための都市ノン!魔法局だってある。きっと知識が深まると思うノン。でも、ボクは明日の土曜日、少し用事があるノン」
「用事?だったら、どうやってその魔法都市とやらを回るのよ」
「それは手をうってあるノン!それは・・・」
その時、朝聞いたけたたましい警報が鳴り響いた。ルイン出現の合図だ。
「場所は・・・この学校の校庭ノン!仮想世界に行くノン!」
「わかった────『[漢字]転送[/漢字][ふりがな]トランス[/ふりがな]』」
[中央寄せ]꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°[/中央寄せ]
仮想世界の校庭へ行くと、朝のルインよりと同等か、それ以上の大きさをしたルインが雄叫びを上げていた。それは決して、威厳だとか、自分に対する威嚇とかではない。────[漢字]苦しんでいるのだ[/漢字][ふりがな]、、、、、、、、[/ふりがな]。見るからに強そうなルインが、頭を抱えて苦しんでいる。その状況にカノンと唖然としていると、キラキラとしたオーラと共に消滅し、ルインの影に隠れていた少女の姿を捉えた。
「あれ?奇遇だね」
その少女は桃色のポニーテールに、青空を写したかのような瞳をしていた。コスチュームは自分や楓華のものよりもメイドっぽい、ピンク色のワンピースだ。
「私は魔法少女マイカこと[漢字]清華真霊[/漢字][ふりがな]せいがまれい[/ふりがな]。カノンに頼まれて、明日魔法都市の案内をする魔法少女だよー!」
真霊と名乗る少女は、よろしくね、と笑顔で明るく挨拶をした。
一難去ってまた一難。今日は一難どころか十難、百難だらけの日だったが、魔法少女になった時点で、明日からもそんな日は続くのかもしれない。そもそも、こんな世界を生きている時点で難は逃れれないのかもしれない────。
お馴染みの学校のチャイムの音と共に昇降口にに駆け込むと、やっと大きく息を吐いた。あの後、自室に帰った時にはもう既に1限目も後半に差し掛かっている時間で、カノンを置いて大急ぎで走ってきたのだ。
「ははっ、センパイちっこくー?」
昇降口の奥で野次を飛ばしてきたのは、一年後輩の如月遥だった。やや内巻きのセミロングで、両目を隠している。口調も相まって、飄々とした雰囲気を感じさせる。
「もう、こういう時だけ先輩呼びして……。」
「じゃあ[漢字]千煌[/漢字][ふりがな]ちあき[/ふりがな]んとでも呼んで欲しいんですか?うん?」
へらへらと冗談を言う遥は、全く何を考えているのかよめない。
「意地悪言わないのー。でも[漢字]千煌[/漢字][ふりがな]ちあき[/ふりがな]んって結構可愛くない?」
「じゃあ[漢字]煌[/漢字][ふりがな]あき[/ふりがな]ピとか」
「それはちょっと嫌だなー」
軽口を言い合いながら上履きを履いて遥の元へ歩く。
「そういえば、遥はどうしてここに?」
「移動教室だヨ、ですヨ〜。2限美術なので」
それだけ言うと、「ではでは〜」と美術室駆けていく。こういう時、事情を深く聞かないのが遥のいいところだろう。重みがないというか、一緒にいて気楽だ。もし聞かれていたら、口が裂けても魔法少女になったなんていえない。そんなこと言った暁には気が狂っている人だと思われかねない。「いい後輩を持ってるノンね」うん、全く同意────…ん?
(何か今、リュックサックから声がしなかったか?)
とてつもなく嫌な予感がする。リュックサックのファスナーを恐る恐る開けると、見慣れた白いもふもふがいた。
「[大文字]カノン!!!!????[/大文字]」
「わっ、いきなり叫んでどうしたノン!?」
きょとんと目を丸くして、リュックサックの中から自分を見上げるカノン。いやいや、そんな可愛い顔しても誤魔化されない。
「[小文字]ど、どどどどうしてここに…?留守番してたはずじゃ…[/小文字]」
最初は叫んでしまったが、カノンの姿を見せるわけにはいかないので、小声でカノンに話しかける。
「えへへ。やっぱり1妖精としては、魔法少女と仲を深めておくことが大事なんじゃないかなあって。それで…」
「…それで?」
「まずは千煌の学校生活を見学にしにきたノン!」
[大文字]馬鹿あああああああ!!!!!!!!![/大文字]…と叫びそうになるのを、喉にグッと力を入れて堪える。駄目だ、あと1分で二限が始まってしまう。
(ええい、ままよ!)
今日はカノンを隠しながら生活するしかない。吹っ切れてリュックを抱き抱えると、自分の教室に向かって全速力でダッシュしていった────。
[中央寄せ]꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°[/中央寄せ]
空は、少し紅に染まっていた。夕日が射す教室で、自分は何をしていたかというと────自分の机に項垂れていた。
原因は言わずもがな隣で心配そうに見つめている精霊。朝の出来事といい、自分で原因をつくっておいて心配するだなんて、酷いマッチポンプだ。
例えば二限の理科。理科室だったので教室に置いてきたが、それが間違いだった。自分の後をついて理科準備室に潜入していたようで、それを目撃したクラスメイトがいたことで心霊やら怪異やらという騒ぎになっていた(苦笑いをすることしかできなかった)。例えば三限の音楽。家と理科室で学んだことは、カノンの目を離してはいけないということ。三度目の正直、人は学ぶ。ということで音楽室の机に隠していたら、なんと歌い始めたのだ(その後、自分がカノンほどの高い声を出して誤魔化した。ものすごく恥ずかしかった)。
その後の教科も山あり谷ありで常に警戒しておかねばならず。一日中精神を疲弊させて、放課後にこの有様だ。なんという災難。アーメン・・・。
「あのね千煌。疲れてるところ悪いんだけど、話したいことがあるノン」
「んんー・・・何?」
「千煌は魔法少女になったばかりだから、知識が少ないノン。だから、魔法都市にいってみてほしいノン」
「魔法都市ぃ?」
またまた知らない単語が出てきて、煮え切らない感じでカノンの言葉を繰り返す。
「魔法少女のための都市ノン!魔法局だってある。きっと知識が深まると思うノン。でも、ボクは明日の土曜日、少し用事があるノン」
「用事?だったら、どうやってその魔法都市とやらを回るのよ」
「それは手をうってあるノン!それは・・・」
その時、朝聞いたけたたましい警報が鳴り響いた。ルイン出現の合図だ。
「場所は・・・この学校の校庭ノン!仮想世界に行くノン!」
「わかった────『[漢字]転送[/漢字][ふりがな]トランス[/ふりがな]』」
[中央寄せ]꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°[/中央寄せ]
仮想世界の校庭へ行くと、朝のルインよりと同等か、それ以上の大きさをしたルインが雄叫びを上げていた。それは決して、威厳だとか、自分に対する威嚇とかではない。────[漢字]苦しんでいるのだ[/漢字][ふりがな]、、、、、、、、[/ふりがな]。見るからに強そうなルインが、頭を抱えて苦しんでいる。その状況にカノンと唖然としていると、キラキラとしたオーラと共に消滅し、ルインの影に隠れていた少女の姿を捉えた。
「あれ?奇遇だね」
その少女は桃色のポニーテールに、青空を写したかのような瞳をしていた。コスチュームは自分や楓華のものよりもメイドっぽい、ピンク色のワンピースだ。
「私は魔法少女マイカこと[漢字]清華真霊[/漢字][ふりがな]せいがまれい[/ふりがな]。カノンに頼まれて、明日魔法都市の案内をする魔法少女だよー!」
真霊と名乗る少女は、よろしくね、と笑顔で明るく挨拶をした。
一難去ってまた一難。今日は一難どころか十難、百難だらけの日だったが、魔法少女になった時点で、明日からもそんな日は続くのかもしれない。そもそも、こんな世界を生きている時点で難は逃れれないのかもしれない────。