研究所の最深部、青白い光が明滅するサーバー室。
ニナは空中を漂いながら、震える指先でペテンテの個人フォルダにアクセスを試みていた。
「……あった。これよ……『個体名:デスディチャ、ストレス負荷記録』……」
画面に映し出されたのは、デスディチャが幼い頃に受けた痛みの記録。そして、そのすべての裏で指示を出していたペテンテのサイン。
ニナの瞳に、熱い涙が溜まる。
「最低……。あいつ、あんなに優しくされて喜んでたのに……っ!」
「――データの無断持ち出しは、重罪だと言ったはずだが?いや、言っていなかったかね、」
背後から、氷のように冷たい声が響いた。
振り返る間もなかった。ペテンテが指を鳴らすと、室内の防衛システムが作動し、無数の魔力の鎖がニナを縛り上げる。
「が……っ、あ、あぁ……!」
「ニナ! 今助ける!」
異変に気づき、扉を蹴破って飛び込んできたのはラカスだった。
彼は震える手で錆びた短剣を構え、自分より数十センチも背の高いエルフの魔導師へと突進する。
「やめろ、ラカス! お前では相手に――」
「うるさい! デスディチャを……あの子をこれ以上、お前の道具にはさせない!」
ラカスの決死の刺突。しかし、ペテンテは避けることすらしなかった。
彼の周囲に展開された自動防護壁が、ラカスの短剣を虚しく弾き飛ばす。
「無意味だ。……お前たちは、私の計算を狂わせる『ノイズ』に過ぎない」
ペテンテの瞳に、情けの欠片も宿っていない。
彼が軽く手を振ると、部屋全体の気圧が急激に変化した。
「……あ、がっ……」
「ラカ、ス……」
直接的な衝撃ではない。ただ、命を維持するための魔素が、その空間から根こそぎ奪い去られていく。
二人の意識が遠のき、床に崩れ落ちる。
ペテンテは、倒れた二人を見下ろし、ゴミを払うような手つきで眼鏡を直した。
「……惜しいな。お前たちも、良い『予備の熱源』になると思っていたんだが。……まあいい。デスディチャのさらなる覚醒のためには、身近な者の『死』というストレスが、最も効率的だ」
彼は冷徹にそう呟くと、意識を失った二人を暗闇の底へと「処理」するように魔法で消し去った。
その瞳には、何も映らない、ただ黒い、奥深い瞳だった。
─────後ろで静かに眺めるコジャールに気付かずに。
ニナは空中を漂いながら、震える指先でペテンテの個人フォルダにアクセスを試みていた。
「……あった。これよ……『個体名:デスディチャ、ストレス負荷記録』……」
画面に映し出されたのは、デスディチャが幼い頃に受けた痛みの記録。そして、そのすべての裏で指示を出していたペテンテのサイン。
ニナの瞳に、熱い涙が溜まる。
「最低……。あいつ、あんなに優しくされて喜んでたのに……っ!」
「――データの無断持ち出しは、重罪だと言ったはずだが?いや、言っていなかったかね、」
背後から、氷のように冷たい声が響いた。
振り返る間もなかった。ペテンテが指を鳴らすと、室内の防衛システムが作動し、無数の魔力の鎖がニナを縛り上げる。
「が……っ、あ、あぁ……!」
「ニナ! 今助ける!」
異変に気づき、扉を蹴破って飛び込んできたのはラカスだった。
彼は震える手で錆びた短剣を構え、自分より数十センチも背の高いエルフの魔導師へと突進する。
「やめろ、ラカス! お前では相手に――」
「うるさい! デスディチャを……あの子をこれ以上、お前の道具にはさせない!」
ラカスの決死の刺突。しかし、ペテンテは避けることすらしなかった。
彼の周囲に展開された自動防護壁が、ラカスの短剣を虚しく弾き飛ばす。
「無意味だ。……お前たちは、私の計算を狂わせる『ノイズ』に過ぎない」
ペテンテの瞳に、情けの欠片も宿っていない。
彼が軽く手を振ると、部屋全体の気圧が急激に変化した。
「……あ、がっ……」
「ラカ、ス……」
直接的な衝撃ではない。ただ、命を維持するための魔素が、その空間から根こそぎ奪い去られていく。
二人の意識が遠のき、床に崩れ落ちる。
ペテンテは、倒れた二人を見下ろし、ゴミを払うような手つきで眼鏡を直した。
「……惜しいな。お前たちも、良い『予備の熱源』になると思っていたんだが。……まあいい。デスディチャのさらなる覚醒のためには、身近な者の『死』というストレスが、最も効率的だ」
彼は冷徹にそう呟くと、意識を失った二人を暗闇の底へと「処理」するように魔法で消し去った。
その瞳には、何も映らない、ただ黒い、奥深い瞳だった。
─────後ろで静かに眺めるコジャールに気付かずに。
- 1.#1熱砂の咆哮
- 2.#2無機質(前編)
- 3.#2無機質(後編)
- 4.#3遺跡(前編)
- 5.#3遺跡(中編)
- 6.#3遺跡(後編)
- 7.#4冰の中の「お姫様」(前編)
- 8.#4冰の中の「お姫様」(後編)
- 9.#5水色の嘘(前編)
- 10.#5水色の嘘(中編)
- 11.#5水色の嘘(後編)
- 12.#6凍てつく事実
- 13.#7毒の滴り(前編)
- 14.#7毒の滴り(中編)
- 15.#7毒の滴り(後編)
- 16.#8崩壊の聖域
- 17.#9再会
- 18.#10再起の咆哮(前編)
- 19.#10再起の咆哮(中編)
- 20.#10再起の咆哮(後編)
- 21.#11不完全生命体(前編)
- 22.#11不完全生命体(中編)
- 23.#11不完全生命体(後編)
- 24.#12血眼
- 25.#13道化師と強欲
- 26.#14冰の劣等生(前編)
- 27.#14冰の劣等生(中編)
- 28.#14冰の劣等生(後編)
- 29.#15強欲の残滓
- 30.エピローグ