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「あ、お疲れ様です」
「おぉ、お疲れ様」
友達でも親友でもなければ、恋人でもない。
ただ、いつも仕事が一区切りしたあと、自販機に飲み物を買いに来て、ベンチに座って一緒に話すだけの仲だ。
ある春の日、同僚たちは次々と帰っていき、残ったのはもう自分一人だけ。
喉も乾いていて、流石に一度外に出るか、と思い、外にある自販機に行った夜のことだった。
「お疲れ様です」
そこのベンチには一人の同じ年齢くらいの男性が座っていた。
「お疲れ様です」
休憩ですか?と声をかけると、彼は「まぁそんなところです」と、小さな笑顔を浮かべながら答えた。
その日からよくその場所に行って、仕事の愚痴や昔のこと、ただの世間話を話すようになった私たちは別に電話番号を交換することもなく、ただの話し相手だった。
ある日の夜、いつも通り自販機へと行くと、彼はおらず、いつも自分が飲んでいる缶コーヒーもなかった。
「ついてないな…」
そう呟いて戻ろうとすると、目の前に彼がいた。そしてその手には私がいつも飲んでいる缶コーヒーが二つ。
「あ、これですよね!」
「…はい!どうして…?」
「さっき売り切れって出てて、いつも飲んでるよなぁって思って。向こうの自販機行って、買ってきました」
そうニコニコとした満面の笑みで答えた彼は、「どうぞ」と言って缶コーヒーの結露をハンカチで拭いてから、私にその缶コーヒーを渡した。
どことなく気まずくて、ベンチに座ったまま夜空を眺めていた時。
「あの…」
「はい、」
彼は少し緊張したような面持ちのまま、最初は蚊の鳴くような声で、でも次はちゃんと聞こえる声でこういった。
「電話番号、LINEでもいいです。交換してください…!」
まるで告白のようにいう彼が面白かった私は、ふと笑みをこぼしながら、「もちろんです」と答えた。
「でも名前から…ですよね」
そう真剣な顔でいう彼に私は名前を教えた。
「◆◆です」
「◆◆さん…。あ、僕は◇◇です。」
「これからもよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」