「……あ、あはは! あははははははッ!!」
要塞アイゼンの最上階に、正気を失った高笑いが響き渡った。
アバリシア。かつて優雅に糸を操っていた「支配者」の姿は、もうそこにはない。
ラカスが暴いた指先の綻びから、制御を失った数万本の糸が逆流し、彼女自身の白く細い手足に食い込んでいた。
「私の糸が……私の完璧な世界が、こんなゴミ共に汚されるなんて……! だったら、全部、全部いらないわッ!!」
ミリ、ミリ……と、彼女の肉体が自らの糸で切り刻まれ、鮮血が舞う。
しかし、アバリシアはその激痛を快楽に変えるように、血塗れの顔を吊り上げた。
「お姉様……見てる? あなたが守りたかったこの子も、あの男の子も、鉄屑の妖精も……私の『命』を燃料にして、この要塞ごと消してあげる!!」
彼女の心臓部――魔導核が、どす黒い光を放ち、脈打ち始めた。
要塞の全エネルギーを逆流させ、自らを爆弾に変える禁忌の自爆術。
「……あいつ、正気じゃないわ! 死ぬ気よ!」
ニナが叫び、ラカスは倒れたコジャールを庇うように盾となる。
「……アバリシア……もう、やめて……!」
デスディチャが、一歩、また一歩と、崩壊を始めたアバリシアへと歩み寄る。
「来なさい、不幸な女の子! 一緒に地獄へ行きましょう! そこで永遠に、私の操り人形にしてあげるから!!」
アバリシアを中心に、世界が歪むほどの魔力が膨れ上がる。
爆発まで、あと数秒。
デスディチャは、逃げなかった。彼女は静かに、自分の胸に手を当てた。
「……わたしの熱は、だれかを守るためにあるって……みんなが教えてくれた」
デスディチャの紅い髪が、白銀の光を帯びて輝き出す。
ペテンテに与えられた「破壊」でも、アバリシアに利用された「絶望」でもない。
それは、三年間の孤独を越え、再会した仲間たちの想いを束ねた、「命の温度」。
「アバリシア……さようなら。……あなたの『強欲』、わたしが全部、焼き切ってあげる」
第一部完結・最終奥義:『慈愛の白夜(テルヌーラ・ノヴァ)』
デスディチャがアバリシアを抱きしめた瞬間、要塞全体を包み込むような、温かくて眩しい光が溢れ出した。
[水平線]
爆発は起きなかった。
アバリシアの自爆エネルギーは、デスディチャの「包み込むような熱」によって、ただの光の粒子へと分解され、アイゼンの空へと霧散していった。
崩れ落ちる要塞の跡地。
そこには、糸から解放され、ただの抜け殻のようになったアバリシアを抱くデスディチャと、ボロボロになりながらも生き残った仲間たちの姿があった。
「……終わったんだね」
ラカスが、空を見上げて呟く。
「……フン、当然よ。私のボディを修理する費用、後でたっぷり請求してやるんだから」
ニナが、照れ隠しに悪態をつく。
そして、デスディチャの腕の中で目を覚ましたコジャールが、妹の青ざめた顔を悲しげに見つめ、それからデスディチャを見て、優しく微笑んだ。
「……おかえり、デスディチャ。……いいえ、今のあなたは……最高の、自分自身ね」
朝日が昇る。
50℃の熱に苦しんでいた少女は、もういない。
そこには、仲間と共に「本当の温もり」を求めて歩き出す、一人の女性の姿があった。
【第二部:不幸と強欲の連鎖・完】
要塞アイゼンの最上階に、正気を失った高笑いが響き渡った。
アバリシア。かつて優雅に糸を操っていた「支配者」の姿は、もうそこにはない。
ラカスが暴いた指先の綻びから、制御を失った数万本の糸が逆流し、彼女自身の白く細い手足に食い込んでいた。
「私の糸が……私の完璧な世界が、こんなゴミ共に汚されるなんて……! だったら、全部、全部いらないわッ!!」
ミリ、ミリ……と、彼女の肉体が自らの糸で切り刻まれ、鮮血が舞う。
しかし、アバリシアはその激痛を快楽に変えるように、血塗れの顔を吊り上げた。
「お姉様……見てる? あなたが守りたかったこの子も、あの男の子も、鉄屑の妖精も……私の『命』を燃料にして、この要塞ごと消してあげる!!」
彼女の心臓部――魔導核が、どす黒い光を放ち、脈打ち始めた。
要塞の全エネルギーを逆流させ、自らを爆弾に変える禁忌の自爆術。
「……あいつ、正気じゃないわ! 死ぬ気よ!」
ニナが叫び、ラカスは倒れたコジャールを庇うように盾となる。
「……アバリシア……もう、やめて……!」
デスディチャが、一歩、また一歩と、崩壊を始めたアバリシアへと歩み寄る。
「来なさい、不幸な女の子! 一緒に地獄へ行きましょう! そこで永遠に、私の操り人形にしてあげるから!!」
アバリシアを中心に、世界が歪むほどの魔力が膨れ上がる。
爆発まで、あと数秒。
デスディチャは、逃げなかった。彼女は静かに、自分の胸に手を当てた。
「……わたしの熱は、だれかを守るためにあるって……みんなが教えてくれた」
デスディチャの紅い髪が、白銀の光を帯びて輝き出す。
ペテンテに与えられた「破壊」でも、アバリシアに利用された「絶望」でもない。
それは、三年間の孤独を越え、再会した仲間たちの想いを束ねた、「命の温度」。
「アバリシア……さようなら。……あなたの『強欲』、わたしが全部、焼き切ってあげる」
第一部完結・最終奥義:『慈愛の白夜(テルヌーラ・ノヴァ)』
デスディチャがアバリシアを抱きしめた瞬間、要塞全体を包み込むような、温かくて眩しい光が溢れ出した。
[水平線]
爆発は起きなかった。
アバリシアの自爆エネルギーは、デスディチャの「包み込むような熱」によって、ただの光の粒子へと分解され、アイゼンの空へと霧散していった。
崩れ落ちる要塞の跡地。
そこには、糸から解放され、ただの抜け殻のようになったアバリシアを抱くデスディチャと、ボロボロになりながらも生き残った仲間たちの姿があった。
「……終わったんだね」
ラカスが、空を見上げて呟く。
「……フン、当然よ。私のボディを修理する費用、後でたっぷり請求してやるんだから」
ニナが、照れ隠しに悪態をつく。
そして、デスディチャの腕の中で目を覚ましたコジャールが、妹の青ざめた顔を悲しげに見つめ、それからデスディチャを見て、優しく微笑んだ。
「……おかえり、デスディチャ。……いいえ、今のあなたは……最高の、自分自身ね」
朝日が昇る。
50℃の熱に苦しんでいた少女は、もういない。
そこには、仲間と共に「本当の温もり」を求めて歩き出す、一人の女性の姿があった。
【第二部:不幸と強欲の連鎖・完】
- 1.#1熱砂の咆哮
- 2.#2無機質(前編)
- 3.#2無機質(後編)
- 4.#3遺跡(前編)
- 5.#3遺跡(中編)
- 6.#3遺跡(後編)
- 7.#4冰の中の「お姫様」(前編)
- 8.#4冰の中の「お姫様」(後編)
- 9.#5水色の嘘(前編)
- 10.#5水色の嘘(中編)
- 11.#5水色の嘘(後編)
- 12.#6凍てつく事実
- 13.#7毒の滴り(前編)
- 14.#7毒の滴り(中編)
- 15.#7毒の滴り(後編)
- 16.#8崩壊の聖域
- 17.#9再会
- 18.#10再起の咆哮(前編)
- 19.#10再起の咆哮(中編)
- 20.#10再起の咆哮(後編)
- 21.#11不完全生命体(前編)
- 22.#11不完全生命体(中編)
- 23.#11不完全生命体(後編)
- 24.#12血眼
- 25.#13道化師と強欲
- 26.#14冰の劣等生(前編)
- 27.#14冰の劣等生(中編)
- 28.#14冰の劣等生(後編)
- 29.#15強欲の残滓
- 30.エピローグ