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不幸の温度

#21

#11不完全生命体(前編)

「……ニナ、やりなさい。その目障りな[漢字]羽虫[/漢字][ふりがな]ラカス[/ふりがな]を排除しろ」

 ペテンテの冷酷な命令が、要塞の指令室に響き渡る。
 デスディチャを抱きしめるラカスの背後で、機械兵と化したニナの巨大な装甲腕が、鈍い金属音を立てて持ち上がった。その掌には、至近距離から内臓を焼き切るための魔導レーザーが充填されていく。

「ニナ、やめて! ラカスは……!」

 コジャールが叫び、水の刃を投げようとした――その瞬間。

「――うるさいわね、このエルフ。さっきから命令、命令って……耳にタコができるわよ」

 機械の関節が軋む音とともに、ニナの声がスピーカーから漏れた。
 三年前よりも少しだけ低く、けれどあの日のままの、生意気で傲慢な「お嬢様」の口調。

「なっ……何をしている、ニナ! 標的は目の前の男だ!」

「標的なら、もう決まってるわよ。……アンタよ、ペテンテ!!」

 ドォォォォォンッ!!

 ニナの装甲腕が放ったのは、ラカスへの一撃ではなかった。
 身体を180度反転させ、背後にいたペテンテの胸元へ、最大出力の魔導衝撃波を叩き込んだのだ。

「ぐ、はっ……!? 馬鹿な、[漢字]精神制御[/漢字][ふりがな]マインドコントロール[/ふりがな]は完璧だったはずだ!」

 ペテンテが吹き飛ばされ、要塞の壁を突き破る。
 ニナは、重厚な機械の足音を響かせながら、ラカスとデスディチャを庇うように一歩前に出た。

「完璧? 笑わせないで。アンタの作った[漢字]ガラクタ[/漢字][ふりがな]プログラム[/ふりがな]なんて、三日もあれば上書きしてやったわよ。……私が今日まで、どんな気持ちでアンタの顔色を伺いながら、この冷たい鉄の体で生きてきたと思ってるのよ!」

実はニナは、ペテンテに魔力を吸いとられた際、機械としてプログラムをされていたのだ。

 ニナの機械の瞳が、怒りで真っ赤に発光する。

「デスディチャ! いつまで寝てるのよ、こののろま! アンタの名前をつけたのは誰だと思ってるの? 世界で唯一、私の名付け親なんだから、シャキッとしなさいよ!」

 機械の指先が、優しく、けれど力強くデスディチャの紅い髪を撫でる。
 その感触は、かつての温かい指先ではない。けれど、デスディチャの心には、冷たい鋼鉄を通じた「確かな絆」が伝わってきた。

「……ニ、ナ……? 生きて……たの……?」

「あったりまえでしょ! アンタが泣き虫なままだから、死ぬに死ねなかったのよ!」

 ニナは背中のスラスターを全開にし、要塞の天井を突き破る勢いで跳躍した。
 

『[漢字]崩落の妖精[/漢字][ふりがな]ピクシー・フォール[/ふりがな]』

「――コジャール! ラカス! あの子を連れて逃げなさい! ここは私が、このエルフごと粉々にしてやるわ!」

 空中から降り注ぐのは、ニナの魔力すべてを注ぎ込んだ、無数の誘導弾。
 かつての「実験体No.1727」は、今、自らの意志で、自らの[漢字]創造主[/漢字][ふりがな]ペテンテ[/ふりがな]を焼き尽くす「復讐の妖精」へと覚醒した。

作者メッセージ

ッ!あぁ、あと三文字少なければ1111文字だったのにッ!

2026/02/15 18:30

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
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