ニナの鋼鉄の拳が、ペテンテの防壁を粉砕した。
宙に浮いた「偽りの神」に向け、デスディチャが地を蹴る。彼女の背後には、仲間たちが繋いできた執念の道が拓かれていた。
「これで……おわりっ!!」
デスディチャの紅い拳が、ペテンテの胸元へと突き刺さる。
それはかつて彼に教え込まれた「冷酷な破壊」ではなく、自分を抱きしめてくれたラカスの温もり、自分を守ろうとしたコジャールの覚悟、そして隣で戦うニナの意地が混ざり合った、「命の熱」だった。
――ドォォォォォォォォンッ!!!
ペテンテの魔導核が砕け散り、彼が悲鳴を上げながら床に叩きつけられる。
勝負はついた。デスディチャが荒い息をつきながら、倒れたペテンテを見下ろした――その瞬間だった。
「――ふふっ。そこまでよ、役立たずの[漢字]道化師[/漢字][ふりがな]ピエロ[/ふりがな]さん」
鈴を転がすような、冷たくも甘い声が要塞全体に響き渡った。
パチン、と指を鳴らす音が聞こえた次の瞬間。
這いつくばっていたペテンテの四肢が、ありえない方向に捻じ曲がった。
「ぎ、あ、あああああああッ!? ア、アバリシア……さま……っ、助けて、ください……!!」
ペテンテが絶叫する。見れば、彼の全身から目に見えないほど細い、赤黒く光る「魔力の糸」が伸びていた。
それは血管のように彼に食い込み、命を吸い上げながら、彼を無残な操り人形へと変えていく。
「助けて? ふふ、面白いことを言うのね。使い古した道具に、そんな価値があるのかしら」
瓦礫の山を優雅に踏み締め、桃色のセンター分けのロング髪をなびかせて現れたのは、タイトな黒ドレスを纏った美女。
要塞アイゼンの真の支配者、アバリシアだった。
「……アバリシア……!? なぜ、あなたがここにいるの……!」
コジャールが、持っていた水刃を取り落とすほど激しく動揺した。その顔は蒼白になり、恐怖と憎しみが混ざり合った複雑な表情で妹を凝視する。
「あら、お姉様。三年前のあの夜、死に損なっていたのね。相変わらずしぶといこと。……その汚い軍服、全然似合っていないわよ?」
「……お姉様……? コジャールさん、あいつが……あんたの妹なのか!?」
ラカスが銃を構え直すが、アバリシアが指先を少し動かすだけで、重力魔法のような圧力がラカスの全身を襲った。
「ぐ、あああああ……っ!!」
「無駄よ、可愛い坊や。私の『糸』からは、誰も逃げられない」
アバリシアは、まるでダンスを踊るような優雅な足取りでデスディチャへと近づく。
立ち尽くすデスディチャの顎を、彼女は紅いネイルの指先でクイと持ち上げた。
「……あんたが、ペテンテを……?」
「そうよ。この惨めなエルフを使って、あなたの絶望を育て上げた。……あなたが不幸であればあるほど、内側の魔素は『美味しく』熟成されるんですもの。……ねえ、お姉様。あなたが必死に守ろうとしていた『[漢字]優しさ[/漢字][ふりがな]テルヌーラ[/ふりがな]』は、もうこんなに真っ黒に染まってしまったわ」
「……アバリシアッ!!」
コジャールが叫び、水の刃を放つ。しかし、アバリシアは振り返りもせずに空いた左手で「糸」を操り、水の刃を空中でバラバラに切り刻んだ。
「お姉様、あなたは昔からそう。不完全なものに寄り添って、一緒に泥を啜るのが大好き。……でもね、私は違う。欲しいものはすべて、糸を引いて手に入れるの。……国の権力も、この要塞も、そしてこの『不幸な少女』もね」
アバリシアの瞳が、強欲な光を湛えて細められる。
ペテンテという駒を捨て、自ら戦場に降り立った「真の支配者」。
三年前の研究所の崩壊も、両親への虐待の指示も、すべてはこの女の「コレクション」を完成させるための筋書きだった。
「……わたしを、おもちゃにしたの……?」
デスディチャの体温が、静かに、けれど逃げ場のない怒りとともに上昇し始める。
「ええ。そうよ、可愛いデスディチャ。……さあ、復讐したいなら、その力を私にぶつけなさい。その分だけ、あなたは私の望む『最強の兵器』に近づくんだから」
宙に浮いた「偽りの神」に向け、デスディチャが地を蹴る。彼女の背後には、仲間たちが繋いできた執念の道が拓かれていた。
「これで……おわりっ!!」
デスディチャの紅い拳が、ペテンテの胸元へと突き刺さる。
それはかつて彼に教え込まれた「冷酷な破壊」ではなく、自分を抱きしめてくれたラカスの温もり、自分を守ろうとしたコジャールの覚悟、そして隣で戦うニナの意地が混ざり合った、「命の熱」だった。
――ドォォォォォォォォンッ!!!
ペテンテの魔導核が砕け散り、彼が悲鳴を上げながら床に叩きつけられる。
勝負はついた。デスディチャが荒い息をつきながら、倒れたペテンテを見下ろした――その瞬間だった。
「――ふふっ。そこまでよ、役立たずの[漢字]道化師[/漢字][ふりがな]ピエロ[/ふりがな]さん」
鈴を転がすような、冷たくも甘い声が要塞全体に響き渡った。
パチン、と指を鳴らす音が聞こえた次の瞬間。
這いつくばっていたペテンテの四肢が、ありえない方向に捻じ曲がった。
「ぎ、あ、あああああああッ!? ア、アバリシア……さま……っ、助けて、ください……!!」
ペテンテが絶叫する。見れば、彼の全身から目に見えないほど細い、赤黒く光る「魔力の糸」が伸びていた。
それは血管のように彼に食い込み、命を吸い上げながら、彼を無残な操り人形へと変えていく。
「助けて? ふふ、面白いことを言うのね。使い古した道具に、そんな価値があるのかしら」
瓦礫の山を優雅に踏み締め、桃色のセンター分けのロング髪をなびかせて現れたのは、タイトな黒ドレスを纏った美女。
要塞アイゼンの真の支配者、アバリシアだった。
「……アバリシア……!? なぜ、あなたがここにいるの……!」
コジャールが、持っていた水刃を取り落とすほど激しく動揺した。その顔は蒼白になり、恐怖と憎しみが混ざり合った複雑な表情で妹を凝視する。
「あら、お姉様。三年前のあの夜、死に損なっていたのね。相変わらずしぶといこと。……その汚い軍服、全然似合っていないわよ?」
「……お姉様……? コジャールさん、あいつが……あんたの妹なのか!?」
ラカスが銃を構え直すが、アバリシアが指先を少し動かすだけで、重力魔法のような圧力がラカスの全身を襲った。
「ぐ、あああああ……っ!!」
「無駄よ、可愛い坊や。私の『糸』からは、誰も逃げられない」
アバリシアは、まるでダンスを踊るような優雅な足取りでデスディチャへと近づく。
立ち尽くすデスディチャの顎を、彼女は紅いネイルの指先でクイと持ち上げた。
「……あんたが、ペテンテを……?」
「そうよ。この惨めなエルフを使って、あなたの絶望を育て上げた。……あなたが不幸であればあるほど、内側の魔素は『美味しく』熟成されるんですもの。……ねえ、お姉様。あなたが必死に守ろうとしていた『[漢字]優しさ[/漢字][ふりがな]テルヌーラ[/ふりがな]』は、もうこんなに真っ黒に染まってしまったわ」
「……アバリシアッ!!」
コジャールが叫び、水の刃を放つ。しかし、アバリシアは振り返りもせずに空いた左手で「糸」を操り、水の刃を空中でバラバラに切り刻んだ。
「お姉様、あなたは昔からそう。不完全なものに寄り添って、一緒に泥を啜るのが大好き。……でもね、私は違う。欲しいものはすべて、糸を引いて手に入れるの。……国の権力も、この要塞も、そしてこの『不幸な少女』もね」
アバリシアの瞳が、強欲な光を湛えて細められる。
ペテンテという駒を捨て、自ら戦場に降り立った「真の支配者」。
三年前の研究所の崩壊も、両親への虐待の指示も、すべてはこの女の「コレクション」を完成させるための筋書きだった。
「……わたしを、おもちゃにしたの……?」
デスディチャの体温が、静かに、けれど逃げ場のない怒りとともに上昇し始める。
「ええ。そうよ、可愛いデスディチャ。……さあ、復讐したいなら、その力を私にぶつけなさい。その分だけ、あなたは私の望む『最強の兵器』に近づくんだから」
- 1.#1熱砂の咆哮
- 2.#2無機質(前編)
- 3.#2無機質(後編)
- 4.#3遺跡(前編)
- 5.#3遺跡(中編)
- 6.#3遺跡(後編)
- 7.#4冰の中の「お姫様」(前編)
- 8.#4冰の中の「お姫様」(後編)
- 9.#5水色の嘘(前編)
- 10.#5水色の嘘(中編)
- 11.#5水色の嘘(後編)
- 12.#6凍てつく事実
- 13.#7毒の滴り(前編)
- 14.#7毒の滴り(中編)
- 15.#7毒の滴り(後編)
- 16.#8崩壊の聖域
- 17.#9再会
- 18.#10再起の咆哮(前編)
- 19.#10再起の咆哮(中編)
- 20.#10再起の咆哮(後編)
- 21.#11不完全生命体(前編)
- 22.#11不完全生命体(中編)
- 23.#11不完全生命体(後編)
- 24.#12血眼
- 25.#13道化師と強欲
- 26.#14冰の劣等生(前編)
- 27.#14冰の劣等生(中編)
- 28.#14冰の劣等生(後編)
- 29.#15強欲の残滓
- 30.エピローグ