「……はなして……コジャール……さん……。わたし……壊れちゃう……」
デスディチャの背後から噴き出す八枚の光翼が、周囲の石壁を瞬時にドロドロの溶岩へと変えていく。掴んだコジャールの手のひらからは、じりじりと肉の焼ける嫌な臭いが立ち上っていた。
「……くっ、あああああッ!!」
コジャールが苦悶に顔を歪めた、その時。
要塞の最上階を揺るがすほどの、凄まじい「風切り音」が戦場を切り裂いた。
ガギィィィィィィィンッ!!!
デスディチャの背後、彼女を遠隔制御していたペテンテの義手から伸びる「魔素供給ケーブル」が、目にも止まらぬ速さで飛来した特殊な鉄鋼弾によって、一本残らず切断されたのだ。
「……なっ!? この距離から私の供給線を狙撃しただと!?」
ペテンテが驚愕に目を見開く。
爆煙を切り裂き、一人の青年が窓枠を蹴破ってエントリーした。
重厚な魔導狙撃銃を、まるで体の一部のように軽々と担ぎ直す。
三年前、あの日……泣きじゃくりながら逃げ惑っていた少年の姿は、そこにはない。
「……ペテンテ。あんたの汚い手、その子から離せよ」
低い、地の底から響くような声。ラカスだ。
彼は銃を構えたまま、まっすぐにデスディチャを見つめた。
「……ラ……カ、ス……?」
制御を失い、ふらりとよろめくデスディチャ。
ペテンテが激昂し、義手から黒い電光を放とうとした瞬間、ラカスは迷いなく二発目を放った。
ラカスの新技:『漢字]追憶の魔弾[/漢字][ふりがな]バレット[/ふりがな]』
それは殺傷用の弾ではない。コジャールが三年間かけて練り上げた、「対象の魔素を一時的に中和する」特殊な冷却弾。
「デスディチャ! 君は『不幸』なんかじゃない! 僕が……僕が証明してみせる!」
弾丸がデスディチャの足元で砕け、蒼い霧が彼女を包み込む。
熱が、急速に引いていく。
ラカスは狙撃銃を放り投げ、猛烈な熱気が残る霧の中へと、生身で飛び込んだ。
「ばか! まだ熱いわよ、ラカス!」
コジャールの制止も聞かず、ラカスはデスディチャを強く、折れそうなほど強く抱きしめた。
「あ……つ……あついよ、ラカス……! 死んじゃう……!」
「……死なないよ。三年前の僕は弱かった。でも、今の僕は……君の熱くらい、耐えてみせる!」
ラカスの服が焦げ、肌に火傷が広がる。
けれど、彼は離さなかった。
恐怖で震えていたかつての「臆病者」が、今は愛する人を救うために、自らを焼きながら笑っていた。
「……おかえり、デスディチャ。……僕たちの、温もり」
その言葉が届いた瞬間、デスディチャの紅い瞳から、一筋の「透明な」涙がこぼれ落ちた。
それは三年前、彼女がずっと求めていた、痛みを伴わない、ただ純粋な心の温もりだった。
デスディチャの背後から噴き出す八枚の光翼が、周囲の石壁を瞬時にドロドロの溶岩へと変えていく。掴んだコジャールの手のひらからは、じりじりと肉の焼ける嫌な臭いが立ち上っていた。
「……くっ、あああああッ!!」
コジャールが苦悶に顔を歪めた、その時。
要塞の最上階を揺るがすほどの、凄まじい「風切り音」が戦場を切り裂いた。
ガギィィィィィィィンッ!!!
デスディチャの背後、彼女を遠隔制御していたペテンテの義手から伸びる「魔素供給ケーブル」が、目にも止まらぬ速さで飛来した特殊な鉄鋼弾によって、一本残らず切断されたのだ。
「……なっ!? この距離から私の供給線を狙撃しただと!?」
ペテンテが驚愕に目を見開く。
爆煙を切り裂き、一人の青年が窓枠を蹴破ってエントリーした。
重厚な魔導狙撃銃を、まるで体の一部のように軽々と担ぎ直す。
三年前、あの日……泣きじゃくりながら逃げ惑っていた少年の姿は、そこにはない。
「……ペテンテ。あんたの汚い手、その子から離せよ」
低い、地の底から響くような声。ラカスだ。
彼は銃を構えたまま、まっすぐにデスディチャを見つめた。
「……ラ……カ、ス……?」
制御を失い、ふらりとよろめくデスディチャ。
ペテンテが激昂し、義手から黒い電光を放とうとした瞬間、ラカスは迷いなく二発目を放った。
ラカスの新技:『漢字]追憶の魔弾[/漢字][ふりがな]バレット[/ふりがな]』
それは殺傷用の弾ではない。コジャールが三年間かけて練り上げた、「対象の魔素を一時的に中和する」特殊な冷却弾。
「デスディチャ! 君は『不幸』なんかじゃない! 僕が……僕が証明してみせる!」
弾丸がデスディチャの足元で砕け、蒼い霧が彼女を包み込む。
熱が、急速に引いていく。
ラカスは狙撃銃を放り投げ、猛烈な熱気が残る霧の中へと、生身で飛び込んだ。
「ばか! まだ熱いわよ、ラカス!」
コジャールの制止も聞かず、ラカスはデスディチャを強く、折れそうなほど強く抱きしめた。
「あ……つ……あついよ、ラカス……! 死んじゃう……!」
「……死なないよ。三年前の僕は弱かった。でも、今の僕は……君の熱くらい、耐えてみせる!」
ラカスの服が焦げ、肌に火傷が広がる。
けれど、彼は離さなかった。
恐怖で震えていたかつての「臆病者」が、今は愛する人を救うために、自らを焼きながら笑っていた。
「……おかえり、デスディチャ。……僕たちの、温もり」
その言葉が届いた瞬間、デスディチャの紅い瞳から、一筋の「透明な」涙がこぼれ落ちた。
それは三年前、彼女がずっと求めていた、痛みを伴わない、ただ純粋な心の温もりだった。
- 1.#1熱砂の咆哮
- 2.#2無機質(前編)
- 3.#2無機質(後編)
- 4.#3遺跡(前編)
- 5.#3遺跡(中編)
- 6.#3遺跡(後編)
- 7.#4冰の中の「お姫様」(前編)
- 8.#4冰の中の「お姫様」(後編)
- 9.#5水色の嘘(前編)
- 10.#5水色の嘘(中編)
- 11.#5水色の嘘(後編)
- 12.#6凍てつく事実
- 13.#7毒の滴り(前編)
- 14.#7毒の滴り(中編)
- 15.#7毒の滴り(後編)
- 16.#8崩壊の聖域
- 17.#9再会
- 18.#10再起の咆哮(前編)
- 19.#10再起の咆哮(中編)
- 20.#10再起の咆哮(後編)
- 21.#11不完全生命体(前編)
- 22.#11不完全生命体(中編)
- 23.#11不完全生命体(後編)
- 24.#12血眼
- 25.#13道化師と強欲
- 26.#14冰の劣等生(前編)
- 27.#14冰の劣等生(中編)
- 28.#14冰の劣等生(後編)
- 29.#15強欲の残滓
- 30.エピローグ