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足音が、近づいてくる。凜華が柱にロープを回そうとした、その瞬間。
「――おい!」
低く、少し掠れた声が闇を切った。
凜華の肩がびくりと跳ねる。指先から力が抜け、ロープが柱を叩いて落ちた。
「……誰」
喉がひりつく。振り返るのが怖い。でも振り返らない方が、もっと怖かった。
街灯の薄い光の下に、制服姿の少年が立っている。ポケットに手を突っ込んだまま、息を少し切らしている。鋭く、青い2つの目がこちらを真っ直ぐ見ていた。
[水平線]
譜束は、状況を一瞬で理解したわけじゃない。
ただ、倒れたドラム缶、海際の柱、地面に落ちたロープ、そして膝から血を流している少女。
それだけで、胸の奥が嫌な音を立てた。
「……一体何を」
問いというより、確認だった。
凜華は笑おうとした。でも、唇が震えてうまくいかない。
「見て分からない?」
かすれた声が、夜に溶ける。
「邪魔しないで。もう、すぐ終わるから」
譜束の眉が、わずかに寄る。
「終わるって」
一歩、前に出る。
「それ、そっちの“終わり”だろ」
凜華の胸が、ぎゅっと縮んだ。
「……だから何。終わった方がいいんだよ。全部痛いし、苦しいし、誰も分かってくれないし」
「生きてる意味なんて、ない」
言葉が、堰を切ったように溢れ出る。止めようと思っていなかった。
どうせこの人とも、すぐにさよならなんだから。
譜束は黙ったまま、さらに一歩近づいた。夜明け前の港で、二人の距離は数メートルしかない。
「意味がないならさ」
ぽつりと、落とすように言う。
「今ここで死ぬ意味も、別にないだろ」
凜華が睨む。
「……綺麗事?」
「違う」
譜束は首を振った。
「まあ俺もさ、意味なんて分からんよ。学校も家も、息苦しくて。このまま同調圧力に合わせて適当に生きて終わりなんだろうなって思ってる」
一瞬、視線を外す。
海面に揺れる街灯の光が、彼の目に映った。
「でも。分かんねーまま終わらせるの、なんかムカつく」
凜華の指先が、わずかに動いた。
「……あなたに、何が分かるの」
「だから分からん」
即答だった。
譜束は、手を伸ばさない。ただ、そこに立っている。
「とりあえずさ」
一呼吸置いて、静かに言った。
「そのロープ、置こう。夜が明けるまででいいから」
凜華の視界が、滲む。朝なんて、来なくていいと思ってた。でも“夜が明けるまで”という言葉が、なぜか胸に引っかかった。
遠くで、カモメが鳴いた。空の色が、ほんの少しだけ薄くなる。
ロープが、凜華の手から滑り落ちる。音を立てず、地面に横たわった。
凜華はしばらく黙っていた。足元のロープでも、海でもなく、譜束の靴先を見つめたまま。
「……ねえ」
小さく、でも逃げない声。
「手伝えって言ったらさ」
一拍、喉を鳴らして。
「……手伝って、くれる?」
その言葉だけが、夜明け前の港に落ちた。譜束は少し黙ってから、肩をすくめた。
「手伝えって…内容ぐらい言え?」
「――おい!」
低く、少し掠れた声が闇を切った。
凜華の肩がびくりと跳ねる。指先から力が抜け、ロープが柱を叩いて落ちた。
「……誰」
喉がひりつく。振り返るのが怖い。でも振り返らない方が、もっと怖かった。
街灯の薄い光の下に、制服姿の少年が立っている。ポケットに手を突っ込んだまま、息を少し切らしている。鋭く、青い2つの目がこちらを真っ直ぐ見ていた。
[水平線]
譜束は、状況を一瞬で理解したわけじゃない。
ただ、倒れたドラム缶、海際の柱、地面に落ちたロープ、そして膝から血を流している少女。
それだけで、胸の奥が嫌な音を立てた。
「……一体何を」
問いというより、確認だった。
凜華は笑おうとした。でも、唇が震えてうまくいかない。
「見て分からない?」
かすれた声が、夜に溶ける。
「邪魔しないで。もう、すぐ終わるから」
譜束の眉が、わずかに寄る。
「終わるって」
一歩、前に出る。
「それ、そっちの“終わり”だろ」
凜華の胸が、ぎゅっと縮んだ。
「……だから何。終わった方がいいんだよ。全部痛いし、苦しいし、誰も分かってくれないし」
「生きてる意味なんて、ない」
言葉が、堰を切ったように溢れ出る。止めようと思っていなかった。
どうせこの人とも、すぐにさよならなんだから。
譜束は黙ったまま、さらに一歩近づいた。夜明け前の港で、二人の距離は数メートルしかない。
「意味がないならさ」
ぽつりと、落とすように言う。
「今ここで死ぬ意味も、別にないだろ」
凜華が睨む。
「……綺麗事?」
「違う」
譜束は首を振った。
「まあ俺もさ、意味なんて分からんよ。学校も家も、息苦しくて。このまま同調圧力に合わせて適当に生きて終わりなんだろうなって思ってる」
一瞬、視線を外す。
海面に揺れる街灯の光が、彼の目に映った。
「でも。分かんねーまま終わらせるの、なんかムカつく」
凜華の指先が、わずかに動いた。
「……あなたに、何が分かるの」
「だから分からん」
即答だった。
譜束は、手を伸ばさない。ただ、そこに立っている。
「とりあえずさ」
一呼吸置いて、静かに言った。
「そのロープ、置こう。夜が明けるまででいいから」
凜華の視界が、滲む。朝なんて、来なくていいと思ってた。でも“夜が明けるまで”という言葉が、なぜか胸に引っかかった。
遠くで、カモメが鳴いた。空の色が、ほんの少しだけ薄くなる。
ロープが、凜華の手から滑り落ちる。音を立てず、地面に横たわった。
凜華はしばらく黙っていた。足元のロープでも、海でもなく、譜束の靴先を見つめたまま。
「……ねえ」
小さく、でも逃げない声。
「手伝えって言ったらさ」
一拍、喉を鳴らして。
「……手伝って、くれる?」
その言葉だけが、夜明け前の港に落ちた。譜束は少し黙ってから、肩をすくめた。
「手伝えって…内容ぐらい言え?」