「……不愉快。ゴミ共が寄り集まって、私の糸を汚すなんて」
アバリシアの桃色の髪が、怒りの魔力で逆立つ。
彼女の背後からは、要塞『アイゼン』の全エネルギーを供給された数万本の『断罪の糸』が、毒蛇のように蠢いていた。一本一本が鋼鉄を切り裂き、魔力を吸い取る死のライン。
倒れたコジャールを抱えるデスディチャ。
そして、いまだ重力魔法の糸で床に縫い付けられているラカスとニナ。
絶体絶命の状況。しかし、ラカスだけは、その鋭い「狙撃手の目」を一度も逸らしていなかった。
(……おかしい。さっきからずっと、あいつの指先と、要塞の動力源の『波長』がズレている)
三年間、コジャールの下で地獄の訓練を積んできたラカス。
彼は知っていた。アバリシアの「糸」は、繊細すぎるがゆえに、膨大なエネルギーを扱うとき、必ず「中継地点」を必要とすることを。
「……ニナ。……僕が合図したら、右腕の残弾を全部、あいつの足元の影に撃ち込んで」
「はぁ!? あんた何言って……私、今指一本動かないのよ!?」
「……できるよ。ニナは、デスディチャに名前をもらった『妖精』だろ。……あいつの糸、ニナの『魂』までは縛れてない」
ラカスは、ギリ、と奥歯を鳴らし、重力魔法の不可視の糸を、自らの肩の骨が外れるほどの力で跳ね除けた。
「なっ……!? ただの人間が、私の重力縛を……!?」
「アバリシア!! あんたの弱点、見えたよ!!」
ラカスが叫ぶ。
アバリシアの魔法は完璧だ。しかし、彼女は「自分以外の存在」を信じていない。だから、糸の制御をすべて自分一人で、それも要塞の外部魔力を無理やり引き込んで行っている。
「あんたは糸で人を繋ぐけど、誰とも繋がってない! その糸……『あんた自身の指先』が、一番の脆弱性(ボトルネック)なんだよ!!」
ラカスの指摘に、アバリシアの顔が初めて青ざめた。
そう、数万本の糸を同時に操る彼女の指先には、今、想像を絶する[漢字]負荷[/漢字][ふりがな]フィードバック[/ふりがな]がかかっている。そこにほんの少しの「振動」が加われば、制御は崩壊する。
「ニナ、今だッ!!」
「――言われなくてもッ!! 『[漢字]妖精の悪戯[/漢字][ふりがな]ピクシー・グリッチ[/ふりがな]』!!」
ニナが魂の底から魔力を絞り出し、自らの装甲を一部自爆させることで、重力縛を強引に解除。そのまま右腕のガトリングを、アバリシアの足元ではなく、「要塞の魔力供給ライン」へと叩き込んだ。
ズガガガガガガガッ!!
「……っ、しまった!?」
魔力の供給が微かに乱れる。
その瞬間、アバリシアの十本の指に、数万本分の糸の反動が襲いかかった。
「……あ、あああああああッ!? 私の指が……私の糸がぁぁッ!!」
完璧だった糸が絡まり、逆にアバリシア自身の肉体を締め上げ始める。
天才が、自らの完璧さに首を絞められる瞬間。
「……今だよ、デスディチャ!!」
ラカスが、焦土の中で叫んだ。
アバリシアの桃色の髪が、怒りの魔力で逆立つ。
彼女の背後からは、要塞『アイゼン』の全エネルギーを供給された数万本の『断罪の糸』が、毒蛇のように蠢いていた。一本一本が鋼鉄を切り裂き、魔力を吸い取る死のライン。
倒れたコジャールを抱えるデスディチャ。
そして、いまだ重力魔法の糸で床に縫い付けられているラカスとニナ。
絶体絶命の状況。しかし、ラカスだけは、その鋭い「狙撃手の目」を一度も逸らしていなかった。
(……おかしい。さっきからずっと、あいつの指先と、要塞の動力源の『波長』がズレている)
三年間、コジャールの下で地獄の訓練を積んできたラカス。
彼は知っていた。アバリシアの「糸」は、繊細すぎるがゆえに、膨大なエネルギーを扱うとき、必ず「中継地点」を必要とすることを。
「……ニナ。……僕が合図したら、右腕の残弾を全部、あいつの足元の影に撃ち込んで」
「はぁ!? あんた何言って……私、今指一本動かないのよ!?」
「……できるよ。ニナは、デスディチャに名前をもらった『妖精』だろ。……あいつの糸、ニナの『魂』までは縛れてない」
ラカスは、ギリ、と奥歯を鳴らし、重力魔法の不可視の糸を、自らの肩の骨が外れるほどの力で跳ね除けた。
「なっ……!? ただの人間が、私の重力縛を……!?」
「アバリシア!! あんたの弱点、見えたよ!!」
ラカスが叫ぶ。
アバリシアの魔法は完璧だ。しかし、彼女は「自分以外の存在」を信じていない。だから、糸の制御をすべて自分一人で、それも要塞の外部魔力を無理やり引き込んで行っている。
「あんたは糸で人を繋ぐけど、誰とも繋がってない! その糸……『あんた自身の指先』が、一番の脆弱性(ボトルネック)なんだよ!!」
ラカスの指摘に、アバリシアの顔が初めて青ざめた。
そう、数万本の糸を同時に操る彼女の指先には、今、想像を絶する[漢字]負荷[/漢字][ふりがな]フィードバック[/ふりがな]がかかっている。そこにほんの少しの「振動」が加われば、制御は崩壊する。
「ニナ、今だッ!!」
「――言われなくてもッ!! 『[漢字]妖精の悪戯[/漢字][ふりがな]ピクシー・グリッチ[/ふりがな]』!!」
ニナが魂の底から魔力を絞り出し、自らの装甲を一部自爆させることで、重力縛を強引に解除。そのまま右腕のガトリングを、アバリシアの足元ではなく、「要塞の魔力供給ライン」へと叩き込んだ。
ズガガガガガガガッ!!
「……っ、しまった!?」
魔力の供給が微かに乱れる。
その瞬間、アバリシアの十本の指に、数万本分の糸の反動が襲いかかった。
「……あ、あああああああッ!? 私の指が……私の糸がぁぁッ!!」
完璧だった糸が絡まり、逆にアバリシア自身の肉体を締め上げ始める。
天才が、自らの完璧さに首を絞められる瞬間。
「……今だよ、デスディチャ!!」
ラカスが、焦土の中で叫んだ。
- 1.#1熱砂の咆哮
- 2.#2無機質(前編)
- 3.#2無機質(後編)
- 4.#3遺跡(前編)
- 5.#3遺跡(中編)
- 6.#3遺跡(後編)
- 7.#4冰の中の「お姫様」(前編)
- 8.#4冰の中の「お姫様」(後編)
- 9.#5水色の嘘(前編)
- 10.#5水色の嘘(中編)
- 11.#5水色の嘘(後編)
- 12.#6凍てつく事実
- 13.#7毒の滴り(前編)
- 14.#7毒の滴り(中編)
- 15.#7毒の滴り(後編)
- 16.#8崩壊の聖域
- 17.#9再会
- 18.#10再起の咆哮(前編)
- 19.#10再起の咆哮(中編)
- 20.#10再起の咆哮(後編)
- 21.#11不完全生命体(前編)
- 22.#11不完全生命体(中編)
- 23.#11不完全生命体(後編)
- 24.#12血眼
- 25.#13道化師と強欲
- 26.#14冰の劣等生(前編)
- 27.#14冰の劣等生(中編)
- 28.#14冰の劣等生(後編)
- 29.#15強欲の残滓
- 30.エピローグ