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不幸の温度

#14

#7毒の滴り(中編)

 研究所の最深部、青白い光が明滅するサーバー室。
 ニナは空中を漂いながら、震える指先でペテンテの個人フォルダにアクセスを試みていた。

「……あった。これよ……『個体名:デスディチャ、ストレス負荷記録』……」

 画面に映し出されたのは、デスディチャが幼い頃に受けた痛みの記録。そして、そのすべての裏で指示を出していたペテンテのサイン。
 ニナの瞳に、熱い涙が溜まる。

「最低……。あいつ、あんなに優しくされて喜んでたのに……っ!」

「――データの無断持ち出しは、重罪だと言ったはずだが?いや、言っていなかったかね、」

 背後から、氷のように冷たい声が響いた。
 振り返る間もなかった。ペテンテが指を鳴らすと、室内の防衛システムが作動し、無数の魔力の鎖がニナを縛り上げる。

「が……っ、あ、あぁ……!」

「ニナ! 今助ける!」

 異変に気づき、扉を蹴破って飛び込んできたのはラカスだった。
 彼は震える手で錆びた短剣を構え、自分より数十センチも背の高いエルフの魔導師へと突進する。

「やめろ、ラカス! お前では相手に――」

「うるさい! デスディチャを……あの子をこれ以上、お前の道具にはさせない!」

 ラカスの決死の刺突。しかし、ペテンテは避けることすらしなかった。
 彼の周囲に展開された自動防護壁が、ラカスの短剣を虚しく弾き飛ばす。

「無意味だ。……お前たちは、私の計算を狂わせる『ノイズ』に過ぎない」

 ペテンテの瞳に、情けの欠片も宿っていない。
 彼が軽く手を振ると、部屋全体の気圧が急激に変化した。

「……あ、がっ……」
「ラカ、ス……」

 直接的な衝撃ではない。ただ、命を維持するための魔素が、その空間から根こそぎ奪い去られていく。
 二人の意識が遠のき、床に崩れ落ちる。
 ペテンテは、倒れた二人を見下ろし、ゴミを払うような手つきで眼鏡を直した。

「……惜しいな。お前たちも、良い『予備の熱源』になると思っていたんだが。……まあいい。デスディチャのさらなる覚醒のためには、身近な者の『死』というストレスが、最も効率的だ」

 彼は冷徹にそう呟くと、意識を失った二人を暗闇の底へと「処理」するように魔法で消し去った。
 その瞳には、何も映らない、ただ黒い、奥深い瞳だった。

 ─────後ろで静かに眺めるコジャールに気付かずに。

作者メッセージ

最近アンハッピーエンドにハマっております

2026/02/14 09:40

♗◈夢見鳥◈♗
ID:≫ 65guhuu.CMb9.
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