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不幸の温度

#15

#7毒の滴り(後編)

「……うそ……ラカスも、ニナも……いなくなったの……?」

 研究所の冷たいベッドの上、デスディチャの瞳から光が消え、深い闇が差し込んでいた。
 傍らでは、ペテンテが事も無げに温かいスープをトレイに置いている。その指先は、昨日二人を「処理」した時と同じ、精密機械のような正確さで動いていた。

「ああ。君の熱が怖くなったと言っていた。……所詮、人間などそんなものだ。だが安心しろ、デスディチャ。私だけは、君を捨てない。君の価値を一番理解しているのは、私だからね」

「……あ……ああああ……っ!!」

 ペテンテが差し出した手に、デスディチャは縋らなかった。
 代わりに、彼女の中から溢れ出したのは、悲しみすら焼き尽くす「漆黒の殺意」だった。

 ドォォォォォンッ!!

 研究所の壁が、内側からの圧力で弾け飛ぶ。
 デスディチャの体温が、もはや計測不能な領域へと跳ね上がる。50℃? いや、500℃、1000℃――。
 彼女の周囲の物質が、個体から液体を飛ばして一気に「気体」へと昇華する。

「あはははは! 素晴らしい! 怒れ、絶望しろ、デスディチャ! その負の感情こそが、魔素を神の領域へと押し上げる燃料だ!」

 崩壊する研究所の中で、ペテンテだけが高笑いしている。
 その光景を、瓦礫の影から見つめている者がいた。

「…………っ」

 コジャールは、自分の指先が震えているのを、止めることができなかった。
 彼女の得意な水魔法でさえ、今のデスディチャの熱の前では、触れる前に消滅してしまう。

(……なんてこと。ペテンテ、あなたはここまで……)

 コジャールは、自分がペテンテを「甘く見ていた」ことを痛感していた。
 彼女はデスディチャを救うためにここへ来たはずだった。けれど、目の前で暴走する少女の悲鳴を止める術を、彼女は持っていない。

 水色のハーフアップが、熱風に煽られて焦げ茶色に変色していく。
 大人の余裕も、ペテンテをからかう不敵な笑みも、今の彼女には残っていない。

「……ごめんなさい、テルヌーラ。私は……私は、あなたを……」

 膝をつき、水鏡のように澄んでいた彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
 けれど、その涙さえも、デスディチャが放つ絶望の熱によって、地面に届く前に虚しく蒸発していった。

 目の前には、狂ったように笑う「恩人」と、怪物へと変貌していく「少女」。
 最強の魔導師の一人であるはずのコジャールは、ただその地獄を、静かな絶望とともに眺めることしかできなかった。

作者メッセージ

作者「はいカット!」
ラカス「何で僕殺されたことになってんの?」
ニコ「知るわけねぇだろ」
作者「フフ、知りたいかい?」
ラカス「何々?!」
作者「ヒ・ミ・ツ♡」

(地球が爆発する音)

2026/02/14 10:04

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
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