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不幸の温度

#20

#10再起の咆哮(後編)

「……はなして……コジャール……さん……。わたし……壊れちゃう……」

 デスディチャの背後から噴き出す八枚の光翼が、周囲の石壁を瞬時にドロドロの溶岩へと変えていく。掴んだコジャールの手のひらからは、じりじりと肉の焼ける嫌な臭いが立ち上っていた。

「……くっ、あああああッ!!」

 コジャールが苦悶に顔を歪めた、その時。
 要塞の最上階を揺るがすほどの、凄まじい「風切り音」が戦場を切り裂いた。

 ガギィィィィィィィンッ!!!

 デスディチャの背後、彼女を遠隔制御していたペテンテの義手から伸びる「魔素供給ケーブル」が、目にも止まらぬ速さで飛来した特殊な鉄鋼弾によって、一本残らず切断されたのだ。

「……なっ!? この距離から私の供給線を狙撃しただと!?」

 ペテンテが驚愕に目を見開く。
 爆煙を切り裂き、一人の青年が窓枠を蹴破ってエントリーした。

 重厚な魔導狙撃銃を、まるで体の一部のように軽々と担ぎ直す。
 三年前、あの日……泣きじゃくりながら逃げ惑っていた少年の姿は、そこにはない。

「……ペテンテ。あんたの汚い手、その子から離せよ」

 低い、地の底から響くような声。ラカスだ。
 彼は銃を構えたまま、まっすぐにデスディチャを見つめた。

「……ラ……カ、ス……?」

 制御を失い、ふらりとよろめくデスディチャ。
 ペテンテが激昂し、義手から黒い電光を放とうとした瞬間、ラカスは迷いなく二発目を放った。

ラカスの新技:『漢字]追憶の魔弾[/漢字][ふりがな]バレット[/ふりがな]』

 それは殺傷用の弾ではない。コジャールが三年間かけて練り上げた、「対象の魔素を一時的に中和する」特殊な冷却弾。

「デスディチャ! 君は『不幸』なんかじゃない! 僕が……僕が証明してみせる!」

 弾丸がデスディチャの足元で砕け、蒼い霧が彼女を包み込む。
 熱が、急速に引いていく。
 ラカスは狙撃銃を放り投げ、猛烈な熱気が残る霧の中へと、生身で飛び込んだ。

「ばか! まだ熱いわよ、ラカス!」

 コジャールの制止も聞かず、ラカスはデスディチャを強く、折れそうなほど強く抱きしめた。

「あ……つ……あついよ、ラカス……! 死んじゃう……!」

「……死なないよ。三年前の僕は弱かった。でも、今の僕は……君の熱くらい、耐えてみせる!」

 ラカスの服が焦げ、肌に火傷が広がる。
 けれど、彼は離さなかった。
 恐怖で震えていたかつての「臆病者」が、今は愛する人を救うために、自らを焼きながら笑っていた。

「……おかえり、デスディチャ。……僕たちの、温もり」

 その言葉が届いた瞬間、デスディチャの紅い瞳から、一筋の「透明な」涙がこぼれ落ちた。
 それは三年前、彼女がずっと求めていた、痛みを伴わない、ただ純粋な心の温もりだった。

作者メッセージ

デスディチャ「最近作者に涙流され続けててマジ不快」

2026/02/15 15:10

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
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